松山英樹が信じ抜いた「スリクソン ZX5」のポテンシャル
「マスターズ」最終日18番のティイングエリアで、このあと歴史を変える男の手に握られていたのは、住友ゴム工業(ダンロップ)の「スリクソン ZX5 ドライバー」だった。全ての道具、特にドライバーには強いこだわりを持つ松山英樹が、リリース直後の2020年秋から信頼し続けた「ZX5」とは、一体どういうモデルなのか。最新ギア事情に詳しいトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロ氏に聞いた。 (以下、コヤマ氏の解説)
4年ぶりに回帰したスリクソンの最新モデル
松山選手はアマチュア時代から長年「スリクソン ZR30」を愛用し、2016年からキャロウェイ、テーラーメイド、ピンと4年間で10モデル以上のクラブを握ってきました。そして昨秋、発売直後の「ZX5」と「ZX7」にスイッチ。今年に入り、以前使っていた「SIM」や「エピック」の最新シリーズが登場したにもかかわらず、移行せずにそのまま「ZX5」を使い続けました。それほど新たなエースドライバーへの信頼度が高かったと言えます。
では、これまでの同社モデルと比べ、「ZX5」はどこが違うのか。ずばり性能が上がったとか、どこが進化したということではなく、とにかく松山選手の意向を取り入れたということだと思います。
前作までの「Z」から「ZX」にシリーズ名を変え、それまで継承してきたカップフェース構造をやめるなど、大転換したのが「ZX5」と「ZX7」です。前述の通り、松山選手の意向を取り入れたこのモデルは、剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配し、大きなたわみを生む「リバウンドフレーム」 という、初速を上げるテクノロジーを搭載。海外ブランドに負けず劣らずの飛距離性能を実現しました。
これは私の推測ですが、カップフェースをやめたのも、松山選手が大事にするという構えた時の好みの顔に仕上げるためではないのか。カップ構造だと制約がかかっていた形状の自由度を上げるために、溶接型に変えたのではないかと推察しています。
極限のプレッシャーの中で弾道の打ち分けが可能
「マスターズ」最終日の15番では、ティショットをフェードで攻め、17番ではフェアウェイ上に置きにいくドロー。そして、18番のティショットでは再度フェードと、優勝がかかった最終局面で、弾道を巧みに打ち分けていました。計り知れないプレッシャーのかかる場面で、イメージ通りに左右に打ち分けられたのは、信頼した相棒なくして実現できなかったように感じます。
2つの兄弟モデル「ZX5」と「ZX7」を、単純につかまりの良い5シリーズと、より操作性の高い7シリーズという分け方で把握している人は多いと思いますが、前作と比べると「5」が「7」にかなり近づいた印象を受けます。また、つかまりの良さだけでは、PGAツアーの過酷なセッティングには対応できません。そんな「ZX5」のポテンシャルの高さを証明してくれたのが、松山選手の終盤でのティショットだったように思います。一方の「ZX7」は、それ以上にコントロールを求める上級者向け、というすみ分けができるでしょう。
ダンロップ21年の最新動向に注目
「ZX」シリーズはすでに発売から半年経っています。松山選手の活躍で、既存のファンだけでなく、初めてゴルフに興味を持った人からも注目を受けることは必至。マスターズ制覇記念限定モデルや「ZX」シリーズの新たな横展開など、今後のダンロップの動向が楽しみです。
コヤマカズヒロ プロフィール
1974年生まれ、広島県出身。99年に「ゴルフパートナー」の立ち上げに加わり、膨大な量のクラブデータや査定基準の構築に関わる。独立後はゴルフライターとして執筆活動を行いながら、ゴルフ誌やWEB、書籍、放送など多方面で活躍。19年からYouTubeチャンネル「しだるTV」を開設。
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