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日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ “ローポイント”って何? (前編)

日本ではおそらく初となるショートゲーム専門コーチが国内男女ツアーで活躍しているのをご存じだろうか。そのコーチの名は永井直樹。元々男子ツアーのQTを受けるなどツアープロを夢見ていたが、早々と進路を見極め、コーチ業の道を選んだ。まだ26歳という年齢で専門コーチを職業に選んだ理由を探りつつ、普段のレッスン活動を紹介していく。(取材・構成/服部謙二郎)

アプローチが苦手だからこそ分かること

――日本では珍しいショートゲーム専門のコーチになった経緯を教えてください

そもそもコーチを目指すことになったのは、自分が選手として目澤さん(目澤秀憲コーチ)に習ったのがきっかけです。ちょうど目澤さんが松山英樹さんのコーチになる前のことでした。翌年の「マスターズ」優勝を目の当たりにして、「コーチってすごい仕事だな」とその存在を強く意識するようになりました。

おととし、昨年と日本ツアーのQTを受けたのですが、体調不良が重なりうまくいかなくて。自分自身、選手としての将来に迷いを感じていたことも、コーチになる決断理由のひとつにあります。

また、選手のときにサポートしてもらっていた、名古屋のゴルフスタジオの社長さんから「永井君、コーチに向いてると思うよ」と声がかかるなど、タイミングも重なりました。それが昨年の3月、正式にコーチになったのはそこからです。その頃から目澤さんと一緒にレッスンをやらせてもらうことが増え、そこから師弟関係が続いています。

コーチの中でも、アプローチ専門になったのは、タイトリストのレップの方に「パッティングコーチはいるけどアプローチコーチはいないよね」という話になって、「興味あるなら、やってみる?」という感じで勧めていただいたのも大きかったです。ことしからは、タイトリストのウェッジコーチとしても活動させてもらっています。

――元々アプローチには自信があった?

それが全然で(笑)。元々ドライバーが得意で、飛距離も300ydくらいは飛んでいました。アプローチだけはちょっと苦手で。まさかそれを教える側になるとは思ってもいませんでしたけど、自分も悩んでいたから、悩んでいる選手の気持ちも分かる。ただどうすればいいかというのは、なるべくデータで分析して、より良いやり方を提案するようにしています。そのほうが説得力がありますし、選手も納得しやすいと思うんです。上手い選手はどういうデータで打ってるとか、ショットからのつながりで、こういうショットタイプの選手はアプローチでもこう打ってるとか。そういう話は選手の食いつきもいいですし、自分自身で調べたり、目澤さんから教わったりするのも楽しいです。

ーーどのようにショートゲームの理論を学んでいったんですか?

今は、海外のトップコーチが発信している、アプローチのコーチングに関する動画を見て勉強することが多いです。ビクトル・ホブラン(ノルウェー)のコーチ、ジョセフ・マヨとか、「ショートゲームシェフ」の名で活動しているパーカー・マクラクリン、それに「ウェッジマトリックス」というアカデミーをやっているジェームズ・リドヤードとかですね。あとはセミナーがあれば、積極的に行くようにはしています。

アプローチって、いろいろな打ち方があっていいと思うし、ひとつのやり方がある選手に合っているからといって、全員に合うかというとそんなことはないんですね。ショットでもそうだと思いますけど、たとえば、ある人には「手を返せ」と言ったらすごく上手くいって、別の人はものすごいミスになるとか。どういうタイプの人に、どういうアドバイスが合っているか、自分の中で情報をちゃんと咀嚼して、その上で選手に伝えられたら、選手のほうもいろいろ迷わなくて済みます。それが自分の役割だと思っています。

「右に置いてつぶす」はもう過去の話?今どきは「左に置いて」…

――専門コーチとしてアプローチの技術を研究する中で、昔と今で「常識」が変わったということありますか?

