もはやこれは近未来のゴルフ!? 中国巨大インドア施設ゴルフゾン「CITY GOLF」に潜入
昨年9月、中国天津市に新たなゴルフの楽しみ方を提供する施設が生まれた。ゴルフゾン中国社が運営する施設「CITY GOLF」だ。シミュレーションゴルフのリーディングカンパニーとして、国内700店舗と施設に1500台以上のシミュレーターを導入する「ゴルフゾン」の中国法人が手がけた都市型ゴルフコース。施設面積は約5000坪、総工費4000万元(約8億円)を費やした巨大施設の全貌に迫る。
そもそも「CITY GOLF」とは
「CITY GOLF」の利用法は、松山英樹も現在参戦中の新リーグ「TGL」のスタイルをイメージすると分かりやすい。18ホールごとに区切られたスペースに、シミュレーションゴルフを展開するスクリーンと、現実にパッティングを行う人工グリーンが設けられている。スクリーンに映ったコースにボールを打ちこみ、グリーン周辺のみリアルの状況でプレー。グリーンに乗ったボール位置は、天井に吊るされた照明で照らされ、そこからリスタートとなる。
グリーン周りは、しっかりラフやカラーが存在するだけではなく、人工の砂を使用したバンカーもあれば、実際の水を溜めて作られたウォーターハザードも設けられていた。芝は全て人工ではあるものの、微小な傾斜や芝目が戦略性を演出し、意外にひと筋縄ではいかない。18ホールそれぞれにレイアウトに沿った個性があり、リアルなゴルフとはまた違った魅力が詰まっていた。
中国のゴルフ事情って? リアルとインドアの2025年現在地
現在、世界中のツアーで徐々に中国人選手の活躍が目立ってきており、3月に竹田麗央が2位に6打差をつける圧勝で優勝した「ブルーベイLPGA」は、中国の海南島で行われた。そもそも中国のゴルフ事情はどのようなものなのか?
ゴルフ人口は約150万、そのうちジュニアは約14万人。800万人を超える日本のゴルフ人口よりはまだ小規模といえるが、2024年に行われたパリ五輪でリン・シユがメダルを獲得し、中国国内でゴルフ熱が高まっているとのこと。特にインドア施設は、(リアルの)ゴルフ場の開場を中国政府が規制している手前、開場しやすさを利点に増加中。いまや中国全土で約3000カ所もの施設が運営されているという。
「CITY GOLF」の料金体系はメンバーシップ制で、会員加入金は10万元(日本円で約199万 ※2025年5月時点)。プレーフィは平日248元(約4900円)、土日祝で300元(約5900円)。ビジターは平日500元(約9900円)で土日祝は600元(約1万1900円)。安価な設定ではないものの、充実した設備と18ホール回り放題の利点を考えれば、それほど高い金額ではない。24年9月オープン以降、現時点の年間メンバーは20人程度だという。
カジュアルさと癒しの空間 リアルとはまた違った楽しさ
編集部が潜入した日は、平日午後の昼下がり。入場客は数えるほどしかいなかったものの、中国旅行中の韓国人セレブ4人組が楽しそうに、自由気ままに遊んでいた。メンバーシップのゴルフ場とは違い、厳格なドレスコードはなさそうな雰囲気。
我々も同社のご厚意で18ホールを回らせてもらった。クラブやボールは全てレンタル。従業員を兼ねたキャディが1人付いてくれて、バッグを手押しカートで運びながら、必要なクラブを差し出してくれる。
我々の組に付いてくれた金シンさん(24歳)は、天津市内に住むお団子髪がキュートな中華美女。さり気ないフォローとナイスショット時の控えめな「グショー(中国っぽいイントネーション)」に癒される。BGMは鳥のさえずりが流れ、人工池の流れる水の音が所々で程よく聞こえてくるのも心地いい。
あなどってはいけない! 傾斜やハザードの高い再現性
プレーはやはりボールを探すなどの障害がない分スムーズで、腰痛や体力に自信のない高齢ゴルファーには打ってつけ。さらにリアルゴルフほどの手ごたえや複雑さはないものの、フェアウェイ上の傾斜に合わせて足場が傾いたり、足元とマットのプレートがそれぞれ独立して稼働するデュアルプレートによって複雑なライを再現している。
人工芝の横にはバンカーとラフ設定の深さの異なる2種類のマットも用意され、ハザードに応じた飛距離設定の精度も高かった。コースの難度はノーマル、セミツアー、ツアーからモードを選べ、風の強さも設定できる。
取材に同行してくれた公式アンバサダーのレッスンコーチ・てらゆー氏もその精度の高さに舌を巻く。「傾斜の読み方や距離感、バンカーからの出し方など基本的な部分はリアルと同じで、人工芝は年中メンテナンスが行き届いているため、いつでも同じクオリティで練習ができます。いきなりゴルフ場でプレーするよりもハードルが低く、効率よく上達できると感じました」
日本にもいつかは… ゴルフの新たな未来がここにある!?
ことしは天津市に続き、2号店の開設も予定。3年以内に4号店までを計画している。今後は中国国内のみならず、中東やアメリカ、カナダなど、海外の投資家からもすでにアプローチが来ている模様。日本国内でも20年のコロナ禍以降、シミュレーションゴルフが急増し、都内では無人型の店舗も現れ、既存のゴルファーだけではない新たなファン層を取り込んだ。この巨大インドア施設が国内に設置される日もそう遠くはないのかもしれない。(編集部・内田佳)