飛びとやさしさ「どちらも100点」 高次元両立の裏側に迫る
進化したAIで「これはすごいことになりそうだ」
一方、2019年からクラブ開発にAIを導入している同社は、研究者のレベルが当時より上がっており、米本社に現在3台あるスーパーコンピューターも処理能力が高くなっている。より膨大なデータを製品に落とし込む体制ができてきたということだ。
たとえば、AIを使った最初のモデル『エピックフラッシュ』では「フェースの耐久性やルール違反にならない中でボールスピードを最大に、などシンプルなインプットだった」と茂貫。当時はデータを入力して答えが出るまでに約1カ月かかったが、いまでは打点の傾向や打ち出し角、バックスピンの適正までインプットする情報が膨大となったにもかかわらず、翌日までには処理してしまうという。
そして、ボディーとフェース、それぞれの研究チームが高いレベルでお互いのベストを出し合って「これはすごいことになりそうだ」と生まれたのが、360°カーボンシャーシで構成し、進化したAI設計のフラッシュフェースとY字状に変化したジェイルブレイクを搭載した新ドライバー『パラダイム』だ。シミュレーションしてみるとこれまでとは違った高数値で「次元が変わった」と茂貫でさえ驚きを隠せない。
常識や先入観を覆すか
茂貫に過去のモデルを点数で問うと、『エピック』は飛びが100点でやさしさが70~80点、次作の『ローグ』はやさしさを90点超に上げてきたという。今作の『パラダイム』については「飛びとやさしさ、両方が100点満点」と言ってはばからない。
常識や先入観にとらわれない劇的変化、すなわちパラダイムシフトが起きる期待を込めて完成させたドライバーは、ゴルファー別に4つのシリーズを用意して発売することになった。アベレージを含めた様々なレベルのアマチュアにもテストしてもらい、スイングのトレンドによる打点分布やミスの傾向の変化を把握。それを蓄積されたビッグデータと照らし合わせることでユーザーごとに最適の1本を選べるようにしている。
「扉も見せてもらえない」という秘密の部屋でAIによって設計され、最終的には打音などにおいて開発者の人知も加わった最新技術の結晶。劇的な変化を起こしてくれるかどうか、まずは打ち比べてから判断するのがいいかもしれない。