女子プロの「グローブ事情最前線」天然皮革はもはや“絶滅危惧種”だった件
女子プロたちが毎日のように履くグローブ。使い続ければもちろん摩耗し、裂けたり伸びたりする消耗品だが、彼女たちはどのぐらいの頻度で新品に変えているのか。そもそも合皮なのか天然皮革なのか、はたまたそれ以外か。さらに、使い終わったグローブの使い道といった細かい話題まで、女子プロたちのリアルな“グローブ事情”を聞いた。
聞いた女子プロ10人に「天然皮革」はゼロ 各素材の特徴は?
ゴルフグローブの素材には、天然皮革(以下天然)のほか、人工皮革や合成皮革(以下合皮)がある。天然は柔らかなフィット感があり、使うほど手になじむ感覚が魅力とされる。一方、人工皮革や合皮は比較的丈夫で、汗や雨などの影響を受けにくいとされ、使い勝手の良さから選ぶ人もいる。では、ツアーで戦う女子プロたちはどうなのか。今回話を聞いた10人は、全員が人工皮革または合成皮革のグローブを使用していた。
合皮ユーザーの稲垣那奈子は、使用する理由について、「滑りにくいのと、使っているとだんだんフィットしてくる」と説明。使い続けるうちに自分の手になじんでいく感覚を気に入っているという。
「ジュニア時代からずっと使っている」も理由のひとつ
ただ、合皮を選ぶ理由そのものが曖昧な選手もいる。吉澤柚月は「合皮しか使ったことがない」そうで、天然皮革については「使わない理由は特にないけど、なんとなく硬そう」と言う。小祝さくらも「ジュニア時代からずっとコレなので」と、幼いころから合皮を使い続けてきたという。
素材ごとの違いを比較して選んだというより、幼いころから使い慣れていることが、合皮を使い続ける理由になっている選手もいるようだ。
ミズノの用具担当者によると、同社のグローブを使用する女子プロも「9割が合皮」だという。一方で男子プロになると天然を選ぶ選手が多く、特にベテラン選手にその傾向が強いという。
女子に合皮が多い理由については、「やはり年齢層が低いからというのが大きいかもしれません。小さいころから合皮で育ってきている選手が多いからですかね」と話す。実際には、汗をかいた際のグリップ感などを重視し、合皮を選ぶ選手もいるという。実際に、今回話を聞いた10人からも「滑らない」「滑りにくい」という声が多く聞かれた。
各メーカーの広報担当者によると、ブリヂストンでは契約女子選手の9割以上が人工皮革を使用し、ダンロップでは合皮の使用率が100%だという。
ブリヂストンによると、かつては「プロモデル=天然皮革」というイメージもあったが、耐久性やコストパフォーマンスの向上に伴い、人工皮革が選ばれるようになったという。同社では20年以上前に約7割だった人工皮革の使用比率が、現在は約9割まで高まっているという。なお、人工皮革と合成皮革は異なる素材だが、いずれも耐久性や天候への強さなどから支持を集めている。
「親指だけ滑らない」特注のグローブを使う選手も
10人の中でも、とりわけ細かなこだわりを持っていたのが寺岡沙弥香だ。「こだわりがあって、特注で作ってもらってます」と明かし、左手親指の部分だけ滑りにくい素材を使用した特注仕様を愛用している。もともとはグローブ全体が滑りにくい素材だったが、生地の仕様変更で好みに合わなくなり、親指だけを特別仕様にしてもらったという。
「親指さえ滑らなければOKなんです。トップでツルっと滑っちゃうのがどうしても気になって」と寺岡。交換頻度は2~3日で、「伸びてフィット感が気持ち悪くなったら替える」という。グローブに求めるのは、やはり「自分の手にしっくりくる感覚」。プロのこだわりは、思っていた以上に細かい。
交換頻度は?「毎朝新品」を選ぶプロも
