授かった自信と誇り 中嶋常幸が思いを託す富士山麓の戦い
プロアマ合わせて「日本タイトル」7冠。国内男子ツアーで通算48勝を挙げ、4回の賞金王に輝いた中嶋常幸(68)。近年はジュニアの育成に力を注いでいる現状と、そんな次代を担う若手たちに挑んでほしいと願う、自らを高め続けてくれたトーナメントへの思いとは――
中嶋常幸のいまとジュニア育成
直近のツアー出場は2021年10月の「日本プロシニア」。中嶋はそれから1年余りツアーから離れ、いまは千葉県成田市にある練習施設で調整を続けている。
全身の急な痛みに襲われたのは22年の4月中旬。「関節リウマチ」と診断され、当初はペットボトルのフタを開けられず、自宅でも杖が必要なほどだった。幸いにも症状の改善に合った薬が見つかったことで「今はゴルフも1ラウンドできるようになった。来年の日本シニアオープンと日本シニアプロに出られるようになりたいね」と来シーズンの復帰を目指している。
年々ツアーの舞台に立つ回数は減りつつある中で、近年はジュニアの育成で存在感を示している。自身が主宰する「トミーアカデミー」は設立から11年目を迎え、ことし7月には6期生を迎え入れた。これまでに畑岡奈紗らを輩出し、男子でも河本力や杉原大河といった面々が“卒業生”(1期2年)として巣立っている。「自分の経験は惜しみなく伝える。その上で個々をしっかり見て、一方通行で教えるのではなく、わかりやすくアドバイスするようにしています」との指導ポリシーで生徒たちに接している。
ギャラリーを魅了するプロに
すでにツアーで活躍する教え子たちに望み続けていることがある。「見に来てくれた人を魅了する、唸らせるようなプレーをしてほしい。たとえ裏街道(決勝ラウンドの10番スタート)でギャラリーが数人でも、その人たちにファンになってもらえるように。それが最終日最終組で回れた時に、大観衆に応援してもらえることにつながるから」
その中嶋がかつて大声援を一身に受けてきた中でも、特別な思いを持って臨み続けてきた大会があった。それは、これから世界を目指す若手たちも体感し、成長へとつなげてほしい舞台でもある。