新生「日本ゴルフツアー選手権」から世界へ 木下稜介が見据える連覇と2つのアーメンコーナー
勝利のカギを握る「日本のアーメンコーナー」
思い入れを強くする理由は、ホストプロとしての責務だけではない。海外志向の強い木下にとって、優勝者に与えられるDPワールドツアー「BMWインターナショナルオープン」、PGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」の出場権は大きな魅力。これまでも、海外への挑戦意欲が木下の成長の原動力になってきた。
「日本ゴルフツアー選手権」が行われる宍戸ヒルズカントリークラブ西コースの終盤を、選手たちは「マスターズ」が開催されるオーガスタナショナルGCの難関3ホールに例え、「宍戸のアーメンコーナー」あるいは「日本のアーメンコーナー」と呼ぶ。「12番からは最後まで気が抜けない難しいホールが続きます。そのなかでも一番難しいのは17番でしょうね」。481ydと距離が長く、グリーン手前には大きな池が広がる、わずかに右ドッグレッグのパー4。ドローヒッターの木下にとっては、ティショットでよりプレッシャーを感じる難所だ。
「4日間で2オーバーなら実質パープレーぐらいに思っていたのに、昨年は4日間で2アンダー。『全英オープン』の風対策として、低いフェードを練習していたのが生きました」。すでに手にしていた初の海外メジャーへの切符と、そこで結果を残すための努力が、国内メジャーでのツアー初優勝につながった。今年はオフから連覇を意識してきただけに、持ち球とは逆の低いフェードにもさらなる磨きがかかっていることだろう。
声援をチカラに 宍戸から世界、そしてマスターズへ
連覇の先に見据えるのは年末の世界ランク50位以内。それは、来年のマスターズの出場権獲得を意味する。「8月から世界ランクの制度が変わるので、日本でプレーしているだけではランキングを上げるのは難しくなってくると思います」。獲得ポイントが大きい海外のビッグトーナメントに出場する機会を得ることは、これまで以上に大きな意味を持つ。日本のアーメンコーナー攻略が、オーガスタのアーメンコーナーへとつながっている。
「選手はギャラリーが多くいるほど、力を発揮します。声援を力に男子はすごいなと思ってもらえるプレーが見せられれば、来年はさらに多くギャラリーの前でプレーできると思っています。ゴルフの魅力を感じてもらえるように精いっぱいプレーしますので、ぜひ会場に足を運んでください」
宍戸から世界へ、アーメンコーナーからアーメンコーナーへ。世界への扉をこじ開けるのは木下なのか、他のプレーヤーなのか。特別な空間でその戦いの行方を見守る贅沢な4日間が、間近に迫っている。