プロギア「RS DUO」を一斉計測 MAXで他社のLS相当 “飛びに全振り”3兄弟/26ドライバー研究#9
2026年モデルのドライバーを重心データによって解剖する企画。クラブデザイナーでジューシー(株)を主宰する松吉宗之氏にヘッドの計測を依頼して、それぞれのモデルの性格を解き明かしてもらう。9回目はプロギア「RS DUO」シリーズの“3兄弟”だ。
“飛ばし”にプライオリティを置いて作られた
プロギアの開発チームが約10年の歳月をかけて生み出した4層複合構造の「DUOフェース」を搭載し、「RS」シリーズで歴代最高の初速性能と最も広い高初速エリアを持ち合わせたRS DUOシリーズのドライバー3モデル「RS」「RS MAX」「RS F」が、この7月にローンチされた。
新開発のDUOフェースは、カーボンコンポジットヘッドの先駆けモデル「DUO」(2003年発売)を彷彿とさせるネーミング。最内層に極薄の高反発チタン、中間層にインナー素材、最外層に極薄カーボンを重ねた“外柔内剛”の4層構造フェースとしている。
結論から述べると「飛ばせる機能に全振りした、飛距離最優先で設計されたドライバーです」(松吉氏、以下同)と言うが、その根拠を含め、ヘッドデータを見ながら詳しく聞いていこう。
「RS」はテクニシャンも満足できる低スピンモデル
シリーズのスタンダードモデルとなるRSについて、松吉氏はこう分析する。
「重心高さがだいぶ低く抑えられている(26.6mm)ので、低スピンにつながります。ヘッドの慣性モーメント(MOI)がそれほど大きくない(4437g・cm2)ためギア効果が生じやすく、スイートスポットより上に当ててスピンを抑えられるということ。と同時に、フェースのトウ・ヒール側に当てて、ドロー・フェードの打ち分けもしやすいです。しかも、重心距離が短い(35.7mm)ので、ヘッドを動かしやすくて取り回しがいい。テクニックがある人向けのドライバーと言って差し支えありません」
松吉氏は2003年に発売されて大ヒットしたプロギアのドライバー、DUOを引き合いに出してRSの性能をこう述べる。
「かつてのDUOは、カーボンクラウンにしたこともあって低重心になり『低スピンでスゴい飛ぶ』と言って、プロや上級者が喜んで使っていた記憶があります。この新作は、あえてDUOという名称を再びつけて、低重心にしつつDUOの良さを今風にリメイクしたという印象です」
一方で、アスリート向けでありながら、やさしさも味つけされているという。
「重心距離よりも重心深度の数字が大きい(38.6mm)ので、ヘッドの動きとしては少しやさしさが感じられるでしょう。それから、プロギアは基本的に、重心角を割と大きめ(26.4度)につけるメーカーです。重心距離が短いこともあって取り回しがよく、振り遅れて球が右に行くようなことはほとんどありません。そういう意味で一般的なゴルファーも低スピンの球が打てるかもしれません」
アスリートがやさしく飛ばせる「MAX」は実質LS系!?
モデル名に“MAX”がつくRS MAXは、シリーズの中では最もやさしい位置づけだが、一般的なドライバーでいうと“LS相当”だという。その真意やいかに?
「一般的な『MAX』のモデルは、ヘッドのMOIが5200~5300g・cm2、もっと大きければ5800~5900g・cm2まで行くモデルもあります。そこから比べるとRS MAXのMOIは5000g・cm2を切っていて(4916g・cm2)、他メーカーの『LS』と同じくらいの性能と言えます。それでも、シリーズの中ではMOIが最も大きくて『打点ミスに強くてやさしい』レベルのMOIは備わっています」
重心深度や重心距離のデータからも“MAX系よりLS系”であることが見て取れるという。
「重心深度が深いわけでもない(39.7mm)し、重心距離が長いわけでもありません(37.7mm)。このくらいの重心深度だと、少し安心感がある雰囲気がありますが、決して上を向きすぎないしつかまりすぎない。ただ、前述したように、プロギアらしく重心角は27.6度と確保してあるので、振り遅れないしスライスもしないでしょう。この辺りも、他のメーカーで言う『LS』と同じような性能で、飛びそうな感じがあります」
それならばRS MAXは、どんなゴルファーに適した、どういうモデルなのか?
「競技志向ゴルファーの中でも『飛ばしたい』という明確な目的があって、その中で多少のミスヒットをカバーしてもらいたいプレーヤー向けのモデルです。安定して良い結果を楽しむエンジョイ派向けではありません。とくに外資系ブランドのほとんどは、超やさしいモデルが『MAX』で、やさしく打てる中で最も飛ばせるモデルが『LS』というラインアップになっています。対してこのRS MAXは、アスリート側からやさしく飛ばせる性能に寄っていて、一般的な『LS』くらいの性能に仕上がっているイメージですね」
“フェードのF”を受け継いだ、ロースピンのRS F
アスリート向けに振り切った、今どきドライバーの中ではかなりトガったモデルがRS Fだ。
「このモデルは、重心深度を浅くして(34.0mm)低スピン化を図っています。フェースが上を向こうとせず、インパクトロフトが立って当たりやすいこともあって、スピンが抑えられる。また、重心が浅いことによってヘッドのMOIが小さくなったし(3981g・cm2)、従来のプロギアからすると重心角がだいぶ小さく(20.7度)なりました」
この重心設計によって、どういうヘッドの特性になったのだろう?
「重心角が小さいとヘッドが勝手にターンしようとしないので、球が左に行きません。それでいて重心距離が短め(37.4mm)なこともあって、ヘッドの取り回しがかなりいいので、自分でつかまえようとすればつかまえられます。フェースをローテーションする、やや古風なスウィングの人も打ちやすく感じるでしょう。
それから、ヘッドのMOIが小さいとギア効果が生じやすく、打点の違いで弾道を打ち分けやすい。フェースの上目に当てればスピンをセーブできるし、ドローやフェードの打ち分けもしやすいです」
今どきドライバーの中では、クラブが球を上げてくれたりつかまえてくれたりする“お助け度”は少ないが、コントロールしやすくて状況に応じて意図した球が打ちやすい。難関コースを攻めるため、スコアを作るための実戦的なドライバーがRS Fと言える。
“3兄弟”のそれぞれが個性的で、キャラクターがくっきりと色分けされているRS DUOシリーズのドライバー。その際立った持ち味を味方につければ、心強い長距離砲になることは間違いない。
文:新井田聡
クラブ写真:野村知也
取材・編集:中島俊介
■ 松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール
ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。