ベテランツアー担当が実践するプロ対応の極意
選手にも社員にも自信を植え付けたい
信頼とともに、石橋は“自信”という言葉もよく口にする。「選手には自信を持ってプレーしてもらわなければいけません」。道具に対して少しでも不安があれば、それは実現できない。選手の要望を可能な限り汲み取り、自信を持って戦える環境を整えることが重要な仕事だ。
自信を植え付ける相手は選手だけではない。「プロに選ばれたということは社員にとっても自信になります。自分たちの製品に自信がないということはないでしょうが、すでに高い評価を受け、実績もあるスチールシャフトに比べると、カーボンシャフトの営業に行くときは消極的になってしまう。ツアーで使用者を増やすことで、そうした部分を変えていきたいと思っています」
担当する国内女子ツアーでは、日本シャフトのカーボンモデルを使用する選手が増え始めている。彼女たちの成績が向上すれば、社員のさらなる自信につながることは間違いない。「今年中にカーボンシャフトで優勝者を出す」ことを目標に掲げていた。その願いは、昨年の賞金女王・稲見萌寧が「リシャール・ミル ヨネックスレディス」で、「NSプロ レジオ フォーミュラ M+」を使用し優勝を飾ったことで達成した。
円滑に次なるステップへ進むために
また、選手の反応を持ち帰ることもツアー担当にとっての大事な仕事。「もう少しつかまりを良くしたい」など選手のリクエストにどんな方法で対応し、それが成功したのかといった詳細な記録を日々蓄積していく。
「私の報告書はゴルフを知らない総務部長も読んでいるので、なんとなくでも意味が分かるように言葉は選んでいるつもりです。ただし、営業や開発に役立てるために内容はマニアックですが」。選手の感性を伝わりやすい言葉に置き換えたフィードバックが、新製品の開発や他のツアー担当の活動につながっている。
ゴルフ漬けの私生活が高める自信
石橋の生活はプライベートもゴルフ漬けだ。
「朝起きて練習に行って、気になることがあれば、クラブを調整して、もう一度練習に行って確認する。あとはサウナに入って寝るだけ。これが休日のスケジュールです」
社会人になりたての頃は年数回のラウンド程度だったが、日本シャフトへの転職を機に本格的にプレーを再開。昨年は地元・神奈川県の秦野カントリークラブのクラブ選手権で優勝を果たした。「プレッシャーに弱いので、学生時代は団体戦が大嫌いでした。今は秦野CCの仲間とクラブ対抗に出るのが楽しいのだから、不思議なものですよね」
ゴルフ熱の高まりは仕事への自信にもつながっている。「誰よりもウチのシャフトを打っているのは私でしょう。単に数を打っているだけではありません。そういうことを許してくれる会社なので、番手ずらしなど、さまざまなことを自分自身で試しています」。このトライ&エラーはツアーの現場だけではなく、アマチュア向けの試打会でのフィッティングにも生かされているという。
ゴルフを再開した当初の目標は40歳までに「日本アマ」や「日本ミッドアマ」に出ることだったが、気づけば43歳。石橋は「自分のゴルフの目標は完全に見失っています」と苦笑いを浮かべる。
もちろん、ツアー担当として目指す目標は見失っていない。信頼と自信。こだわりを持つ2つの言葉を胸に、全国のツアー会場を駆け巡る。