ツアー2勝・平田憲聖がさらなる飛躍へ向けて選んだ勝負カラー
国内ツアー2勝 飛躍してなお謙虚な姿勢
シード選手としての1年目、プロ2シーズン目の2023年、平田は大きく飛躍する。その前年、いずれもアマチュア時代にツアー優勝した権利をもとに鳴り物入りでプロの世界に飛び込んだ中島、蝉川に負けじと、レースをリードする存在になった。5月「ミズノオープン」での初優勝は中島をプレーオフで破ったもの。7月には2人に先んじて、国内メジャータイトルを「日本プロゴルフ選手権」でつかんでみせた。
男子ツアーが待ち望んでいた次のスター候補のひとりと目されるようになっても、平田にはいつも、精悍さと、自身の立ち位置とを冷静に眺めるクールさが漂う。学生時代、男女それぞれの世代を代表するナショナルチームにはずっと縁遠かった。彼らにまったく歯が立たなかったあの頃の謙虚さは、次のステージに立ってなお薄れる様子がない。
価値ある苦労 海外挑戦と刺激
2023年は日本で活躍したシーズンだったのと同時に、キャリアで初めて海の向こうで本気で腕試しをした一年でもあった。ロイヤルリバプールでの「全英オープン」、メキシコでのPGAツアー「ワールドワイドテクノロジー選手権」への参戦資格を手に入れると、すぐさま出場エントリー。結果はいずれも予選落ちに終わった。
「普段、日本で『本当に恵まれた環境でゴルフしている』と感じました。私生活や食事面でいろいろ大変な面がイギリスでは多くて。メキシコではその辺の辛さはなかったですけど、コースの芝や気候の違いに苦労しました」
ゴルフは思うようにいかない。戦うレベルが上がり、環境が変われば、次の壁が目の前に現れる。満足感に浸る暇もない。挑戦と刺激の連続が、ゴルフに実直でいられるエッセンスになっている。
「ゴルフはもちろん夢のあるスポーツだと思います。企業に就職していたら、できなかったかもしれない経験をさせてもらえる。その分、しんどいこともありますけど」。長く、濃密な自分だけのストーリーはまだ書き始めだ。
見られてナンボ 勝負カラーを新たに
国内ツアーは3月末に開幕。プロとしての3シーズン目、平田は自身のオリジナリティをウェアで表現する。これといった決まりを設けてこなかった日々のコーディネートに変化を加えた。勝負を決める最終日、必ずピンク色のシャツを着てティオフする。「去年は青が多かったので、ことしはガラッと違う色にしようと話し合いました。僕自身もピンクは好きなので」。観る人あってのプロアスリート。イメージ定着の一歩を踏み出す。
メジャーへの再挑戦、海外ツアーの出場権獲得、日本ツアーの賞金王…あらゆる期待が込められる一年の始まり。「一試合、一試合、目の前の試合でベストを尽くすのが目標。去年も、一昨年もそうでした。去年よりも成績が良ければ最高。内容が充実していれば、もっと良い。1年が終わってそれをジャッジできれば」。やはり静かにスタートを見据えた。
ただプロとして勝てれば、賞金を稼げればいいとは思わない。
「日本で活躍して、もっと自分の技術も上げたい。人としてももっと成長したい。他人とはちょっと違った視点からゴルフを捉えたいんです。もうゴルフは人生の一部。僕もジュニアでクラブを握ったので、子どもたちが『もっと、もっとゴルフをしたい』、『プロになりたい』と思ってくれることが、一番プロゴルファーとしてうれしいことだと僕は思っています」
サンデー・ピンクに秘めた想いは、他の誰かのそれとは違う。