進化を遂げる「赤系シャフト」アマが中古で選ぶなら?ギアマニアが指南
ツアープロと同じスペックとは言わないが、同じモデルを使いたい!と思う気持ちはわかる。しかし、ツアーで人気のシャフトが一般人にもそのままフィットするとは言い難い。ここは割り切って、アマチュアにこそメリットがありそうな中古シャフトを探してみよう。
カタログ表記に惑わされることなかれ
シャフトのカタログには「重さ」、「硬さ」、「調子」…といったように、製品の特性を表す表記がある。重さは販売時、カットする前の重量を示すが、硬さと調子については業界を通じた、明確な基準が存在しないのが実情だ。
シャフトのしなる場所を示す調子は、大きく分けて「先」、「中」、「手元」の3つ。「先中」、「中元」など、中間を示す場合もある。ただし、こちらも表記だけで性格を表すことはかなり難しい。シャフトには様々な“味付け”がされていて、「先調子」と書かれているのに手元がしなる感じがしたり、「中調子」でも先端に動きを感じることもある。「オレは〇〇しか合わない」という先入観は捨てたほうがいい。表記にこだわっていると、自分に合ったモデルとは出合いにくいかもしれない。
先調子は本当に球が曲がるのか!?
ヘッドスピードの速い男子プロの多くは、先調子のシャフトを使うことに少々、消極的だ。その影響でたくさんのアマチュアが「先端が動く」と言われるシャフトを敬遠する傾向にある。一般的に球のつかまりが良く、スピン量も増える傾向にあるからだ。「左へのミスが増えそう」という“勝手な印象”を抱くゴルファーもいる。
とはいいつつも、藤倉コンポジットの「スピーダー661」(初代)は、先調子ながら「飛距離がアップする」とプロの間で人気があった。手元がしっかりかつ先端のスピード感が特徴的で、リシャフトブームの立役者といえるモデル。スイングプレーンの美しいツアープロにはハマったが、“じゃじゃ馬”すぎて苦労した一般アマも少なくなかったと記憶している。最近の先調子モデルは劇的な進化を遂げ、つかまりが良いにも関わらず左のミスが出にくいモデルも増えた。
男子プロに人気のシャフトは要注意
松山英樹の1Wに長らく装着されたグラファイトデザイン「ツアーAD DI」や、ロリー・マキロイ(北アイルランド)やスコッティ・シェフラーが使う藤倉コンポジット「ベンタス ブラック」などは、アマチュアにも人気がある。どちらも手元にしなり感があり先端がしっかりしているシャフト。左へのミスを減らし、スピンを抑えたいというプレーヤーの意図がある。
だが、パワーに劣るアマチュアでは50g台のSであるとか、なんとなく打てそうなスペックを選んだとしてもかなりハード。ツアープロが好むシャフトのほとんどは、自分のパワーがヘッドに余すところなく伝わることを望まれている。“余計なことはしない”傾向にあるのだ。だから「なんとかシャフトの力で飛ばしてやろう!」と言うアマにはオススメしない。それでも使いたいというのであれば、驚くほど軟らかいフレックスを試してみてほしい。
どうしてもツアーで流行るシャフトを使いたいなら…「赤色」を
パワーに自信はないけれど、男子ツアーで人気のベンタスや三菱ケミカルのTENSEIをどうしても使いたい…そう言う場合は“赤系”を選んでみてはどうだろう。PGAツアーではブラック、ブルーは人気があったが、先端が動くレッドの使用者が以前は少なかった。しかしここ最近、久常涼やジェイソン・デイ(オーストラリア)ら使用者が増加中。フェアウェイウッドに装着する選手も増えてきた。
女子ツアーでは青木瀬令奈が長く使用。先調子とされているが、先端がものすごく走るわけではない。ジワリとしなり、ジワリと戻る。イマドキの低スピン1Wでも程よくつかまり、スピンも増えるのを狙っていると推測する。三菱ケミカル「TENSEI Pro Red 1K」や、中古ではないがUSTマミヤから4月の終わりにリリースされる「LIN-Q EX RED」もハードヒッター向けながら先端が動いてくれるシャフトだ。
コスパの良いつかまり系シャフト
イマドキの低スピン1Wを買ったけど、苦労している人にオススメしたいのがUSTマミヤ「ATTAS KING」。筆者もかつて抱いていた先調子の固定観念を覆し、扱いやすさを感じさせてくれたシャフト。1万円台後半から見つかる。安田祐香が未だにドライバーに装着している。
グラファイトデザイン「aG33」は軽量シャフトで、先端のスピード感と手元の粘り感でタイミングが取りやすく、球のつかまりも良い。知名度は低いがフィッティングスタジオなどで人気が高い。2万円前後で見つかるだろう。
三菱ケミカル「VANQUISH」も非常に近い特性でヘッドスピードが落ちてきたシニア層にオススメしたい。純正シャフトに近いフレックス設定であるのも扱いやすいポイントだろう。こちらも2万円前後で発掘できそうだ。
フィッティングスタジオに話を聞くと、最終的に最新シャフトやツアーで人気のシャフトを選ぶゴルファーの比率は驚くほど低い。自分にマッチする一本は、アナタが敬遠している先調子かも…。外見や家柄で相手を選んでも幸せな結婚ができるとは限らないはず。スリーブ付の中古シャフトをうまく利用して、運命のヒトに巡り合って欲しい。ただし、スリーブの互換性と装着時の長さのチェックはお忘れなく。(文・田島基晴)

田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。