“細かすぎるデータ測定”が導いた運命のアイアンは「M-13」/鍛治郎が行く!アイアンフィッティング最前線 #3ミズノ編

鍛治郎が行く

外ブラや和モノを問わず、鍛造キャビティアイアンのマーケットが沸いている。とはいえ、これだけ数多くのモデルがあると、どれを買えばいいのかとにかく迷う。そこで、自他ともに認める編集部イチの“鍛造キャビティ愛”にあふれる鍛治郎(仮名)が、各メーカーのフィッティングスタジオに足を運び、運命のアイアンを見つける旅に出た。3回目は、ミズノのフィッティングスタジオへGO!

●鍛治郎が行く~キャロウェイ編~

●鍛治郎が行く~タイトリスト編~

3球打つだけで“スイングの個性”が丸裸に

ミズノの軟鉄鍛造といえば、その顔といい打感といい“鍛キャビ好き”ならずともひきつけられる伝統的な日本のアイアンだ。一般的には「吸いつくようなフィーリング」と言われるが、鍛治郎の感覚からすると、ミズノの鍛造アイアンはソリッドでしっかりした打ちごたえに感じるし、だからこそ打点のフィードバックがある。そんなところにも魅力を感じている。

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ミズノの打感と性能を打ち比べてのフィッティング…胸が高まる

足を運んだのは、ミズノのグローバルフラッグシップストアであり、ゴルフクラブのフィッティングルームが備わる「MIZUNO TOKYO」(東京都千代田区)。マスターフィッターの平井誠一さんがフィッティングを担当してくれた。

ミズノではフィッティング時に専用の小型計測器「セットオプティマイザー」(12/23より運用開始)をクラブに取りつける(ドライバー、アイアン、ウェッジで測定可能)。その状態で3球打つだけで、その人が生まれ持ったスイングのクセや特徴、個性である「SWING DNA」を瞬時に計測できるという。

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シャフトに取り付けてスイングを丸裸にするミズノ独自のツールが刷新された

8年ぶりにリニューアルされたこのフィッティングツールは、ゴルフスイングに関する10項目のデータポイントを測定する。アイアンでは、従来の9項目に加えて「ローテーション率」を追加した。そこで示されたデータをベースにして、経験豊富なミズノのフィッターとともに、理想の飛距離や弾道に近づくためのクラブ選びができる。

“細かすぎる計測データ”を突きつけられる

マスターフィッター・平井さんから、鍛治郎の体のコンディションやスポーツ歴(テニス)、マイクラブについて、持ち球(ドロー系/希望はストレート)、弾道の高さ(高め)、ミスの傾向(ハーフトップ)、好みのヘッド(やや小ぶり)などのヒアリングを受けた。その後、適正なクラブ長さをチェックしてもらった。

続いては、マイクラブ(7I)に前述のセットオプティマイザーを取りつけて3球打ち、鍛治郎の「SWING DNA」を解析。まずは、シャフトに関する計測データを見た。7Iの「ヘッドスピード」は、平均値が34m/sに対して、37m/sが出ているので速め。「スイングテンポ」は、9段階のうち5なので平均値と同じだ。さらに深掘りしていく。

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自分のスイングがつまびらかに提示されてしまう…

「続いての項目は『トウダウン』ですが、9段階のうち平均値が4で、計測値が5と出ました。数字が大きいのは、トウ方向の“縦しなり”の幅が大きめということ。そして『前反り角』とは、インパクトでシャフトが飛球線方向に反る(しなる)角度です。こちらは9段階で、平均値の4よりも大きい6と出ました。飛球線方向へのしなりがけっこう大きいです。すると、ロフトがつきやすくなったり、ヘッドがターンしやすくて、左回転のボール(ドロー系)になったりしやすい。まずはそのしなりを抑える必要があるでしょう。

最後の『しなり係数』は“タメ”があるのか・少なめなのか、リリースのタイミングが早いのか・遅いのか。数字が大きいとコックのリリースが早めので、数字が少なめだとコックのリリースが遅く“タメ”があるスウィングということです。計測値は平均値と同じ4なので、リリースのタイミングは平均的です」(平井さん、以下同)

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リリースのタイミングは平均的らしい

この「SWING DNA」のデータから、鍛治郎が目指したいシャフトのスペックがはじき出された。フレックスはSとXの間くらいで、少し硬めでも打てる。重さは110~130gと、アイアンの重量帯のなかでも一番重いところが目安に。キックポイントは「スイングテンポ」と「しなり係数」の数値から中元調子と出た。

具体的な候補モデルが複数挙がる

続いては、ヘッドに関する「SWING DNA」のデータをチェックする。

「一つめは『インパクトライ角』。言うまでもなく、アイアンは芝の上から打つクラブでソールが接地するため、ライ角はとても大事です。7Iのライ角は62度を基準にしていて、計測したデータは60度なので、数字上は2度くらいフラットにしたほうがいいことに。実際に、ヒールが突っかかった音がしていました。現状、球が左に行く要因としてはシャフトのしなりもそうですけど、ライ角も合っていないかもしれません」

