領域展開!? キャロウェイ新ドライバー「ELYTE」を深掘り
キャロウェイの新シリーズ『ELYTE(エリート)』が登場した。グリーンのキーカラーをはじめ、「常識破り」や「禁断の飛び」、「新領域」といったキーワードが発表前から話題となっていたが、いったいどんな意味が込められ、どんなテクノロジーが詰め込まれているのか。キャロウェイゴルフのプロダクト担当者を直撃し、根掘り葉掘り聞いてみた。
「ELYTE」の「Y」の意味
「ELYTE」は、選ばれた者、精鋭を意味する「ELITE」と創業者である「Ely Reeves Callaway」の名前を掛け合わせた造語だ。「I」ではなく「Y」を採用した理由にはもうひとつの背景がある。スタッフプレーヤーで2024年にメジャー2勝を挙げたザンダー・シャウフェレの存在だ。キャロウェイゴルフのマーケティングを担当、アジアプロダクトマネジメントの石野翔太郎氏によると、メジャー制覇に至る過程が反映されているという。
「シャウフェレは2年ほど前、同期がメジャーで勝っているのに、自分(I)がなぜ(WHY)勝てないのかを問い続けた。その結果、コーチや住む環境を変えるなど、マインドセットを徹底的に見直した。どうすれば“ベストプレーヤーの一人”ではなく、“エリートプレーヤー”になれるかを追求したのです。我々もまた、スピードと寛容性という相反する要素をどのように打破し、次の領域へ進化させるか追求しました」
「ELYTE」という名前には、こうした新たな挑戦への考え方や理念が込められているといい、「次の領域」こそが「新領域」で、米国では「NEXT DOMAIN」、日本では「エリート領域」と位置づけている。では、歴代ドライバーを並べた場合、いったいどのポジションに位置するクラブなのか。
歴代DRのポジショニングでわかる「エリート領域」
キャロウェイが得意とするAIによるフェース設計。スピードや寛容性を追求したモデルを世に送り出す一方で、蓄積してきた世界中のゴルファーのリアルな情報を同社のデータ分析チームがAIを使って弾き出し、形状にしてきた。
同社が公開したグラフを見ると、ドライバーの特徴が一目でわかる。縦軸は「ボールスピード」(ボールが飛び出す速さ)、横軸は「寛容性」(ミスショットへの許容度)を示す。
「『エピック』や『マーベリック』はスピードを追求するシェイプで、(AI設計の)フェースのインプットデータも飛ばしに特化。『ローグ』や『パラダイム』は見た目のやさしさや着弾範囲を狭める狙いがあり、どちらかというと寛容性重視でした」
「新たなAI技術の導入でリアルなスイングコード(スイングを計測したデータ)を加えて、スクエアなインパクトがいらない『パラダイム Ai スモーク』が出来上がりました。今回の『エリート』はさらに進化、グラフの右上(ボールスピードも寛容性も高い)に領域展開していきたい、と誕生しました」
エリートはスピードと寛容性を同時に追求するのは難しいという概念を大きく打ち破り、どんなスイングでも飛距離と安定感を両立。前作のパラダイム Ai スモークと比べて飛距離が最大8yd伸び、着弾範囲は最大19%狭まった(同社調べ)という。そのテクノロジーとは何か。
「10x」ってなんだ?
キャロウェイはこれまで、ミスヒットに対する寛容性を示すために使われる「10K(10000g・cm2)」といったヘッドの慣性モーメントを前面には打ち出してきていない。「Aiフェースでスピン量を調整できて、どこに当たってもボールスピードが落ちないようにつくってきたから」だ。
ただ、これまでAIが導き出したデータを100%カバーした形状につくりあげることができていなかったという。そこで、ソフトウェアにさらなる投資をしてアップデート。生み出されたのが「Ai 10x フェース」だ。
「そもそもAiフェースはミスヒットしたとき、たとえばロフトが寝て入ったり、開いて入ったりしたときにフェースが感知して、右に飛びそうなときにそれを左に飛ぶようにたわんで調節してくれます。弾道を補正してくれる無数のエリアを『コントロールポイント』と呼んでいますが、100%網羅できる形状を実現したことで、そのコントロールポイントが(前作比)10倍になりました。10xという名前はそこからつけられました」
当然、コントロールポイントは多い方がAiフェースとしての機能が高い。「ドライバーは2万5000ポイント。それだけフェースのどこに当たっても遠くへ真っすぐ、そして着弾範囲が狭まるように補正してくれる。いままでで一番精度の高いフェースになっています」