日本シャフト特集
2022/07/04

「ジャンボさんからこだわりを学んだ」稀代のクラブデザイナーが国産を使う理由

連載:“こだわりの人”に聞くライフスタイル&仕事術
マスダゴルフ主宰の増田雄二にクラブ作りのこだわりを聞く(撮影:岡崎健志)

技術、クラブ、ウェア……。ゴルフのこだわりは人それぞれ。そこに様々な楽しみ方が存在するからこそ、幅広い層に愛され続けているのだろう。日本シャフトは完全国内生産でスチール、カーボンの両方を扱うこだわりのシャフトメーカー。新たなシャフトを生み出す開発陣から、それを手にするエンドユーザーまで、同社の周りには“こだわりの人”にあふれている。

目指したのは誰も作っていないパター

誰も作っていないパターを生み出そうとクラブ製造にのめり込んだ(撮影:岡崎健志)

マスダゴルフ主宰の増田雄二(敬称略、以下同)は、日本を代表するクラブデザイナーであり、クラフトマンだ。経歴を知れば、彼がこだわりの男であることはすぐに理解できるだろう。自動車部品のエンジニアだった増田がクラブ制作に興味を持ったのは、削り出しパターの人気がきっかけだった。

「スコッティ・キャメロンを筆頭に、何人ものデザイナーが有名になっていった時代でした。物は違っても、金属を削って形にする作業は私も毎日やっていました。ゴルフの心得は少しあったので、試しに自分も作ってみようかなと思ったのです」

目指したのは有名デザイナーの模倣ではなく、誰も作っていないオリジナルのパター。独自に研究を重ねれば重ねるほど、増田はパター製作にのめり込んでいった。

ジャンボ尾崎から届いたオファー 試作品は年間100本以上

日本ゴルフ界の頂点に君臨していたジャンボ尾崎のクラブ製造に関わることになった(撮影:岡崎健志)

数年後、熊本でオリジナルパターを製作する増田の噂は超大物の耳に届いた。日本ゴルフ界の頂点に君臨していた“ジャンボ”こと尾崎将司だ。全盛期の尾崎のためにパターを作る――。思いがけない機会に恵まれたと同時に、ここから「地獄の日々」が始まった。

日本一の男が求めるレベルは高い。「重さや形状、すべてにおいて精度の高さは絶対に必要ですし、ジャンボさんが好むフィーリングを生み出すのは並大抵のことではありませんでした」。プロジェクト開始から約1年、寝る間を惜しんで作った100以上の試作を経て、ようやく尾崎がトーナメントで増田のパターを使い始めた。

とはいえ、これで終わりではない。「試合で使えるレベルになったというだけで、これでOKみたいな区切りを感じたことはありませんでした」。その後も試作を繰り返す日々は続いた。

しばらくすると、増田はパターだけではなく、ウェッジやアイアン、さらにドライバーの製作も任されるようになる。これがなければ、増田がパター以外のクラブを作ることはなかったかもしれない。「ジャンボさんから学んだことがボクのすべて。ジャンボさんに褒められるクラブを作りたいという一心でした」。尾崎に負けない強いこだわりを持ってクラブ製作に取り組んでいたからこそ、信頼を勝ち取ることができたのだろう。

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