自分自身、アプローチは「ボールを右に置いて上からつぶして打つもの」だと信じてずっとやってきたんです。低く出てスピンがかかる球はそうやって打つと。昔はそれが常識でしたが、途中からちょっと疑問に思うようになりました。というのも、ボールを右に置いてつぶして打ったら、絶対低い(低すぎる)球になっちゃうんですね。どうしてもロフトが立つし、ハンドファーストに当てたりしたらなおさらです。だから自分が打つと、思ったより強く出て、スピンも効かないことが多かったんです。そうなるとボールは「左に置いたほうがいいんじゃないか」と。

それが2000年くらいから、ツアープロの技術が明らかに変わってきて、とくにPGAツアーでは「右に置いてつぶす」をやる人はひとりもいなくなりました。どうやって打っているのかよく見ると、ボールは左足寄り、それでいてヘッドは上から入っている。球は低めに出るけどスピンはすごくかかっているんですね。

「右に置いてつぶす」も、そういう球を狙っていたはずなのに、やり方が違ったわけです。ちゃんと理解したのはつい最近のことなんですけど、大事なのはいかに「ローポイント(スイングの最下点)をコントロールするか」と、いかに「スピンロフト(インパクト時のロフト=ダイナミックロフトと入射角を合計した数値)を確保するか」ということだったんです。*スピンロフトに関しては後編で詳述。

――アプローチが苦手な人は、ローポイントが右にある?

そのケースが多いです。アプローチの場合、地面より先にボールにコンタクトするのが大前提になりますが、その場合、ローポイントをボールより先にもっていけば、必然的にボールに先に当たることになります。逆に、ローポイントがボールの手前になると、地面に先に当たるのでザックリになりやすい。ボールを右に置くと、ボールに先に当たるような気がしますが、実際は右に置いたボールのさらに右にローポイントがきてしまうケースも多いです。

自分自身、「右に置いてつぶす」をやっていたころは、よくザックリしていました(笑)。右に置くとやっぱり球が強くなっちゃうので、ボールを少し左に置いて、ロフトをつけて当てようとしたこともありますが、打ち方としてローポイントが右なので、今度はリーディングエッジに当たってトップみたいな球になっちゃうんです。アマチュアの方でも右に置くとザックリして、左に置くとトップするという人は結構いると思いますが、自分もほとんどそれと同じ状態だったんですね。

――どうすればローポイントを左にできますか?

アドレスで、左足のつま先を45度くらい開いてみてください。それに連動して胸が(目標方向に)回転するはずなので、その時点でローポイントがボールの先に移動します。そのままテークバックして、できればダウンスイングでさらに少し左に動きながら(重心を移動させながら)打つと、ファーストコンタクトがボールで、その後で地面に当たる打ち方になります。つまり、ローポイントは胸の向きでコントロールするということなんですね。

胸が左を向くと、ローポイントも左になり、胸が右を向くと、ローポイントも右になりやすいということです。ドローヒッターは、胸を右に向けて打つクセがついていますから、アプローチでもローポイントが右に残りやすい。また、これもドローヒッターに多いですが、右サイドを縮めて打つ(右サイドベンドが強い)タイプの人も、ローポイントが右に残りやすいです。

アドレスで注意したいのは、左足を「開く」のではなくて、「引いて」しまうと、右重心(右足体重)になりやすいということです。コツとしては、かかとの線を揃えたまま、つま先だけを開くということ。かかとのラインがずれてしまう(左かかとが右かかとより後ろになる)と右重心で、右足を軸にした回転になりやすいので、ローポイントも右になります。つま先を開いて、胸も開いたときに重心が左にかかっているのを感じられるというのが、正しく構えられているかどうかの目安になります。

<後編に続く>

協力:キングフィールズGC

ローポイント「左」のお手本アプローチ分解写真

日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) 左足つま先を開き重心は左へ

左足つま先を開き重心は左へ

日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) 手元は内、ヘッドが外のイメージ

手元は内、ヘッドが外のイメージ

日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) 重心は左にかかったまま

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日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) 左肩の位置は高いまま

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日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) ややシャフトは傾いてインパクト

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日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) このタイミングがまさにクラブの最下点

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日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) 最下点を過ぎてヘッドが自然に上がる

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日本では珍しい「アプローチ専門コーチ」永井直樹とはナニモノじゃ!?ローポイントの重要性 (前編) クラブはずっと胸の正面

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