ゴルフ日和

ゴルフ場の“非日常性”に光を当てる ~瀬戸内ゴルフリゾート

2022/05/19 11:45
ゴルフ場が秘めるリゾートの可能性とは

密が避けられるレジャーとして、コロナ禍で人気が高まった代表例がゴルフとキャンプだろう。その2つを、瀬戸内海を見下ろせる絶景とともに一度に行える場所がある。広島県竹原市にある瀬戸内ゴルフリゾート(リソルグループ)。林順平支配人(39)が掲げる「主婦や女子高生がカフェをしに来るような場所にしたい」との思惑に沿うように、多くのゴルフをしない人々がキャンプに訪れているという。

広島空港から車で30~40分ほど南下した瀬戸内海沿い。2014-15年に放映されたNHKの連続ドラマ小説「マッサン」で、主人公のモデルになった竹鶴正孝の生家がある竹原市の中心部から約10分。リゾートのゲートを入り、木々が覆う1キロほどのアプローチを進むと、海を見下ろせる高台にゴルファーと非ゴルファーのいずれにとっても非日常の世界がある。

キャンプ利用の7割が非ゴルファー

全ホールから海を一望できる最高のロケーションが迎える

広大な敷地のコース内にはキャンプ用スペースが6区画。利用者は3000円の追加料金で、一般ゴルファーのプレーが終わったあとに1ホールを丸ごと貸し切りにすることができる。ゴルフをやる人ならドライバーからアプローチ、バンカーまで思う存分練習してもいい。あるいは18番グリーンから1番のティイングエリアまでプレーとは逆向きに歩いて、カップ(グリーン)から逆算してコースマネジメントを組み立てるプロツアーのキャディの真似事をしてみることもできる。目の前のボールばかり見ている普段とは違うコースの景色が見え、思わぬ攻略法が思い浮かんでくるかもしれない。

これがゴルファーにとっての贅沢な非日常なら、「お子さんが走り回ったり、お好きなように使ってください」と林支配人が言う、長さ300m超×幅30~50mの芝生エリア(1ホール)を「密」と無縁に占有できる状況は、ゴルフをしない人にもこの上ない贅沢といえるだろう。夕日が沈んだあとには満天の星空も待っている。街灯やネオンにあふれた都市部ではプラネタリウムでしか見ることのできない星の煌めきに圧倒される。

抜群のロケーションを生かし数々の施策を打ち出してきた林順平支配人

利用者は、極端に地面(芝)を掘り返すことさえしなければ、走り回っても、ボール遊びでも何をしてもいい。ゴルフに興味を持ったり、久しぶりにやってみたくなったりしたら、無料のレンタルクラブを借りて、気負わずにプレーしてみるのもいい。そこには家族や仲間しかいないのだから、失敗をしても人目を気にする必要がない。練習不足などという言い訳は不要で、遊びなのだから気ままにやればいい。スポーツとは本来そういうものだ。

この自由さが口コミを中心に人気を呼び、キャンプ利用者の約7割は非ゴルファーで、今年のゴールデンウィーク(GW)はほぼ満員という盛況だった。折からのブームで既存のキャンプ場の予約が取りにくくなっていることがあるとはいえ、この数字はゴルフをしない人にとっても、ゴルフ場が非日常を味わえてリラックスできる特別な空間になっている可能性を感じさせてくれる。

コース全体がリゾート気分に浸れる雰囲気で満ちている

この施策を始めるにあたって、林支配人が、テントなどの用具をそろえに専門店へ足を運んだ昨年のことだ。店頭で親切な店員さんにいろいろと相談をするうち、「甘く考えない方がいい、と言われました」と、いわば素人の集団がキャンプを商売にすることに対して「忠告」もあったという。確かにその通り。購入して帰ってからは、スタッフ一同でテント張りを手伝うためのノウハウなどを真剣に学び、共有し、サービスとして成立するレベルまで必死に高めて、スタートにこぎつけた。おかげで、手ぶらでテントを利用できるプランは、キャンプ初心者を中心に人気となっている。

利用者が求める“非日常とは?”を考える

キャンプがアクティブなリゾートの過ごし方だとすれば、プライベートを大事にしてゆったりと過ごしたい人もいる。そんなニーズに応えるべく今年8月にオープンするのが、11番と18番ホールの間に建つ7棟の「フェアウェイフロントヴィラ」だ。

ヴィラの広々としたリビング。至る所にこだわりが垣間見える

林支配人は「せっかくリゾートに来たのだから、女性に楽をしてもらいたいです」と、そのコンセプトを語る。日常の手間を最小限にできるよう、食事はクラブハウスのレストランからヴィラの部屋までデリバリーするなど、豪華設備や人気家電、上質なリネン類にとどまらない“快適サービス”にこだわりがある。

コロナ禍によるリモートワークの普及で、パートナーと一つ屋根の下で過ごす時間は増えた。そんな状況で出かけるリゾート。「せっかくリゾートに来たのに、家にいるのと変わらない」と思わせない仕掛けを施設側は考える必要がある。日常での手間を、特に女性視点で丁寧に見直した。ヴィラには上質なキッチン施設もしつらえたが、使うモノが変わるだけではスイッチが切り替わらないかもしれない。レストランでとる朝食にも、女性には身支度の手間がある。上げ膳据え膳だけでない、その先のスイッチOFFを味わってもらいたい――。

女性も心行くまでリゾート気分を

穏やかな海に多くの島が浮かび、その合間を船が行き交う、これぞ瀬戸内海という光景にゴルフコースのアクセントが加わる非日常的空間。施設が本来持つロケーションのアドバンテージを生かし、すべてを解き放つことができるリラックス体験を目指す。各棟が独立した造りのヴィラを建てたことによって、プライバシーもしっかり保つことができ、ハードウェアとサービスのバランスが整った。

ヴィラ利用者は、目の前に広がるコースでゴルフをしたくなった時にも、「専用の2人乗りカートを導入するので、ヴィラから乗って行って、そのままコースに出ていただくことも可能です」(林支配人)。ハーフやスルーでプレーすれば、クラブハウスに入ることがないまま人との接触を最小限にして、プライベートの時間を満喫できる。

ゴルフ場が秘めた非日常性のポテンシャル

建造物はもちろん、植栽にも多くの時間と費用をつぎ込んだ

ゴルフをする人も、しない人もハイレベルな非日常を味わえる「大人の隠れ家」。1泊単位での利用のほかに、年間30泊の「所有権」として販売されることに対しては、地元広島の経済界が研修や社員の福利厚生などの目的で高い関心を寄せているという。また、首都圏や飛行機の直行便がある北海道からの問い合わせもある。

ゲートからクラブハウスに至る長いアプローチは、物理的にも心理的にも、日常の喧騒から離れる演出装置。一面を緑に囲まれ、何百メートルも先を障害物なしで見渡し、風の音を聞き、子供のように空を見上げることができる広大な敷地がゴルフ場にはある。それが誕生したころからずっと、日本では希少性の高い非日常の場所だった。

コロナ禍に伴うニューノーマルな働き方が浸透し、オンとオフの境界に曖昧さを感じることも多い時代。ゴルフ場が秘めていたリゾートとしてのポテンシャルに、新たな光が当てられ、多くの人が価値を発見し始めるかもしれない。

非ゴルファーも満足できる場所へ。林支配人の次なる一手は?
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