日本で一番売れている“プラグイン”はゴルファーにアリ! 三菱「アウトランダーPHEV」/クルマはゴルフギアである #1
「できることならずっと運転していたい」という稀代のクルマ好きである安東弘樹氏に、大人ゴルファーの“持ち物としてのクルマ選び”を提案いただく連載。第1回に氏は三菱「アウトランダーPHEV」を指名した。(まとめ/編集部・中島俊介)
【GDO】
新連載「クルマはゴルフギアである」は、車体価格や燃費などの経済性だけでなく、所有して実際に使うことでオーナーが豊かになれるクルマを、大のクルマ好き安東さんに伺っていこうというものです。
【安東】
よろしくお願いします。私はゴルフはしないのですが、様々な方とお話しさせていただく機会が多いため、“ゴルファー像”は自分なりに理解しているつもりです。
いま、PHEVを所有する愉悦
【GDO】
今回は三菱自動車のアウトランダーPHEVということですが、ポイントはどこでしょう?
【安東】
環境に配慮した「PHEV(プラグインハイブリッド)」車がいま注目されているジャンルのひとつで、このクルマは日本で一番売れているPHEV車だということ。そして、2024年のマイナーチェンジでバッテリー容量が大きくなり(22.7kWh)、EV走行できるレンジが伸びたというのもポイントです。カタログにはEVで100㎞少々走れると記載されています。
【GDO】
実際に乗ってみましたが、一般道と高速道路を半々くらい走って85㎞ほどで電欠になりましたが、場合によっては90㎞くらいは走れると思いました。まあ、充電がなくなってもガソリンで走れるからいいのですが。
【安東】
自宅からゴルフ場までの片道を走るには十分なんじゃないかなと思います。ゴルフ場で充電できれば良いですし、とても効率的ですよね。「PHEV車を所有する」というのは、燃費だけでなく、先進技術を手にして体感することに大きな価値があるのではないでしょうか。エコロジーや地球環境に配慮し、環境負荷を低減しながらゴルフに行け、外国産SUVに見劣りしない風格を備えています。
【GDO】
確かに。本当は電気自動車が欲しいけれど行動範囲に充電設備がなくて断念している人にも一つの選択肢ですよね。
走りも乗り心地も高い完成度
【安東】
ご覧の通り、アウトランダーPHEVは立派な体躯を持つSUVですが、実によく走る。三菱自動車の誇る制御システム「AYC(※)」によって安定した走行性能を実現しています。三菱の4WDと言えば「ランエボ(ランサーエボリューション)」ですが、AYCはそれに由来する伝統の機構です。ランエボで磨いた車体制御のノウハウが、アウトランダーPHEVにも生きているというわけです。乗ってみて何かお感じになりましたか?
※アクティブヨーコントロール=素早くハンドル操作した場合や滑りやすい路面などで左右輪の駆動力差や制動力を制御して車体の旋回力や安定性能を向上させる機能
【GDO】
乗り心地が非常にいいので、ゴルフ場まで快適にドライブできそうです。
【安東】
足回りもすごく良いんですよ。欧州車に引けを取らない走りです。EVからエンジン駆動への切り替えが驚くほどスムーズ。乗り心地は適度に締まっていますが、クルマのキャラクターに合った絶妙のセッティングだと思います。
【GDO】
モードセレクタ-を触ってみました。高速道路を巡行するには「ターマック」モードがピッタリかなと。
【安東】
「ターマック」にすると駆動配分が後輪寄りになるようで、乗り心地に高級感が増すのかもしれません。マイナーチェンジ前のモデルですが、私はこのクルマでサーキットを走ったことがあります。SUVとは思えないくらいキビキビ走れるのにびっくりしました。オンロードの走行性能も非常に高いです。もちろん、オフロード走行もしっかりこなします。まあ、このクルマでオフロードコースを積極的に走ろうとする人は少ないと思いますが…(笑)
【GDO】
ステアリングパドルで回生ブレーキ(下り坂や減速時のエネルギーを電気に変えて充電する機構)の利き具合を調整できますね。
【安東】
私は、EVやPHEVは全て回生量を任意調節できるようにするべきだと思っていて、しかも、それをステアリングのパドルでできるのがこのクルマの美点の一つだと強く申し上げたいです。
実はすごい「4:2:4」の分割シート
【安東】
アウトランダーPHEVは、後席もすごいんです。シートが倒れるのは皆さんご存じですが、問題なのは倒れ方。多くのクルマが6:4分割ですが、アウトランダーPHEVは4:2:4分割、つまり真ん中だけ倒すことができるんです。
【GDO】
6:4や4:2:4とは後席が倒れる時の左右の比率ですね。ぱっと見では意外と気づかないポイントですが、キャディバッグを積むゴルファーにとっては大きな問題です。
【安東】
私は分割シートは4:2:4が良いと思っていて、ドイツ車も多くがそうしています。ですがこれ、すごくコストがかかるらしく、エンジニアの方によれば4:2:4分割を採用すると車体の根幹から剛性を考え直さなければならないため、60万円ほどの価格転嫁が必要になるらしく…。
【GDO】
それは看過できません!
