「アディダスの本気度」はいかほどか!? 秋冬ウェアの2トップ試着体験ルポ
「アパレルへの本気度」を開発責任者にも直撃インタビュー
これまでのアディダスゴルフのアパレルと言えば、個人的にはシューズほど“攻めた”印象はなく、シンプルかつスポーティで、どちらかというと保守的な印象だった。一方で、23年春夏モデルとして展開された「アディクロス」のような、街でも着られそうなカジュアルなウェアも世に送り出している。いったいアディダスのゴルフアパレルはどこに向かうのか―。アディダスゴルフAPACブランドディレクターの松養栄峰(まつがい・しげたか)氏に話を聞いた。
―「コールドレディ」を着てプレーしましたが、「アディクロス」とはまた違った、かなりアスリート向けの印象を受けました。その狙いは?
アディダスゴルフの製品はシューズも含め、「革新的でベストなプロダクトをゴルファーに訴求する“スポーツクレディビリティ”」と「ゴルフゲームやその周辺のカルチャーを推進する“カルチャークレディビリティ”」という二軸で展開しています。これは製品の開発段階、またマーケティング活動をする上でも常に意識していることで、今回の製品はスポーツ寄りの前者に当たります。
いまゴルファーの裾野はとても広がっていると思います。ですから、カルチャーの側面を我々はカバーしていかなくてはならないと思っています。ですがその一方で我々はスポーツブランドであり、パフォーマンスブランドでもあるので、アスリートなど本格志向のゴルファーのパフォーマンスをサポートし、支持していただけるようなモノ作りというのは常に心がけています。
―「フロストガード」のダウンは薄くて軽いのに、保温性能がとても高くて驚きました。とことん機能性を重視しているように感じましたが?
最高峰の素材を使用していることもあり、どうしても機能面が前に出がちです。ですが、「U365」自体は機能性だけではなく、シルエットや新しいスタイリングの提案をしていて、我々の掲げる「世界で最も“攻めた(プログレッシブな)”ゴルフブランドになる」というミッションを体現しているコレクションだと思っています。
―機能性を追求するとデザインが二の次になってしまうこともあると思うのですが、デザインと機能性の折り合いについてはどのようにお考えでしょうか?
アディダスにはアディダスらしさ、スポーツブランド、パフォーマンスブランドというポリシーがあり、素材のチョイスも含め、ゴルフの動きに特化した「機能美」といった部分もデザインの一部だと考えています。ロゴを加工するとか、グラフィックで柄を作るとか、そういった意味だけのデザインだけではない。そこは自社で開発している我々の強みだと思います。
―ここ数年でゴルフシューズのシェアがだいぶ上がっていると思いますが、ゴルフアパレルでもナンバーワンを目指すのでしょうか?
フットウェアにおける日本でのマーケットシェアはおかげさまでナンバーワンになりました。2019年以前は、アディダスが一番になるなんて誰も想像できなかったと思います。それが、20年に「コードカオス」をローンチして潮目が変わりました。巨大な牙城が存在する中でナンバーワンになれた事実は、我々にとって大きな自信になっています。
アパレルに関してですが、この3年はコロナの影響もあってなかなか土台を整えるのが難しい状況もありました。ですが、渋野日向子選手とも契約(フットウェア・アパレル)できましたし、今は安定的にシェアも上昇傾向にありますので、今回のローンチイベントを皮切りにアパレルでもナンバーワンを目指したいと考えています。
―ちなみに、アディダスのアパレルは業界でいま何位なのでしょうか?
様々なデータが存在しますので一概には言えませんが、我々としては3番手に位置していると見ています。ただ、他のブランドと同じもの作りをしているつもりも、するつもりもありません。
ゴルフウェアはファッションと機能性の両方を求められますが、我々はパフォーマンスブランドとしての強みを持っていると思います。我々は我々のスタイルで、独自のデザインと素材で“攻めた(プログレッシブな)” もの作りをしていくことを忘れてはいけないと思います。
―ゴルフアパレルに込める思いなどありますでしょうか?
社内のグローバルミーティングなどでは「コンフィデンス」という言葉をよく使います。直訳すると「自信」や「信頼」という意味でフワっとしているんですけど…。私は月例競技に出るアマチュアゴルファーですが、アディダスのウェアを着ることで、朝一のティイングエリアで「きょう一日がんばろう」と思えます。実際、それぐらいの小さなコンフィデンスでもいいんです。それがアスリートレベルになれば「この試合で絶対に勝つ」といった大きなコンフィデンスを感じさせるウェアにも昇華する。我々はそんなウェアをつくっていきたいと思っています。
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唐突に投げかけた質問に対しても、自信を持った口調で応えてくれた松養氏。開発の経緯や背景、そしてアディダスの思いを知ると、シンプルで保守的に見えていたデザインも、機能性をとことん追求した結果の必然であり、逆に自身がそのウェアを着るのに相応しいゴルファーか自問してしまう。ゴルフをスポーツとして真剣に考え、とことんパフォーマンスにこだわって作られた“本物志向”のウェア。ゴルフに真摯に取り組む向上心が強いゴルファーほど、「U365」の機能美を試してもらいたい。