Qi アイアンを筒康博が試打「Pの要素がQに」
真っすぐ飛ばせる「Qi」のアイアン ご意見番クラブフィッターの評価は!?
ドライバーでやさしさの新世界基準“10K”を打ち出したテーラーメイド「Qi10」のアイアンシリーズ「Qi アイアン」。右へのミスを防ぎ、直進性を探求したデザインで、飛距離性能とかつてない直進性能を発揮するという。そんな同社が誇る真っすぐ飛ばせるアイアンを、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?
「『P』の遺伝子を感じる!? テーラーメイド流の飛び系」
―率直な印象は?
「ロフト角はひと昔前の5~6番相当(7Iで28度)で比較的に長さもあるのに(7Iで37.25インチ)、構えた印象も振り心地も不思議なことにひと昔前の7番アイアンに感じます。フェースが大きい分、フェース面は視認しやすく、大型ヘッドとのバランスでクラブが長くてもちゃんと7番っぽく見え、7番っぽく振り切れます。以前のモデルよりロフト角は立っていても、確実に落下角度が大きいのでグリーンで止められる。設定としては“飛び系”のカテゴリーに属するかもしれませんが、以前までのイメージとはだいぶ異なる印象です」
―実際に打った弾道は?
「常に高めのストレートで、ドロー・フェードを打ち分けようとしても無駄に思えるほど、直進性を発揮します。グリーンのセンターに向かってバーン!と打っていけば、必ず結果に結びつくアイアン。ちょっとダフったとしても全く問題ない厚めのソール幅。きれいにダウンブローで打たなくても十分高さが出て、飛距離を出せる。抜けもいい。すごくオートマチックな性能です。また、最近の同社モデルで多く見られる特徴として、オフセットが減り、グースが苦手なゴルファーでも違和感なく構えられます。ボテッとしたイメージはなく、精悍ささえ感じる。もしかしたら、同社のツアーモデル『P』シリーズのテクノロジーを少しずつ踏襲しているのかもしれません」
―中空とキャビティのいいとこ取りをした特徴と聞きましたが?
「そうですね。中空構造はバックフェースが閉じているので、何と言っても見た目が格好いいのですが、今作も同様にスタイリッシュ。一方キャビティバックの長所は、フェース面の薄さを感じ取れるところで、今作も打感が結構ソリッドで近い。そこがボール初速や弾道の高さを生む要素になっています。中空とキャビティ、それぞれの効果は感じる。ですが、それがどれくらいアマチュアゴルファーに浸透しているかは疑問が残ります。それぞれの長所を言い当てられる人がどれだけ居るのか――。それより長年採用してきたスピードポケットの初速性能、格好いいルックス、『Qi』シリーズの寛容性の高さ、この3点が打ってすぐ分かる仕上がりのほうが価値が大きいと思いました」
―振り心地は?
「他社と比べてグリップが太めに感じられ、変に手をこねたり、不要な動きを抑える役割を担っている気がしました。振りやすさもミスを抑える機能も感じられる純正シャフト(NSプロ 910GH)。以前の『NSプロ 950GH』のバット径もやや太めでしたが、あえてそれを今作で採用しているのではないでしょうか。ヘッドだけでなく、グリップもシャフトもコンセプトを踏まえて作られている部分を感じます。グリーンセンターに向かって高く真っすぐ打っていくコンセプト。とてもシンプルで分かりやすいです」
―他社でいうと類似モデルは?
「うーん…、カーボンシャフトだと総重量は軽くなるので、ダンロップ『ゼクシオ 13 アイアン』になると思います。スチールだと『G430 アイアン』。フラッグシップモデルシリーズのアイアンセットと考えると、ドライバーが気に入った流れでアイアンまでセットでそろえたいゴルファーに支持されそうという共通点。『Qi10 MAX ドライバー』が気に入って、その流れで全て同シリーズでそろえる。そういう購入スタイルが、『ゼクシオ』『G』シリーズと類似していると思いました」
―どのような人向き?
「とにかくアイアンショットでグリーンに乗せる回数を増やし、できるだけ難しいアプローチをせずにスコアメークしたい人向き。100切りゴルファー向けアイアンというと大げさかもしれないですが、アマチュアに最も多いボリュームゾーンであることは確か。操作性を求めるタイプの人は、すでに同社では『P』シリーズがあるので、そもそも今作をチェックはしないでしょう。また、ドライバーの流れで揃える選択肢もないと思います。ただ、そんな『P』シリーズの使用者でも、アイアン型ユーティリティの感覚で5番だけ単品で入れたくなるような、そんな共通点を感じさせるテーラーが考えたテーラー流の飛び系です」
総合的に高めの得点 特に寛容性は5点満点◎【総合評価4.5点】
【飛距離】4.5
【打 感】4.5
【寛容性】5.0
【操作性】4.0
【構えやすさ】4.5
・ロフト角:28度(7I)
・使用シャフト:カーボン Diamana BLUE TM60(硬さS)、スチール NSプロ 910GH(硬さS)/―820GH(硬さR)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋
■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。