凛とした佇まい PGA SHOWブースで光る「NIPPON」
米フロリダ州オーランドで開催されているPGA SHOWは、世界中のゴルフ業界関係者が集まり、新技術や新製品を披露する場だ。1000を超えるゴルフ関連サプライヤーが出展し、業界関係者だけで89カ国から3万人以上が訪れる。まさにゴルフ業界の祭典。広大な会場で「名物」といわれる人を探し歩いた。
巨大なゴルフメーカーのブースをはじめ、華やかなアパレルメーカーの展示、ゴルフカートや練習器具の紹介…。1日見て歩いてもカバーできない圧巻の規模だ。もともとは大量発注や受注につなげる場として始まったショーは現在、新製品やイノベーションを披露し、パートナーと交流する重要な機会となっている。
会場の各社のブースはそれぞれ個性を発揮している。マスコットキャラクターがいたり、水の上にゴルフシューズを浮かべたり。まるでテーマパークのような雰囲気にワクワクする。来場者にとっては真剣なビジネスの場ではあるが、その表情は緩み、心は子供の頃に戻ったかのようにさえ見える。
「ニッポン!チャチャチャ」
ブースのテーマやコンセプトは、視覚的効果で伝わってくる。いわゆるVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)に力を入れているのだろう。天井から吊るされたロゴ入りのオブジェを見回して歩みを進めると、目に飛び込んできたのは「NIPPON」の文字。日本シャフトのブースだ。
ブース全体が穏やかで落ち着いた雰囲気。テーマカラーの緑色は日本の自然を象徴するような印象だ。アメリカンサイズのダイナミックなブースが多い中で、「ニッポン」のものづくりの文化を表現するかのように際立っていた。
アメリカ市場を知る男にトレンドを聞いてみた
ブース内で担当者が熱心に説明していた。名前はMark Pekarek(マーク・ペカレック)。社内はもちろん業界内でも頼りにされる存在で、「何か分からないことがあれば、マークさん」といわれるほど有名人なのだそう。
2000年から25年以上にわたって、アメリカ市場で日本シャフトのアフターマーケットケアやOEMを担当。それ以前はクラブフィッティングスタジオのオーナーとして活動し、その技術と経験は今なお健在だ。マークが見る米国でのトレンドはどのようなものか聞いてみた。
「アイアンシャフトでは『neo』シリーズが非常に人気です。『N.S.PRO MODUS3 120』も人気を誇っています。最近アメリカで発売された『N.S.PRO 750GH neo』は、70g台のスチールシャフトが他にないため、さらに注目を集めています。加えて、力が落ちてきているシニア層にも軽量モデルが人気を集めています。日本シャフトは軽量シャフトに特化しており、そのため多くの人に使われています。ツアーレベルでは、飛距離だけでなく、弾道やコントロールのバランスを取るオールマイティなシャフトが求められるでしょう」
なるほど、そこにつながるのが、昨日発表された「N.S.PRO MODUS3 TOUR110」のテーマである「速さ×強さ×操作性の最適バランス」ということか。
「『N.S.PRO MODUS3』シリーズは、プロからのフィードバックをもとに開発されており、今回の110はアグレッシブに攻めるプレーヤーが、その中で耐久性を保ちながら、低弾道と操作性を求めるという要望にも応えたモデルです。昨日のDEMO DAYでテストを行ったゴルファーたちも、その特性を実感していました」
どんな要望にも応える-。総合シャフトメーカーの強みが、日本シャフトにはある。
来場者が感じた「日本シャフト」の実力
この日は、日本シャフトがプロやバイヤー向けに行うセミナーも開催された。参加者は日本シャフトについてどう思っているのか。そのうちの一人に印象を聞いてみた。
「日本シャフトの製品は、いつもクオリティと技術の高さに驚かされます。今回の新製品も例外ではなく、振り心地が非常にスムーズで、力強い弾道を実現しています。特に、精度の高さが際立っていますね」。その出来栄えに感心している様子だった。
世界のゴルファーへ、フィッター目線での助言
ところで、日本では当たり前になってきた“リシャフト文化”だが、アメリカではどうなっているのだろう。マークに改めて聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「米国ではアイアンの場合、シャフト交換ではなく、クラブ全体を新調することが多いですね。フィッティングやクラブ選びにおいて、私はまずシャフトを決めるべきだと考えています。唯一動くのがシャフトであり、スイングはゴルファーによって千差万別です。そのため、ゴルファーに合ったシャフトを選ぶことで、ヘッドの選択も最適化できるんです」
「シャフトはクラブの心臓部だ」と言わんばかりのフィッターとしてのシャフト愛だ。マークの言葉から、日本シャフトのメンバーというだけでなく、世界のゴルファーのレベルを引き上げたいという願いが伝わってきた。(敬称略)