飛んで曲がらないボールを目指し、体全体を使った大きなスイング

凱旋試合に挑む

日本人選手として1985年の服部道子以来、37年ぶりに「全米女子アマチュア選手権」を制した馬場咲希。その後の「世界アマチュアチームゴルフ選手権」では団体戦3位に貢献し、個人戦でも4位に入る活躍を見せた。馬場を中学1年時から指導する坂詰和久コーチが、現在の「飛んで曲がらないボールを目指し、体全体を使ったスケールの大きなスイング」を解説する。

捻転差が大きい「バックスイング」

スイングの指導を下半身から行わず、胸椎を右に回すことからスイングを開始する

特徴的なのは胸椎を右に回すことからスイングを開始しているところです。クラブヘッドが右ひざの高さに上がるまでは下半身を動かしていません。その間、胸を目標の反対側に向けることにより、上下の捻転（ねんてん）差が生まれます。最初から上半身と一緒に下半身を動かしてしまうと、この捻転差をつくることができません。馬場選手は関節の可動域が大きいため、胸椎始動のバックスイングを行った後、さらに上半身を右に回し、上下の捻転差をより大きくしています。

アドレスでできた手首の角度をキープし、トップまでクラブを上げる

上半身と下半身を同時に動かすと、クラブをインサイドに引き過ぎたり、上半身が伸び上がったりしがちです。胸椎だけを回すことにより、フェース面を変えずに、常に同じ位置にクラブを上げることができるメリットもあります。胸椎を回す動きに同調してクラブも動きますが、この時は手首を一切使いません。アドレス時の手首の角度のまま、トップまでクラブを上げるイメージです。アドレスからトップまでの間に頭はやや右に移動しますが、左ひざが右に動くことはありません。多少前に出るだけです。左ひざが右に寄らないことも上下の捻転差を大きくしている一因です。

パワーの源は「お尻とフットワーク」

右のお尻に体重が乗った形が作れることで、体幹と同時にフットワークも使えスイングスピードが増す

バックスイングでは背骨を中心に胸椎を右に回しますが、その際、左肩を右足つま先に近づける意識を持つように指導しています。そうすることで右のお尻に体重が乗った形になってきます。そこからダウンスイングに移りますが、今度は体幹を使って右肩を左足つま先に近づけるように回す意識を持ちます。その結果、左のお尻が後ろに下がり、頭の位置が低くなります。練習では、ボールを打たずに、この感覚を身につける素振りを何度も繰り返すドリルを行っています。体幹と同時にフットワークも使うことでスイングスピードが増し、より大きなパワーをボールに伝えることができるわけです。また、ダウンスイングで正しい動きができていれば、自然と右ひじと体の距離は遠くなります。松山英樹選手をはじめ、PGAツアーの選手が体から右ひじを離して下ろしているのも同じ理由です。

課題はダウンスイングでの右足かかとの浮き

フィニッシュでは両手が高い位置に来るのは、全身を使ったスイングが出来てる証拠

ダウンスイングからインパクト、フォロースルーにかけての動きはいたってシンプル。バックスイングで前に出た左ひざを伸ばすことで、勝手にコアが回ります。体を回す意識はありません。あくまでも曲がった左ひざを伸ばすだけです。これはメディシンボールを体の左サイドへ投げるときと同じ動きになりますが、その動きをスイングに応用しているだけです。そのため、フィニッシュでは両手が高い位置に来ています。メディシンボールを投げ終えたときに両手が高い位置に来るのと同じです。全身を使ったスイングだからこそ、あれだけの飛距離が出るわけです。

右足かかとがベタ足しになることで、安定したスイングを作れる

スイングの修正点はほとんどありません。あえて1つだけ気になるところがあるとすれば、ダウンスイングで右足かかとが地面から浮いていることです。幼少期からの名残でもありますが、骨盤のローテーションを今よりもスムーズに行うことができれば、右足をベタ足のままクラブを下ろすことができるでしょう。練習ではそれができているものの、試合になるとどうしても浮いてしまうのが課題です。ここを修正できれば、今以上に安定したスイングをできることは間違いありません。