今さら聞けない「距離、高さ、深度」ヘッドの重心について
重心高さは下からor上から? 一周回って考える低重心ヘッドの価値/ギアを愉しむ。
低重心だから重心が低いとは限らない
今回は趣向を変えて、ゴルフクラブの進化ポイントを目で見て理解するというテーマで書いてみたい。春は新製品が続々と登場するタイミングでもあるので、進化ワードを正しくイメージし、豊富な選択肢から最適ギアを選んでいただきたいと思う。
最新クラブの広告において、“低重心”というキーワードをよく目にする。『低重心化を促進してバックスピンを適正化!』『低重心にして打ち出し角をアップ!』といった文言は、ドライバーだけではなくフェアウェイウッド、ユーティリティ、アイアンまで広く使われる定番ワードとなっている。
では、なぜこれほど“低重心”が重要なのか? 次の写真をご覧いただきたい。
どうだろう? 黄色で示したそれぞれのフェース面上の重心は、大型ドライバーもパーシモンもほぼ同じに見えるだろう。ご覧の通り、ソールからの重心点は決して低くなっていないのだ。“低重心”という言葉からイメージできるバランスポイントよりも、遥かに高い位置に重心がある。かなり意外に思った人は多いのではないだろうか。
では、クラブメーカーが嘘を言っているのかといえば、そんなことはない。今度は視点を変え、ヘッドの上部(クラウン方向)から黄色の重心点までの距離を見ていただきたい。大型チタンのほうが、かなり重心の上側にも打点エリアが広がっていることが分かる。実はこれが“低重心”ヘッドの本当の価値であり、設計者がやりたかったことなのである。
クラブの進化を目で見て理解する
フォーティーンの創設者でクラブ設計家でもある故・竹林隆光さんは、ソールから重心までの距離を「重心高1」、フェース上部から重心までの距離を「重心高2」として計測。見極めポイントは「重心高2」、と教えてくれた。
それはヘッドの特性上、重心より下で打つとバックスピンが増え、重心より上で打つとバックスピンが減少することに起因する。これはインパクトの衝撃でヘッドが傾くことによって発生する“ギア効果”の影響。竹林さんは、低重心化することでフェースセンター方向に重心を下げていけば、適正スピンで飛ばせるエリア(有効打点エリア)が広がると説き、今やそれが設計の基本となっているのだ。
ちなみに、ひと昔前の上級者の間では「フェースの“トウ寄り上め”で打つと飛ぶ」とまことしやかにささやかれていたが、これは重心より上側で打つとスピンが減り、重心よりトウ側で打つとドロー弾道が出やすいスピン軸に傾くからである。パーシモンドライバーを見ていただければ分かる通り、昔のクラブには重心より上でヒットするスペースがほとんどない。つまりパーシモン時代はフェース真ん中で打つだけで、ハイスピンになりやすい高重心設計だったのである。少しでもロースピンになる“トウ寄り上め”が飛ばせる打点としてクローズアップされていたのだ。
フェース面のほとんどがハイスピンエリア(飛ばせないエリア)であった時代から、フェースセンターを中心に大きくロースピンエリア(適正に飛ばせるエリア)が広がった現代。その恩恵はまさしく“低重心化”によってもたらされた。逆に、昔のように打点を意図的にズラすことで弾道を操ることが難しくなっている、ということも合わせてイメージしておく必要があるだろう。(高梨祥明)
高梨祥明(たかなし・よしあき) プロフィール
20有余年ゴルフ雑誌のギア担当として、国内外問わずギア取材を精力的に行い、2013年に独立。独自の視点で探求するギアに対する見解は、多くのゴルファーを魅了する。現在は執筆活動のほかマイブランド「CLUBER BASE(クラバーベース)」を立ち上げ、関連グッズの企画や販売も行う。
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