次世代ゴルファーを育て地域活性を 難コースの取り組み ~赤城国際CC
「赤城の山も今宵限り…」。これはさまざまに演じられてきた江戸時代の侠客・国定忠治の名台詞。さらに赤城山から吹く冷たい北風・赤城おろしも有名だ。それだけ知られているにもかかわらず「実は赤城山という山はないんです」と教えてくれたのは赤城国際カントリークラブの山本清二社長。赤城山は大きな火山体の総称であり、コースからはっきり見えているのは赤城七峰のひとつ鍋割山だという。
雄大な自然の中にある赤城国際では山本社長を中心に近年、ジュニア育成に力を入れている。50年以上の歴史を持つゴルフ場として、ゴルフ界、そして地域の活性化に取り組んでいるのだ。
子供たちにゴルフを好きになってもらいたい
前橋市街を一望できる赤城山南面の広大な敷地に27ホールを備える赤城国際は昭和39年に開場。群馬県内で3番目に古いゴルフ場だ。セルフプレーが当たり前となった現在では考えられないが、会場当時はプレーヤー1人にキャディ1人というスタイルで営業しており、300人を超えるキャディが常駐し、地域に大きな雇用を生み出す一大プロジェクトでもあった。そんな歴史を引き継いだわけではないが、元銀行マンの山本社長は「企業の使命のひとつ」として、2020年の就任当初から地域貢献の方法を模索していた。そんななか、社内で提案されたのがジュニア育成だった。
「渋野日向子が海外メジャーを制覇したのが、私がここに来る前年の2019年でした。もし、彼女が赤城国際所属だったらどうなっていたんだろうと考えるとワクワクするじゃないですか? 群馬県でいえば青木瀬令奈に続く選手を生み出せないか。砂漠の中でダイヤモンドを探すような話かもしれませんが、ジュニア育成ならスポーツを通じて地域を活性化できると考えたんです」。大きな夢を語る山本社長だが、プロゴルファー養成所を立ち上げたわけではない。取り組んでいるのは子供たちにゴルフを好きになってもらうこと。さらにいえば、彼らが将来、競技志向のゴルファーになることを目指している。
難コースに残る逸話
赤城国際は南、西、東の各9ホールをどの組み合わせで回ってもコースレートが73を超える難コース。「グリーンが上りが下りに見えたり、下りが上りに見えたり、傾斜を読むのが本当に難しいんです」。かつて男子ツアーのトーナメントが行われた際にはパットの名手として知られる青木功が「オレはちゃんと打ったのにカップが動いた」とコメントしたという逸話も残っている。一般のアマチュアゴルファーにとってはかなり手強い。「他のゴルフ場で80台が出たのに、100を叩いて『もう二度と来ない』とおっしゃる方もいます。一方で、昨年開催したワンデーのオープントーナメントに参加したアマチュアの中には、その後も継続して来場いただいている方もいます」。赤城国際に繰り返し足を運ぶのはレジャー志向のゴルファーよりも、競技志向のゴルファーという傾向ははっきりしている。
山本社長の就任は“密”にならないとしてゴルフ人気が高まったタイミングと重なったが、その実感は得られなかった。「恐らく、そこで増えたのはレジャー志向のゴルファーだったんでしょう。競技志向のゴルファーは自分たちで育てていかないといけない。そうしなければ、将来的に立ち行かなくなると思っています」。ジュニア育成は必ずしも、プロゴルファーの育成ではなく、将来の顧客となる競技志向のゴルファー育成が大きなウエートを占めている。
人気となったジュニアゴルフスクール
さまざまな思いがこもったジュニアゴルフスクールは2021年10月にスタートした。月に2回のペースで開催を重ねると徐々にリピーターが増え、今では15人の定員をオーバーすることも珍しくない。朝10時の朝礼に始まり、所属プロの指導のもと、正午まで練習場やアプローチグリーンで思う存分に練習ができる。本人と保護者1人に昼食を提供。これで無料だから、人気になるのも当然だろう。ちなみに昼食は通常レストランで提供しているものとは別に用意した甘口のカレー。「毎回なので飽きるかなと思うのですが、子供たちがアンケートに“赤城国際のカレーが大好きです”と書いてくれるので、なかなか替えられません」
スケジュールはここまでだが、時には延長戦もある。「食後に子供たちがアプローチ対決を挑んでくるので『負けても泣くなよ』と挑戦を受けています。目の前でプレーを見せてあげることも大事だと思うので、手抜きなしの真剣勝負です」とは講師の柳澤美冴プロ。ここでゴルフを始めた子もいれば、すでにプロを目指している子もいるが、どんなレベルの子供にとっても、3年前までレギュラーツアーに出場していたプロのプレーを目の当たりにすることは大きな刺激になるはず。中学生になり、さらにゴルフを続けたい子供たちがジュニア会員としてコースを利用できる制度も整っている。
クラブハウスに入るだけでも気が引き締まるような超名門コースがあれば、気軽に楽しめるカジュアルなコースもある。コースメンテナンスやサービスの質より、安さが売りのコースもあるだろう。さまざまなスタイルのコースが存在するからこそ、ゴルフの楽しさも広がる。競技志向のゴルファーを満足させる難コースもそのひとつ。ジュニア育成の取り組みが、赤城国際やその周辺地域、そしてゴルフ界を活性化させることを期待したい。
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