上井邦浩・アラフォーの逆襲 「イップスは技術で解決できる」Lesson Interview vol.1
上井邦浩・アラフォーの逆襲 「帰り道でシャットを作る」Lesson Interview vol.2
左腕の骨折、左親指の痛みなどを経験し、40歳を迎えた上井邦浩。しかし、信頼するコーチ・吉田直樹氏とともに取り組んだスイング改造の効果で、いま、最高に自信を持ってスイングできているという。具体的に何を変えたのか。アマチュアにも参考になる部分はあるのだろうか。(全二回・後編)
行きはフェースが開いていてもいい。肝心なのは帰り
―吉田直樹コーチに最初に言われたことは、「フェースのシャット具合(閉じ具合)が足りない」ということでしたね。
もともとテークバックで開いて上げるクセがあったので、自分なりにそれを閉じて上げるということはやっていたんです。でも、それだと全然足りなかった。それに、結局大事なのはダウンスイングじゃないですか。上げるときのシャットの度合いが、ダウンスイングでもそのまま下りてこなきゃいけない。ボクの場合は上げるところから意識しないと無理なんですけど、究極を言えば、コリン・モリカワみたいに、上げるときはそんなに閉じなくても、ダウンスイングでしっかり閉じていればそれでいいわけです。で、そこを意識したら、一昨年のQTではめちゃくちゃショットが良かったんです。
―それで、去年から本格的にコーチを依頼したと。
はい。「良くなった」というのをすごく実感したので。それで、次の段階として、ダウンスイングで手が体の後ろに行くのを直そうと。これは昔からのボクの悪いクセなんですけど、ダウンスイングで腰が速く回りすぎて、その分、クラブが遅れてインサイドすぎるところから入ってくることが多いんです。そうなると急激なローテーションが入っちゃうから左に曲がるし、右にすっぽ抜けることもある。
それを上げたところから直線的に下ろすようにして、ハーフウェイダウンで手が体の前に来るように振るというのをしばらくやっていました。ただ、この振り方がちょっと自分とは相性が悪くて、そうしたら直樹さんが、イン‐アウトのパス(クラブ軌道)は一旦そのままにして、別のやり方でやってみようと。
―具体的には?
ひとつは、ダウンスイングのコックの度合いを減らしました。切り返しのところで、ギュッとタメを強くして振っていたのを、コックの角度をほとんど変えないで、そのまま下ろす感じに。これは、手(特に痛みのある左手親指)に負担をかけないためでもあるんです。最初は慣れなくて飛距離も落ちちゃいましたけど、今は痛みもスイングの違和感もなくて飛距離もだいぶ戻りました。
―下ろす軌道も変わった?
以前は切り返しでコックを強くして、手を体に引きつける感じで振っていたので、それと比べるとダウンスイングのアークが大きくなったというか、手を遠くに下ろすような感覚はありますね。入射角は確実にシャロー(低い軌道)になっています。それと、コックを減らしたことで、トップで手がまだ体の前にあるうちにスッと下ろせる感じにもなってます。まだ、以前のクセで少し内から入ることはありますけど。
―吉田コーチとのやり取りはどういう形で? 動画を送ったりしているんですか?
そうですね。今年の初め、試合に出たときにちょっと調子が悪くて、直樹さんに動画を送って「なんかフックが強くなってきたんです」って言ったら、「蹴るタイミングが遅い」って。切り返しで左足を踏む(左足に乗る)のは大事なんですけど、踏みっぱなしだと、膝が曲がったまま目標方向にずれちゃうんですね。これもスウェーなんですよ。
ボクは昔から左膝を伸ばさないで打ってきたから、踏んだ後どうしても蹴る(左足を伸ばす)のが遅い。左足を蹴らないと(左足を素早く伸ばさないと)、腰が切れなくてクラブだけがローテーションするから、フックが強くなるってことですね。だから、とにかく「早く蹴る」というのを今は意識してやっていますね。
―アマチュアも「早く蹴る」のを意識した方がいいですか?
アマチュアの方は、まず「踏む」ほうが先決です。テークバックを手で上げるので、そのせいでトップで体が伸び上がっちゃう人が多い。この体勢からだとうまく左に踏み込むのは難しいです。それと、足裏のどこに体重をかけるかということも大事で、テークバックでは右足かかとに体重をかけると、スムーズに腰が回ります。そして、切り返しでまず左のつま先、その後、左かかとに体重がかかってフォローというのが正しい順番です。アマチュアの方は、切り返しで右足つま先に体重がかかる人も多いですね。
―うまく左に踏み込むために、バックスイングではどんなことに気をつけるといいでしょうか。
上(上半身)を一生懸命回そうとする人が多いんですが、下半身のほうを回す意識を持つといいです。右の股関節を使って、お尻を後ろに引くように意識すると腰が回って、そうすると胸の面は簡単に90度くらい回りますから。そういうトップだと、右サイドの“ふところ”が広くなるじゃないですか。それがダウンスイングで左足を踏み込んだときの、手を下ろすスペースですね。このスペースがきちんとできているということが、切り返しから先を成功させる一番のコツなんです。(取材・構成/服部謙二郎)
協力/K2 GOLF SALON
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