中島啓太 ボクの打ち方LESSON vol.1 「ドローとフェードは手首の形で打ち分ける」
中島啓太 ボクの打ち方LESSON vol.2「2つの悪い動きを一気に解消する“片目打ち”」
プロになって初めてのメジャー「全英オープン」を前にインタビューに応じた中島啓太。「今は迷いがない」という自信のスイングについて、いくつかのポイントを教えてくれた。初回のドローとフェードの打ち分け方に続いて、第2回は悪い癖の修正方法をお届けする。(後編)
「右への倒れ込み」との戦い
中島のスイングといえば、やはりダウンスイングからインパクトにかけての右サイドの“しぼり込み”が特徴的。体の右サイドの側屈を使って、かなり低い位置からシャローにヘッドを入れる様子が見てとれる。
ただし、この右サイドのしぼり込みの動きは中島のトレーナー、栖原弘和氏に言わせれば、「インパクトにかけて頭が右足方向に落ちていくとボールは上がりやすくなりますが、体の右サイドが圧迫されて腰や首に負担がかかる」とまさに諸刃(もろは)の剣。中島は昨年から、「右に倒れ過ぎずに球を上げる」というまさに“スイングの矛盾”と格闘してきたのだった。
ガレス・ジョーンズ・コーチの助言をもらい、ドライバーのロフト角を調整してきたのも右への倒れ込みを防ごうとする意図の表れ。
「ロースピンでハイボールを打っていけば飛ぶのは分かるんですが、球を上げようとし過ぎて、どんどんスイングが悪くなっていた。ロフトの立ったクラブで打っているから、(球を上げようとして)余計に倒れ込んでしまうんじゃないかという指摘を受けました。逆にロフトのあるクラブなら、倒れ込まなくても球が上がってくれる。ですから、スイングを直す意味でもロフトのあるドライバーに変えました」(中島)と、一時は11度というハイロフトのドライバーを選んだこともあった。今はスイングが良くなってきたことから9度台に戻している。
長期的なスイング改造で2つの悪癖を解消
1年半前から続けてきたそのスイングの格闘の末、中島に2つの変化が生まれた。ひとつはテークバックでその場で回れるようになったこと。「今までは体が右にふわっと行ってしまっていた」(中島)と、右にスウェーしやすくトップで頭が右を向き過ぎるケースが多かった。その状態から切り返すことで右への倒れ込みが生まれていたのだ。
もうひとつの動きの変化について中島は「トップがコンパクトになりました」と言う。右へのスウェーを嫌がってオーバースイングになるケースもあり、反動で右に倒れ込む動きが助長されていたという。今は「体がセンターにいながらポジションを変えずにクラブを上げ下げできています。その結果、(右への)倒れ込みがだいぶ減った」とスイングの成長を感じている。
実はこの2つの動きの変化、栖原トレーナーからのあるアドバイスが大きかったそうだ。「昨年のZOZOチャンピオンシップの時に栖原さんに『利き目はどっち?』っていきなり聞かれたんです。右目ですって答えたら『じゃあ、左目にテープを貼って見えないようにして練習しようか』ってテープを渡されたんです」
中島の悪い癖である「頭が右に傾く動き」になった時は、左目を閉じるとトップでボールが見えなくなる。オーバースイングになっても同じことが言え、トップでボールは視界から消えやすい。つまり「トップの位置で片目でもボールが見えるようにクラブを上げること」は、スウェーや頭の傾きといった悪い動きを一気に解消するというわけだ。
言われてみれば、昨年のZOZOの練習場で左目にテープを貼って練習していた様子を思い出す。練習を終えた中島の左目の周りは、テープの痕で赤くなっていた。
栖原トレーナーは中島の取り組み方について「短期的に結果が出なくても、2、3年後に結果が出るようにという信念をもとに取り組めているのが彼のすごいところ。中長期的な視点を踏まえて、今、何をしなければいけないのか、それをやり続けられる姿勢にはいつも驚かされます」と評価する。
「今はスイングに迷いが少ない」と自信を持って言い切る中島。最近はジョーンズ・コーチとはスイングの話をする機会もほとんどなく、その事実からも今はスイングが安定していることがうなずける。「ジョーンズさんや栖原さんに助言をもらって、すごくその言葉を信頼していましたし、それを信じてスイングやクラブも変えながらやり続けてきました」
中島を支えるチーム力と、それを信じてやり切る選手の力。今まさにその成果の果実をもぎ取る時がやって来た。(編集部/服部謙二郎)
中島啓太のドライバースイング(フェード)をご覧ください
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