【安東】
しかし、三菱のエンジニアはアウトランダーPHEVの後席を工夫して6:4分割のままセンター部分の上部だけを倒せるようにして、実質、4:2:4分割のリアシートを与えました。それがこの車格やイメージ、手にするであろう顧客のために最適だと判断したからです。
【GDO】
実際にゴルフバッグを積んでみました。プロが使うツアーバッグだと3つが限界でしたが、もう少しスリムなタイプなら4人でゴルフに行けそうでした。
【安東】
PHEVはバッテリー搭載の関係でエンジンだけのモデルよりも荷室容量が少ないのですが、アウトランダーPHEVはそれなりに物が積めて便利ですよね。真ん中だけを倒せば、家具屋さんで長い物を買っても家族4人乗車で帰れます。
【GDO】
欧州車にはセダンにもスキートンネルが常設されていますよね。後席真ん中にスキーの板を積めるようになっている。
【安東】
そういうところにコストを惜しまないほうが顧客満足度が高まることを知っているからですね。それともう一つ、アウトランダーPHEVにはかなり優れた装備がマイナーチェンジ時に付いたんです。
【GDO】
…と言いますと?
【安東】
シートベンチレーションです。真夏の炎天下に停めておいたクルマに乗ると、車内はもちろんシートも高熱になっているじゃないですか。背もたれと座面からシート表面の熱を吸い出して、体感的に冷やしてくれるんです。私はマイナーチェンジ前のアウトランダーPHEVに乗った時、買いたいと強く思ったのですが、この装備がないので泣く泣く諦めた経緯があります。
【GDO】
それほどまでに、シートベンチレーションは安東さんにとっては重要なんですね。
【安東】
通年使う装備ではないし、「それくらいで買わないなんて…」と思われるかもしれませんが、ほぼ毎日運転する私からすると絶対に譲りたくないポイントでした。それがマイチェンによって搭載されたのですから…非常におすすめしたいクルマになりました。
<Specification>
●全長×全幅×全高:4,720mm×1,860mm×1.750mm
●乗車定員:5名
●車両重量:2,160kg
●駆動方式:AWD
●ハイブリッド燃料消費率:17.2km/L(WLTCモード)
●EV走行換算距離:102㎞
●エンジン:2.4L直列4気筒
-最高出力:98kw/5,000rpm
-最大トルク:195Nm/4,300rpm
●モーター
-最高出力 前/後:85/100kW
-最大トルク 前/後:255/195Nm
●車両本体価格:6,405,300円(税込)
-試乗車価格:6,841,890円(税・各種オプション込)
取材協力:米原ゴルフ倶楽部
イラスト:酒井恵理
写真:篠原晃一

安東弘樹(あんどう ひろき) プロフィール
元TBSアナウンサーにして大のクルマ好き、いや“クルマ狂”。50台ほどのクルマを乗り継ぎ、TBS勤務時代から自動車ローンが途切れたことがないという。独自の視点から切り込む自動車関連のコラムを各種媒体で連載中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員で日本自動車ジャーナリスト協会会員。