初V弾みにバージョンアップ中 阿部未悠のシャフト考
シャフトでゴルフが変わると思った瞬間
「実は、今年の開幕戦から2戦、(アイアンのシャフトを)『ダイナミックゴールド』に戻したんです。スチールの方がしなる感覚があるので使っていました。でも、自分の身長(155cm)や体力的にも、球の高さが出るのは『スチールファイバー』だったので、コーチと『また(スチールファイバー i 80)に戻そうか』という話になりました。そのとき、『軽めのものを試してみたら』というアドバイスで『スチールファイバー i 70』 にトライしました。そうしたら、すごくはまって。球の高さが全然違ったんです」
中調子の80g台ではなく、先中調子の70g台にすると、距離にして1.5番手ぐらい飛距離が伸びた。「スチールファイバー i 70 cw」を投入した第3戦は「キャリーでグリーンオーバーしちゃって……。はまったらこんなに飛ぶんだ、シャフトでこんなに変わるんだって、すごく思った瞬間でした」。この試合は変更したばかりで距離感が合わなかったが、徐々に感覚が合って、第6戦の勝利につながった。
「ゴルフのレベルも上がっているし、バージョンアップしています。開幕した頃のセッティングと今のセッティングは変わっていくと思ったし、自分に合ったクラブやシャフトが見つかったときはやっぱりいいです。自分のやりたいスイングに今、一番合っているシャフトだなと思っています」
データは安心材料であり判断材料
自分に合ったシャフトやスペックを決めるとき、打感や弾道などで選ぶ、いわば感覚派というプロもいるが、阿部は数値も重視する。「こだわりたいところは、こだわる性格。数字は安心材料だし、これで合っているというのが欲しいから、結構見ています。ただ、数字だけ見ても、飛んでいる球を見ないと、いいのか悪いのかわからない。数字も大事だし、自分の打った感覚も飛んでいる球の感覚も大事、というのは常に考えています」
ところで、阿部の趣味が写真撮影というのは有名な話だ。カメラも被写体によって、絞り値、シャッタースピード、ISO感度など、設定には数値が欠かせない。「どうやって撮りたいかによって数字を合わせていくのは好きだし、クラブをつくるときも自分が思っている数字と、自分が思っている球をどうやって出したいか数字で合わせる、ということをやっているので、もしかしたら共通するかもしれないですね」
ツアー2勝目へ「自分のゴルフができつつある」
試合前の練習では、弾道測定器トラックマンを持ち込み、クラブパスやフェースアングル、キャリーや総距離などを計測。コーチが不在でも、数値で状態を確認し、コースの攻略法を自分で考えられるようにしている。
「数字は判断材料にもなります。例えば、気温が低いからこの飛距離になるとか、きょうは球筋がつかまり過ぎだからフェードを期待できない、逆にフェードが打てているから左は消せるとか。マネジメントやターゲットの決め方が変わるので、数字には気をつけるようにしています」
今季もツアー終盤戦に入った。2勝目へ向けて「自分のゴルフができつつあります。今、やっているスイングとマネジメントがかみ合えば(2勝目が)目指せます。来なかったとしてもゴルフ人生が終わるわけではないので、来年に向けてどうしていくか、考えながら戦っていきたい」。まだ24歳。進化しつつ、数字を積み上げるのはこれからだ。
阿部未悠(あべ・みゆう)
2000年9月27日生まれ、北海道恵庭市出身。2021年に2度目のプロテスト(2020年度)で合格。2022年シーズンに初シード獲得、2024年「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」でツアー初優勝。写真撮影が趣味で、自称“ネイチャー系カメラマン”。GDOニュース企画で2023年末に男子ツアーのゴルフカメラマンも経験した。
撮影協力:季美の森ゴルフ倶楽部