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「たかがゴルフ」YouTuberプロ中井学を突き動かす原動力

【後編】中井学 UUUM退所騒動に迫る!? 底辺コーチの現実 飛躍を生んだある選手との出会い&新たな挑戦

いまやゴルフレッスンは活字、対面だけではなく、手軽にスマホで見られる動画というツールが確立した。中でもコンテンツが満載のYouTubeの功績は大きいだろう。その先頭に立って走り続ける人物こそ、プロゴルファーの中井学(49)だ。プロコーチからYouTuberプロとして活躍するまでの経緯や新たな目標について語る。

ツアープロ志望からプロコーチへ 飛躍を生んだ出会い

―留学生活を終えて帰国後は何をしていた?
「留学後は、国内のツアープロを目指して練習に励みました。1999年からJGTOが実施するQT(クォリファイングトーナメント)制度ができ、トーナメントの出場権を得るために参加しました。サードまで通ったことで、一応プロと名乗っていいところまで達することができました」

―プロコーチになった経緯は?
「他の選手のスイング相談を受けるところから始まり、担当した選手がどんどん良い結果を出すと、評判が評判を呼んで教えてほしいというプロが増えていきました。私自身もまだプロになる夢を捨てきれず、迷っていた時期はありましたが、教えるということは、少なからずその選手の人生に介入するわけですから、自身の調整の合間や、片手間で教えるのは不本意。徐々にこちらに専念するべきかと思うようになりました」

―当時はどんな選手を見ていた?
「男子も女子も教えていましたが、その中でターニングポイントになったのは、すし石垣選手です。2006年の『東建ホームメイトカップ』で、ツアーデビューする当時の教え子のコーチ兼キャディとして帯同していたときに、その子のスイングを見たすし選手からいきなり直談判を受けました。『ここまでできるようになったのは、きっと見ているコーチが優秀だから』と、その場ですぐに私に申し出てくれたんです」

―すし選手との出会いで、何が変わった?
「すし選手が優勝争いを繰り広げるようになると、おかげさまでコーチとして多くの方に認知されるようになりました。私はどちらかというと、まだプロになっていない卵の状態の選手を教えていたので、それほど名が知れ渡る立場ではなかったのですが、すし選手のおかげでゴルフ雑誌でも取り上げていただくことになりました」

中井流ティーチング哲学 動画がもつポテンシャルを引き出す

―教えることで見つけた発見は?
「教えるときは、各選手に自分の考えを押しつけたりは、絶対にしません。特に男子プロは理論で納得しない限り採用してもらえないため、自分の理論を他の人に当てはめるような作業をしても、取り越し苦労。選手のフィーリングを最も大事にしながら、それぞれ別々のアプローチで、選手に合ったサポートをしていきます」

―ゴルフにおいて動画がもつポテンシャルは?
「テレビ番組や女子ツアーのインターネット中継を担当するようになり、気づいたのが動画の可能性です。
それまでレッスンは主に活字とスチール(写真)でしたが、動画はまた別の方法で、広い範囲の方に、わかりやすく届けるために必須な領域。まずはティーチングプロも選手も、多くの方に名前を知ってもらうことが大事なのだと痛感しました」

―多くの方に知ってもらう手段をどのように取った?
「動画の必要性を感じていたちょうどその頃、自身でチャンネルをつくって好きな内容を届けるYouTuberが出始めてきました。そんなときに誘ってもらったのが、UUUM GOLFさん。3年間所属して認知を拡大でき、その後に独立して『中井学ゴルフチャンネル』を開設しました。私のことを多くの方に知ってもらうきっかけになったのは、間違いなくYouTubeです」

不利益を覚悟でシニアツアー挑戦

―2015年にプロテストに挑戦したのはなぜ?
「留学時代、ひじのケガを治してくれたフランク・ジョーブ博士が、2014年に亡くなったニュースを見たのがきっかけです。実は博士とひとつ約束をしていました。手術の後にお礼がしたいと出向いたときに、博士から『お礼は必要ない。それよりも、君が元気にプレーする姿を見せてほしい』と言われたんです。そのときの約束を果たしていないとハッとして、翌年のプロテストに臨みました。43歳という年齢でしたが、トップ通過することだけを強く念じ、2位で合格することができました」

―今後の目標は?
「現在49歳で来年4月に出場資格を得られる、シニアツアーに挑むことです。実は、私が試合に出ることで、チャンネル運営においては不利益になることが多いんです。レッスンを行う立場として、結果が伴わないと言葉に説得力が生まれず、非難されるからです。それでも挑戦するのは、あのときの博士との約束を果たしたいから。どんなに険しい道のりでも、恩人との約束を守るため、私は試合に出たいと思っています」

プロコーチ、YouTuberプロ、そしてシニアツアー選手への挑戦。苦節を経て、葛藤を抱きながらも、立ち止まることなく前へ前へと歩みを進めてきた。前編で紹介した、幼少期に負った大ケガによって腐りかけていた気持ちに、一筋の光をさしてくれたゴルフと恩人への感謝が背中を押す。「たかがゴルフ、されどゴルフ」。心底ほれ込んだスポーツに、いまも「すごく翻弄されている人生」と感じながら、思い描くゴールへと突き進む。(編集部・内田佳)

取材協力/こだまゴルフクラブ(埼玉県)

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