さまざまな憶測が飛び交う中、売り上げ&在庫数のリアルを調べた

「夏場から売り上げが激減」「在庫過多で死活問題」――このような噂が飛んでいるのは、ことし2月の発売以降、異例の大ヒットを記録したテーラーメイド「ステルス」シリーズに対するものだ。“カーボンウッド”という革新的テクノロジーが話題を呼び、驚きの初動売り上げをマークしたが、現在は大量に在庫を抱え、小売店が困っているという噂を耳にした。嘘か誠か、現場の状況は！？ 量販店、中古店、EC、市場調査の観点から真実を追った。

■在庫過多はデマ！ 初動の印象が強いだけでは

「ことし5月以降の売り上げは緩やかになりましたが、他モデルに比べれば動いています」と教えてくれたのは、関東に22店舗を構える大型量販店「有賀園ゴルフ」TOKYO新橋店の時田直樹店長だ。

2022年もうひとつの顔として常に比較されてきた「ローグ ST」

「在庫過多の噂が立つのは、初動のインパクトが強かったからです。少し収まった様子を、購入していない人が揶揄しているだけなのではないでしょうか。在庫が枯渇するほど売り上げが爆発してから、4月以降は同時発売のキャロウェイ『ローグ ST』シリーズに巻き返されたイメージはあります。ですが、発売から3カ月以降の動きとして、依然として高い水準をキープしています。失速したというよりも、緩やかに通常モデルの売れ筋に落ちついたという表現が的確だと思います」

■やや多めの在庫数 マークダウンを見越した戦略のため

中古店「ゴルフガレージ」の数値管理を担当している網野深志氏は、「在庫過多は真実ではないといえますが、今後の販売増を見込み、やや多めの在庫状況ではあります」と、現状を明かす。

年末商戦に向けて一定の在庫数を確保しているというゴルフガレージ松戸八柱店

「『ステルス』シリーズは、他モデルと比べて買取数も販売数も多く、過去の同社製を見ても販売実績があるため、多少在庫を抱えても問題ないと考えています。来年初旬には次作が登場すると予想され、年末年始にかけて一気に売り上げたい。例年では、1月からマークダウン（値下げ）を開始し、中古もそれに合わせて価格を下げていましたが、『ステルス』は、より早い段階から仕掛けることを検討しています。年末年始には、新品も中古も相当の数が出回ると予想できるので、早めに対応する予定です」

■年末に売り上げ再燃！ 前作比130％を予想

中古店に続き、ECサイトでも「年末の売り上げを前作比130％と見越し、多めに在庫を確保しています」と、「ゴルフダイジェスト・オンライン」ショップ担当・塩田大海氏は年末商戦への施策について言及する。

現在は掲載価格にて販売中 ※画像:GDOサイト内から抜粋

「同社に限ったことではなく、2020年のコロナ禍以降、在庫の確保は難航しています。特に同社製品は、マークダウン後にすぐ欠品が続いてしまうため、少し我慢しつつも時期を待っているというのが本音です。『ステルス』は、今までと動き方が違う気配があり、見込みには自信が持てない部分はありますが、年末にかけて在庫確保が優先という判断をくだしました。他社も同じような予想を立てている雰囲気があり、予想が崩れた場合は一斉に悲鳴を上げるでしょう。同社がマークダウン価格を、どのくらいで設定してくるかがカギになると思います」

■各店で温度差はあった模様 今後は新品勢の売り上げも影響する！？

小売店での動向と周囲で噂の立つ現象について、矢野経済研究所スポーツ＆レジャーグループの理事研究員・三石茂樹氏は、「真新しいテクノロジーに飛びついた人が多かった半面、それを懐疑的に見る人が多いことも人気モデルの宿命でしょう」と分析する。

「在庫数については、販売側の企業によって温度差があったと思います。全ての小売店で在庫数があふれている事実はありませんが、上半期で在庫を奪い合った経緯を受け、短納期&即対応を掲げたお店で、客注品があふれているケースが見受けられます。結論として、在庫処理に対するリテラシーの差が要因といえるのではないでしょうか」

11月11日発売開始のピン「G430」の動向も気になるところ

続いて、今後の年末商戦については、『ステルス』マークダウン品を中心に、次のように展開すると予想する。

「基本的には、中古と新品で需要が異なるため、市場の相関関係の度合いは小さいのですが、『ステルス』という前例のないモデルという点と円安の現状から、ピン『G430』シリーズを含む新品勢の売り上げの影響を、少なからず受けると予想します。新品にしか興味のなかった層が、値上げによってマークダウン品へ動く可能性が出てきたからです。在庫を処理するため、どんな価格帯で設定してくるのか。1年周期で新モデルを登場させる同社が、たった1年前のモデルを見捨てることなく、どのように新機種と並行して売っていくのか。今後の動向に注目したいです」