次の項目は「シャフトリーン角」。インパクト時のシャフトの傾き=ハンドファーストの度合いのことで、平均値は-8度(8度のハンドファースト)だ。もう一つが、ダウンブローの度合いを示す「アタック角」で、平均値は-6度。鍛治郎の「シャフトリーン角」は-6度と、ハンドファーストの度合いが強くはない。対して「アタック角」は-7度と大きめなので、打ち込む度合いはやや強いことが分かった。

「最後の項目は『フェーストゥパス角』と『ローテーション率』です。前者は、ヘッドの軌道に対してフェースの向きがスクエア(0度)か、オープン(+)か、クローズ(-)か。後者は、シャフト軸に対してフェースのローテーションが大きいか、小さいか。鍛治郎さんの『フェーストゥパス角』は+1度なので全く問題ありません。『ローテーション率』は0.9が平均値で、計測値は0.6と出たので、ローテーションはそれほど大きくありません」

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各データをていねいに説明してくれる平井さん

これらの細部にわたる計測データから、鍛治郎に合いそうなヘッドが見えてきた。ヘッドのサイズは中くらいからやや小ぶり。ネックのタイプはセミグースネックくらい。ヘッドのタイプはハーフキャビティくらいのイメージ。ライ角は2度くらいフラットがいいのではないか。

このデータをもとにミズノの推奨モデルがはじき出された。

「『ミズノプロ』シリーズでいくと『M-13』が1番目に挙がり、2番目は『S-1』というマッスルバック、3番目がハーフキャビティの『S-3』です。さらに『JPX(925)』シリーズだと『フォージド』というモデルが1番目に出てきました」

ライ角ではなくシャフト&グリップでつかまりをセーブ

「ここからはライ角を検証しましょう。ややフラットなほうがいいのではないかというデータが出ているので、ライ角が2度フラットなモノを打ってください」

そのクラブを構えたところ、言葉にできない違和感のようなものが湧き上がってきた。何球か打つとやや不安定な結果になり、ネガティブな言葉が出てしまった…。

その様子を見た平井さんは「分かりました。ではその時点で、フラットなライ角はあまりオススメしません。実際に、フラットにしても球がそれほど変わらないし、ヘッドの入り方もあまり良くなさそうです。シャフトで(つかまりを)抑えるほうにシフトしましょう」と言い、スタンダードなライ角で、シャフト違いをテストすることになった。

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ライ角チェック時にはフラット目のほうが良さそうだったが…

クラブを打つのはマシンではなく人間だ。データ上で推奨スペックが示されていても、ゴルファーがそれにストレスを感じてパフォーマンスが上がらないのであれば、熟練のフィッターが臨機応変に解決策を提案してくれる。フィッティングにチカラを入れてきたミズノのノウハウが息づいていた。

鍛治郎が打ち比べたシャフトは、1本目が「DG」のX100で、ちょっと“重い・硬い”という振り心地だった。2本目が「プロジェクトX」の6.0(SX相当)で、重さはちょっと軽い。3本目が「DG MID(ツアーイシュー)」のS200(番手ずらしナシ)。中調子系の一番重いタイプで、このシャフトがハマった。

さらに「右手のリスト使いが強めで、球がちょっとつかまる傾向があるので“細工”をしましょう」と言い、即席で右手側(下側)が太めのグリップを挿して打つことに。60口径で、下巻きの数が右手側3枚、左手側1枚…え、そんな細かいところまで!? うーむ、これが日本メーカーのおもてなしというか、細やかな気配りというか。とにかく、神は細部に宿るのである。

“運命のアイアン”は「M-13」

最も気になるヘッドは、どれが合っているのか。さっそく第一推奨モデルとして出ていた「M-13」と「DG MID(ツアーイシュー)」(S200)のコンビを打つ。すると、ナイスショットを連発。単純にファーストチョイスが良かったようだ。

「しっかりと打ち込んでいるので、ソールはあまり厚くしたくありません。M-13はソールの全体的な幅はやや厚めですが、リーディングエッジとトレーリングエッジを削ってあるので、接地面は薄いです。打ち込んでも突っかからないのが、このヘッドの特徴です」

同様に「S-1」も打ってみた。ミズノ鍛造アイアンのフラッグシップモデルだけに大変心地よい打感が脳天を突き刺す(ただしジャストミートしたときだけ)。ただ、短い重心距離による高い操作性ゆえ、鍛治郎にはかなり神経質なモデルに感じられたのも事実である。

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番手別設計されたM-13のソール形状が鍛治郎にジャストフィット

「ヘッドはM-13が良いですね。このモデルはPWのロフトが44度で、鍛治郎さんは50度からウェッジを入れているので、PWまででいいかなと思います。上手く打てる4Iを入れているとのことなので、このモデルは5Iからにしましょう。そして、ライ角はスタンダードでもいいですが、1度フラットにしてもいいと思います。バランスは試打したときのD1となっています」

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超絶濃厚な打感を味わえるS-1だが、結果を考慮するとベストチョイスではなかった…

データの裏づけをもとに試打をして、ヘッド、シャフト、グリップに及ぶ総合的かつキメ細かなフィッティングによってベストアイアンが決まり、鍛治郎は憧れていた“ミズノの鍛造”を手にコースへ行くこととなった。

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M-13を5番~PWまで!

イラスト:亀川秀樹
写真:有原裕晶

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