「ボールは1つ」つくる難しさと面白さにのめり込んだ開発者のこだわり
新モデルの開発では300種以上の試作
2年ごとにリニューアルされるシリーズ。現行の「Z-STAR」の開発では300種以上の試作を繰り返した。「コアだけつくって思い通りにならなかった場合はそこでやめてしまうので、ボールとして完成させたのは200種ぐらい」
最も難しいのは、人の感性が大きく影響する“打感”の部分だという。テストの初期段階では大学のゴルフ部員やミッドアマ出場者ら、競技ゴルファーに打ってもらう。「ただ、10人が打って、全員同じ感想になることはありません。ボールのどの部分が影響して、人によって硬く感じたり、やわらかく感じたりするのか。開発においては、それらを一つひとつ解き明かしていくしかありません」
ゴルファーの好みもそれぞれで、これを数値化して正解を導き出すのは不可能に近い。それでも「最大公約数」となるボールの性質を求めた最新ボールは生み出される。
ボール選びはパッティングの試打で
子供が生まれたばかりで、ラウンドどころか練習時間もなかなか取れないのが悩みという井上だが、数少ないプレーの機会では自ら開発したボールを試している。
「最新モデルの中では新たにラインアップに加わった『Z-STAR ◆(ダイヤモンド)』が好み。パッティングの際、『Z-STAR』のやわらかいフィーリングと、『Z-STAR XV』のようなインパクトでコツンと音がする部分がある、いいとこ取りのボール」だそうだ。
開発者である井上が、一般のアマチュアゴルフファーに薦めるボール選びの基本は、パッティングでの試打だ。「ドライバーで何種類ものボールを試せる環境がある人はなかなかいません。その点、パターなら何回でも試せます。実際、やわらかいボールで距離感が合う人、硬いボールが合う人もいます」。スリクソンのボールを愛用する松山英樹も、ボール試打は必ずパターから始めることで知られている。
それぞれに最適なボールを見つけて欲しい
「ゴルフにはいろいろな楽しみ方があるので、バラバラの銘柄が詰まったロストボールでプレーすることを否定はしません。ただ、開発者のこだわりがつまったボールは、すべてのクラブに好影響を与えてくれます。それが1個数百円で手に入れられるので、クラブを買い替えるよりも、効率よくスコアアップにつながる可能性があると思います。今までボールに無頓着だった方にも、一度、試してもらいたいです」
井上がすべてのゴルファーに合うようなボール構造を見つけるには、まだまだ時間が必要。正解があるのかどうかも分からない。しかし、個々のゴルファーにとってベストのボールを見つけるには、それほど時間はかからないはずだ。