東五反田ギア総合研究所

「クアンタム」を一斉計測 重心距離「短」傾向で“つかまえて飛ばす”時代に/26ドライバー研究#4

2026/05/20 07:00
「クアンタム」ドライバーを一斉計測!

26年モデルの中でも注目されるドライバーの特性やポテンシャルを、重心データから読み解くこの企画。クラブデザイナーでありジューシー㈱を主宰する松吉宗之氏にヘッドの計測を依頼して、各モデルの性格を分析しつつメーカーの狙いを考察してもらう。4回目はキャロウェイの「クアンタム」シリーズ4モデルだ。

#1 ドライバーのトレンドは“扱いやすさ”へ 「大MOI時代」は終焉か…

#2 「大MOIでやさしい」から「つかまりやすさで飛ばす」時代へ

#3 「Qi4D」を一斉計測 “コアモデル”の調整幅にワクワクする!

前衛的なフェースのテクノロジーを創造してきた

ボール初速をUPさせる“2本の柱”こと「ジェイルブレイクテクノロジー」(2017年「GBB EPIC」シリーズから搭載)やAI(人工知能)がデザインしたフェース(2019年「EPIC FLASH」シリーズから搭載)など、革新的なフェースのテクノロジーを生み出してきたキャロウェイ。

26年モデルの「クアンタム」シリーズは、チタン、ポリマー、カーボンの三層でできた「トライフォースフェース」を用いることで、インパクトのエネルギー効率を高めて初速性能をより向上させた。ローンチされた段階ではタイプ違いの5モデルがあり、今回はその中でも「MAX」「MAX D」「◆◆◆ MAX」「◆◆◆」の4ヘッドを松吉氏に解説してもらった。

「これまでのように、ヘッドの慣性モーメント(MOI)をそれほど追い求めないようにして、扱いやすさや振りやすさに寄せている印象です。それは26年モデルの全体的な流れですが(#1を参照)、キャロウェイはそういう傾向がより強いのではないでしょうか。少しやさしい方向に振っていますね」

前作「ELYTE(エリート)」シリーズの実測データも見ながら、新作の「クアンタム」シリーズについて深掘りしよう。

計測した項目とその説明はこちら

高バランスで万人向きの「MAX」、“取り回し”がいい「MAX D」

計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

スタンダードモデルの「クアンタム MAX」の実測データを見ると、ヘッドのMOIが4モデルの中では最も大きくて(5049g・cm2)、ミスヒットの寛容性がほどよくある。また、重心深度(41.9㎜)と重心距離(41.1㎜)の数値が近いので、ヘッドの動きを素直に感じやすい。

「この『MAX』はとてもバランスがいいデータで、スタンダードモデルだけに“どノーマル”という印象です。実は『MAX D』もわりと似た印象ですが『MAX』よりも重心距離が短くて(38.4㎜)、若干“取り回し”がいい。『MAX D』のほうが、少しつかまりやすくてやさしく感じられるでしょう」

計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

実測データを見ると「クアンタム MAX D」は、前作の「ELYTE X」よりもヘッドのMOIが抑えられているが、重心が浅く・短くなったぶん扱いやすくなったことがうかがえる。また、松吉氏が指摘したように「クアンタム」シリーズの“MAX系”の2モデルは、重心データがかけ離れてはいない。

「ヘッドの形状とか構えたときの印象はけっこう大事なもの。その辺りは2モデルを試打して、自分の好みに合うほうを選びましょう」

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“アマチュアが使えるツアーモデル”に食指が動く

計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

ツアーモデルであることを示す“◆◆◆”と、やさしさをイメージさせる“MAX”を掛け合わせた「クアンタム ◆◆◆ MAX」。“ボクらも使えるツアーモデル”という絶妙な存在感に、日本のアマチュアが惹きつけられる。

「スタンダードモデルの『MAX』に対して重心距離がかなり短く(37.6㎜)、『ヘッドの操作性=自分で動かしやすい』ことを重視していると思います。かといって、重心深度が深すぎるわけでもないので(41.3㎜)、勝手に球がつかまって左に行くほどではありません。“球が左に行くのはイヤだけど、ヘッドをコントロールしたい”というところを目指しているのでしょう。それでいてヘッドが大きくて、MOIもしっかりあります(4836g・cm2)」

松吉氏が「年齢を重ねた競技ゴルファーがいちばん欲しがっている性能が、重心距離が短めでフェースをコントロールしやすいこと」だと言う。

「フルショットだけじゃなくてドライバーでも高さを抑えて打ったり、多彩な球を打ち分けたりしたければ、『◆◆◆ MAX』や後述する『◆◆◆』のほうがやりやすいと感じる人がたくさんいるでしょう。そういう点で、この2モデルは基本的に同じ傾向だと思います」

◆◆◆は弾道をコントロールしてコースを攻略できる

計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

プロ・上級者向けに開発されたアスリートモデル「クアンタム ◆◆◆」について、松吉氏はこう分析する。

「重心深度が浅く(38.6㎜)、重心距離も短くて(36.0㎜)、MOIが小さめ(4577g・cm2)なので、ヘッドをよりクイックに動かせます。安定感は少し減りはしますが、そのぶん上手な人にとっては意図的にコントロールしやすいですし、自分の意志で球をつかまえることもできる。スイング的には昔ながらのタイプ(フェースローテーションを積極的に使う)が最も合うでしょう。それから、リアルロフトが立っている(9.7度/表示ロフト10.5度)ので、スピンが減りやすくなります」

前作「ELYTE ◆◆◆」と比べても重心深度と重心距離がさらに抑えられて、操作性に振っていることがデータからもうかがえる。

松吉氏は「クアンタム ◆◆◆」の可変式ウエートについても言及した。

「後方のウエートを入れ替えることで、ニュートラルからフェードバイアスに変えられます。ゴルフ歴が長い人たちにとって、ノーマルポジションが操作しやすくなっているのは魅力だし、それで球がつかまりすぎたらフェードバイアスに調整して逃がせる。従来のようにつかまる方向に調整するのではなく、逃がす方向に調整するのは“なんか上手な気持ちになれる”というゴルファーの心理をくすぐるような設定じゃないでしょうか」

◆◆◆のウエートは球を“つかまらなく”する方向へ調整可能

“取り回し”が良く幅広い人が使えるようになった

ここまでの「クアンタム」シリーズを振り返ると、重心距離がカギになるようだ。松吉氏は考察する。

「シリーズを通して、MOIをそこまで大きくしない代わりに、全体として球のつかまえやすさにやや振っている印象です。『◆◆◆』をはじめ、重心距離が短くなっているところが特徴的ですね。

これは一般ユーザーとツアープロの両方の意見によるものだと思います。大きいヘッド(重心距離が長いヘッド)を使って活躍している選手がいる一方で、その陰に隠れている“活躍予備軍”のような選手たちには、まだまだ“扱いやすさ”を求めている人のほうが多いのが現状じゃないでしょうか。そういう人たちのニーズに少し近づいていったのかもしれません」

つまり、MOIが大きくて重心距離が長くなると、そういうヘッドに対応できる人と対応できない人の差が出てしまう。その差が顕著にならないように、できるだけ多くのプレーヤーが使えるようにしたということ。それは一般アマチュアにも当てはまることで、より幅広い人が球をつかまえやすくて、結果を出しやすくなったと言える。

次回(#5)はゼクシオとミズノ、2つの日本ブランドに迫る。

文:新井田聡
クラブ写真:小林司
取材・編集:中島俊介

■ 松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール

ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。

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