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宮里藍のジュニア仲間が女子プロを目指すまで/横山倫子の半生(前編)

あなたのゴルフ人生を教えてください vol.11 横山倫子

あなたのゴルフ人生・横山倫子編

テレビ朝日系列放送の長寿番組『新婚さんいらっしゃい!』に、10歳差婚として出演した女子プロゴルファーが居る。プロ17年目の横山倫子(よこやま・ともこ)だ。宮里藍さんが不動裕理と賞金女王争いを繰り広げた2004年にキャディを務めた彼女。07年にプロテストを合格し、未勝利ながらも優勝争いに何度か顔を出す活躍を見せてきた。そんな彼女のゴルフとの出合いから、プロを志すまでの半生を振り返る(前編/全2回)。

不登校児にゴルフを勧めたスパルタ父

「ゴルフを始めたきっかけは、父親の誘いです。学生の頃、アルペンスキーの選手として活躍していた父はゴルフの腕前も確かで、人生最初のラウンドからスコア100切りを果たしたほどの腕前。私が小学校4年生のときに、そんな父が姉と一緒にできるものとして誘ってきたのがゴルフの練習でした」

特にそれまで本格的なスポーツ活動をしてこなかった横山。彼女に父親がゴルフを勧めた本当の理由は、最初からプロを目指すためでも、逆に遊び半分でもなく、突如空いてしまった空虚時間を埋めるためのものであった。「小4、5と中学のときに、登校拒否で学校を休みました。父はそんな私を見かね、ゴルフという名目で外に連れ出したかったのだと思います」

姉、兄を持つ3兄弟の末っ子として生まれた横山は、小さい頃から年上の2人の姿を見て育ち、全てに置いて要領がよかったという。何をすれば褒められ、何をしたら怒られるかを把握できる子で、冷静に大人を見極めるズル賢い一面も持っていた。そんな少女が小学4年のときに抱いた感情が、先生への不信感だった。

「要領のいい私に先生が学級委員のように働かせていたとき、アレ先生、楽してない!? って思っちゃったんです…。学級委員でもない私にクラスを任せっきりにして、自分の仕事をしていない。そもそも地元の国立大を出て、県から一歩も出たことがない先生が私たちに何を教えられるの?って。 大人からしてみたら本当に嫌な子だったと思います(笑)」。登校拒否を繰り返した彼女の学校代わりの居場所になったのが、父が勧めたゴルフ練習場だった。

彼女が通った地元・香川県の練習場には、当時では珍しかったスイングを撮影する専用カメラが設置されていて、常にセルフでスイングチェックができた。

理想のラインに合わせて体を動かす。小さいことをコツコツ続けることが好きという横山は、その作業に没頭した。「運動神経のいいお姉ちゃんは、地味な作業過ぎてすぐに断念。私は同じことを続け、徐々に結果が出るゴルフというスポーツに適していたと思います。うまくいかないと父に叱られ、冷たい言葉を浴びせられたり、ボールを投げつけられることもありました。ただ、ゴルフ自体は好きだったので、自らやめることはありませんでした」

ジュニア時代に出会った藍ちゃん&さくら

中学に入った頃には「四国ジュニア」に参戦。成績も残せるようになる。念願だったハーフ30台、トータル70台が出て、父を喜ばせた。だが、全国大会は強豪ぞろい。横山が78で喜んでいた試合に、1歳下で中学生ながら66で回るジュニアが居た。その子こそ、当時全国大会の常連として名をはせていた宮里優作の妹・宮里藍さんだった。

「藍ちゃんとは中学時代に全国大会で顔を合わせるようになり、『日本ジュニア』が行われる前週に栃木県の那須野ヶ原カントリークラブで合宿を行った際、仲を深めることになります。香川西高校からは私1人で参加していたので、合宿地から会場まで移動するのも1人で行こうと考えていたのですが、藍ちゃんが『バスに乗りなよ』と誘ってくれたんです。彼女の東北高校は男子も女子も大勢で来ていて、バスで移動をしていたので『先生に言ってあげるよ、乗りなよ』と。車中で色々な話をし、ご飯も一緒に食べ、行動を共にするうちに仲良くなっていきました」

宮里藍さんと同じ1歳下の横峯さくらも、横山の中には印象的なジュニアとして記憶に残っている。「高知県の明徳義塾高校だった(横峯)さくらとも四国大会でいつも顔を合わせていました」

「ただ、彼女は一風変わっていて、ラウンドの朝にスタート直前までロッカー室に潜んでいる感じで。何時スタート? って声をかけても『んん…』と小さな返事のみ。私たちがレンジで打ち込み、ストレッチを終えてようやく出てくるような状態で、こんなにやる気ないの!? って驚いたことを覚えています。ただ、それでも彼女にとっては四国大会を突破するくらいは余裕だったのだと思います」

「キャディやらせてよ」 人生を変えた最高の2週間

横山はその後、ゴルフを続けながらもプロになる夢は持たず、スポーツインストラクターになる夢を抱いて、専修大学に進学する。

運命を変えたのは大学1年のとき。アマチュアとして2003年『ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン』に優勝し、プロ転向した宮里藍さんから声がかかった。彼女がCM撮影などの関東に出向いた際、友人として行動を共にしていた横山は何気なく「キャディやらせてよ」と打診していたのだ。親友の言葉を受け、宮里さんから正式にキャディをお願いされた。

問題だったのは、それが賞金レース真っただ中だったこと。1位の不動裕理を追う形で臨んだ終盤戦「大王製紙エリエールレディス」。「当時はプロゴルフに全く興味がなくて、彼女が賞金女王争いを繰り広げていることも、どんな立場で世間から注目されているかもよく分かっていませんでした。何気ない気持ちでキャディを勤めましたが、たぶんそんなフラットな気持ちが藍ちゃんには好印象だったらしく、プレー中にプレッシャーを感じない関係性を求め、選んでくれたと思います」

宮里藍さんはそこで優勝を果たし、横山は次戦・最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」でもバッグを担ぐ。最終日まで不動裕理と優勝争いを繰り広げ、惜しくも女王にはなれなかったが、まさにツアー史に残る一戦となった。その試合を最後に宮里さんは海外ツアーに乗り出すことになる。

「私にとって運命を変える2週間でした。後にも先にもゴルフ人生で最高な瞬間だったのかも」。これを機に横山の胸中にプロへの意識が芽生え始めた。

《後編「プロテスト合格から苦悩の17年」に続く》

取材協力/大宮公園(埼玉県)

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