交換頻度にも、それぞれの個性が出る。高橋彩華は「毎朝新しいものにします」と、新品を好む。合皮なら特にモデルへのこだわりはないというが、サイズは「きつすぎるのは好きじゃないので、ちょっとゆるめが好み」という。小祝さくらも、試合では毎日新しいものを使うという。
一方、吉澤は新品の“ピタッとした感覚”そのものを好んでいる。「きつい方が好きなので、ぴたっとしている使いたてが好き。袋を開けたてくらいがいいかも」と笑って話す。使っているうちにグローブが伸び、指の中でズレ始めると交換。グローブの生地が自分の手から少しでも離れる感覚が気になるようだ。
菅楓華は、4日間の試合であれば初日に新しいグローブを下ろし、そのまま最終日まで使い続けるタイプだ。「最初は硬いのでグリップの握り方とかが変わりやすい。ですから、続けて同じものを使ってなじませます」と話す。幼いころからスリクソンユーザーで「あまりグローブにこだわりはないかも。私何でもいける人なんで」と笑うが、そこには“慣れた感覚を変えたくない”という理由があった。
山内が重視していたのも、やはり“感覚”の話だった。愛用しているテーラーメイドのグローブは、「最初からあまりきつくない」のがお気に入り。新品を使うときには、少し馴らしてから使いたくなることもあるというが、同社のグローブは「何回使っても同じ感覚」なのが魅力だという。
桑木志帆の“貧乏性”も立派なこだわり?
さらに長く使う選手もいる。桑木志帆は、汗をかいたときには交換するものの、そうでなければ4日間同じグローブを使い続けることもあるという。グローブ選びについては、「きつすぎるのは好きじゃないけど、だぼだぼすぎず、いいフィット感のものを」と、自分に合ったサイズ感を重視している。
交換しない理由を聞くと、「私、昔から貧乏性なんですよね。エコとも言えるかも」と意外な答えが返ってきた。ネイルでグローブが破れることが多いため交換するケースもあるが、「破れなかったら洗って使う」と、使えるものは最後まで使い切るタイプだ。たまにキャディから新しいグローブを渡されることもあるそうで、毎日新品にする選手がいる一方、使える限り使い続ける選手もいる。交換頻度だけを見ても、かなりの違いがある。
使い終わったゴルフグローブはどうする?
では、使い終わったグローブはみなどうしているのか。中村心は、汚れたグローブを「洗って、練習で使う」という。愛用しているのはプロになる前から使うモデルで、「結構薄手なので、自分の手の感覚が分かりやすい。滑らないし」と、使い心地を気に入っている。
試合では初日に新しいものを開け、翌日もまだ使えそうならそのまま使用。毎日新品にするわけではない。グローブを使い捨てにするのではなく、試合で役目を終えたものを練習用に回す。雨の日には予備を多めに用意するなど、使い分けもしっかりしている。
一方、使い終わったら潔く処分するのが脇元華だ。「手汗がすごくて、夏場だとさらに汗をかくから合皮。天然皮革だと滑っちゃうので」と、合皮を選ぶ理由を挙げた。使い終わったグローブは洗わず処分するという。
新品のピタッとした感覚が好きな選手もいれば、少し使って手になじんだ状態が好きな選手もいる。毎朝新品にする選手もいれば、4日間同じものを使う選手もいる。それでも、10人の話を聞いていて共通していたのは、「自分が気持ちよくクラブを握れるか」ということだった。
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今回話を聞いた女子プロ10人は、全員が人工皮革または合皮を愛用していた。耐久性や滑りにくさを評価する声が多かった一方で、その一枚に求めるものは人それぞれ。滑りにくさやフィット感、使い込んだときのなじみ具合など、自分にとっての「ちょうどいい」を見つけている。次にグローブを買うときは、そんな女子プロたちの工夫を少し思い出してみてもいいかもしれない。(編集部・仮屋美遊)