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永峰咲希・再生までの道のり Lessonインタビュー前編「視覚依存からの脱却」

長らく優勝から遠ざかってきたメジャーチャンピオン・永峰咲希が、4月のパナソニックレディースで、約3年ぶりに優勝争いに絡んだ。昨シーズンから大幅にスイングを改造し、さらなるブラッシュアップを行ってきたという永峰。目澤秀憲コーチとともに取り組んできたその改造のテーマは、「ドローを極める」ということ。具体的にどんな取り組みをしてきたのか、今年のオフに彼女の地元・宮崎で取材した中身を紹介していこう。(前編)

視覚依存症に…「真っすぐの線が気になっちゃって」

―昨年は一勝もできず、予選落ちも15回、賞金ランキングも60位となかなか思うようにいかないシーズンでしたが…。

永峰:シードも複数年もあることですし(20年の日本女子プロ選手権優勝資格)、昨年はスイングを一から変えて再現性の高い動きを目指しました。スイングを変えている段階でもあり、さらにシーズン序盤はクラブもなかなかうまくフィットできなかったこともあって、思うような成績を出すことができませんでした。でも、クラブがちょっと落ち着いたころに、新しいトレーナーさん(高木紀史氏)と出会い、トレーニングも変わって、中盤戦ぐらいからようやく戦える状況になってきました。

―体の動きが変わったということですか?

永峰:高木トレーナーはバイオメカ(運動生理学)を研究されている方で、ゴルフのスイングにつながるようなトレーニングメニューを考えてもらいました。高木さんに体の動きを見てもらったところ、私の中で体の動く部分と動かない部分があって、中には“動き過ぎな部分”もあったぐらい。動き過ぎてしまうことで、軌道がシャロー(低い位置からヘッドを入れる)だったらシャローになり過ぎたり、それを戻そうとしたら今度はスティープ(上から打ち込む)になり過ぎたり。そこからですね、目澤コーチと高木トレーナーと3人で話して、ちょうどいいスイングバランスと体の軸の位置を探して、トレーニングをしてきました。でも、そこでまたひとつ問題が見つかって…。「視覚依存症」と指摘されたんです。

―視覚依存症?

永峰:はい。目の動きが強すぎて、目に頼ってしまうという症状です。例えばインパクトを目で追ってしまったり、ティイングエリアでも何か真っすぐの線があると気になったり、目からの情報に頼り過ぎちゃうところがあって。それの何が良くないかというと、目の動きに引っ張られて、気づかぬうちに体が反応してしまうんですね。確かに言われてみれば昔から目で見て覚えるのは得意で、新しい動きでも誰かがやっているのを見ればすぐに覚えられる方でした。でも、高木トレーナーに言わせれば、「動きはできているけど、本当に動かさなきゃいけない場所が動かせていない」と。視覚依存の人は、目をつぶって片足で立つのもピタッと止まれないんです。私も目を閉じて平均台の上に片足で立ってみたんですが、鏡を見ながらだとピタッと止まれるけど、目を閉じるとグラグラしちゃう。仰向けに寝っ転がって、右手をグーにして、左手をパーにしたりして、そんなことをして視覚依存を徐々に解消していきました。今はだいぶ目を使わなくなってきています。

―なるほど。では、トレーニングはどんなことをやってきたんですか?

永峰:先ほど動き過ぎな部分があると言っていたのが、「ひざ」なんです。私のひざって「ハンチョウひざ」といって、ひざが伸びやすくてほとんど遊びがないんですよね。遊びがないから、ひざを伸ばしてごまかしていたといえるかもしれないです。目澤コーチが言うには、本来ひざは安定していなければいけないのに、そこが伸びてしまうと本来稼働しなければいけない股関節や足首がロックされてしまう。股関節や足首が動かず、ひざが動く状態だと、スイング中にグラつきやすい。シーズン中に足首を痛めたのも、ひざが影響しているということでした。ですから今はひざを開くトレーニングしたり、足首とすねを分離させるようなトレーニングもやって、徐々にひざが開けるようになってきました。ひざが開くことでようやくひざの遊びができて、スイング中ひざが伸びずに安定するんです。

―ひざを開くとは、どんなトレーニングですか?

永峰:足裏を地面にペタッとつけたまま、ひざだけを開く動き。これ、母指球を浮かさずにやるんですが、やってみてもらうと分かりますが、ひざを開くのってけっこう難しくて最初はできないんですよ。意識をお尻に持っていけるようになって、ようやくできるようになりました。これができるようになるとアドレスで骨盤がいいポジションに入ります。結果的に、ひざが安定して、股関節を使えて、トップ(オブスイング)でもゆとりが持てるんです。トレーニングの成果か、このオフは今までで一番ドライバーが飛んでいました。体がようやくできてきていて、今年は早めにクラブも決まりましたし、いろんなものがいい方向に向かっています。

―それらを踏まえ、新シーズンに向けて、どんな取り組みをしてきたんですか?

永峰:このオフのテーマは、「逆球が出ずに確実にドローが打てるスイング」でした。目澤コーチにも指摘されましたが、私は宮崎という場所で育ったせいか、アイアンを上から入れるのが苦じゃない。むしろそれが得意で、そうなるとライン出しとかで良くも悪くもごまかせちゃうんです。ごまかしているのが分かっているから、緊張した盤面でそこに反応して逆球になったりする。ごまかし続けられればいいんですけどね。「もう一回あのごまかしが打てるかな」というのをいつも考えていて、それが本当に嫌で…。

―上から打ち込むようなスイングだと長続きしないと。

永峰:実際にそれだとシーズンを通して長続きしないよねって、チームで話をしていたんです。若い子も出てきてみんな飛距離も出るから、上からぶつけるスイングじゃあ戦えないというのも分かっていて、ですからこのオフはそこに一番大きく取り組みました。その結論が「安定したドロー」でした。目指しているのは、「本当につかまえたい時につかまえられるスイング」。体の動きも良くなってきたことで、ようやく取り組めるようになったんです。

具体的なスイングの話は後編へ。(取材・構成/服部謙二郎)

協力/UMKカントリークラブ

永峰咲希最新スイングをご覧ください

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