なぜ初速は上がり、球は暴れないのか? キャロウェイ「QUANTUM」3層構造フェースの答え/コヤマカズヒロ氏が直撃
キャロウェイから発表されたニューモデル『QUANTUM(クアンタム)』。「Speed is Everything(スピードがすべて)」をテーマに掲げた新ドライバーは、業界初の異素材による「3層構造」フェースを採用している。ゴルフトレンドウォッチャー、コヤマカズヒロ氏がキャロウェイの開発担当・石野翔太郎氏を直撃。コヤマ氏が試打で感じた「不思議な打感」の真相に迫った。
■「QUANTUM」という名前が示す“飛躍”
ゴルフ界の最新ギアやツアーに関するトレンドを分析・解説しているコヤマ氏。実は、3年前のGDOギアニュースで「Quantum(飛躍的な)」という言葉を口にしている。キャロウェイの話題ではなかったものの、先見性を感じさせるワードセンスだ。本人の記憶はおぼろげだが、まずはネーミングの秘密から切り込んだ(以下、敬称略)。
コヤマ:まず、気になるのがネーミングです。なぜ「クアンタム」になったのでしょう。
石野:英語の“Quantum”は物理学でいう「量子」、つまりそれ以上分割できない最小単位を意味します。前々作「PARADYM」が“パラダイムシフト”を意味していたのに対し、今作のクアンタムは「クアンタムリープ(量子跳躍)」、すなわち革新的な技術によって大きく飛躍したという意味を込めています。
■なぜ「Speed is Everything」なのか
コヤマ:「Speed is Everything(スピードがすべて)」というテーマが設定されていますが、なぜ寛容性ではなく、スピードに特化したのですか?
石野:PGAツアーなどで用いられるストローク・ゲインドを我々が分析したところ、ドライバーショットにおいては正確性よりも飛距離のほうがスコアへの貢献度が高く、(調査データ)全体の約65%を占めています。飛距離を伸ばすためにはボールスピードの向上が不可欠であり、それがスコアアップ、さらにはツアーやメジャー大会での勝利につながるという考え方から、「Speed is Everything」を掲げました。
コヤマ:飛んで曲がらないプロなら当然そういうことが言えると思いますが、アマチュアゴルファーにもその恩恵はありますか。
石野:飛距離の重要性はプロだけでなく、アベレージゴルファーにとっても同様です。ティショットで飛距離を稼ぐことができれば、2打目でより短い番手のクラブ(やさしい番手)を使えるようになり、グリーンというターゲットに対する難易度が下がるため、結果としてスコアアップにつながります。
■業界初の異素材3層構造フェース「TRI-FORCEフェース」ってなんだ?
コヤマ:今回の最大のキーテクノロジーが「TRI-FORCEフェース」。この3層構造について教えてください。
石野:1層目(外側)がチタン、2層目の中間層がポリメッシュ、3層目(内側)がカーボンです。
コヤマ:これまでもフェースにこだわってAIなどを駆使して開発してきた中で、多層化というアイデアはいつごろ、どのように生まれたのですか。
石野:実は10年ほど前から、チタンとカーボンを組み合わせた構造でボールスピードを追求するアイデアはありましたが、それらを接合する技術がなかった。ここ数年でポリメッシュという素材が見つかり、2つをつなぐ役割を果たせることが分かり、商品化にこぎつけました。
コヤマ:3層になった理由は?
石野:スピードを追求するうえで、チタン部分の薄肉化が1つの目標でした。ただ、薄くすると耐久性の問題が出てくる。そこで、張力に強いカーボンを裏側に貼り付ける多層構造のアイデアが生まれました。ポリメッシュは単なる接着剤ではなく、異素材をつなぐための最適な中間層として機能しています。
コヤマ:初速を上げるためにチタン部分を薄くしたということですが、薄くするとどうなるのですか。
石野:薄くすると、たわみ量が増えてきます。チタンは非常に強靭で、スプリング効果、いわばバネのような力を持っていて、たわむことで跳ね返る力がボールに伝達され、スピードが生み出される。薄ければ薄いほど、たわみ量が増えて伝達効率が高まります。せっかく薄くして得られたたわみ量を損なうことなく、剛性を過度に上げることもなく、反発性能を残しながらカーボンが裏側でカバーしている。絶妙なバランスでつくられているフェースです。
■AIが導き出した「飛んで、曲がらない」
コヤマ:開発プロセスでは、5万9000を超えるプロトタイプ製作と、227万回以上に及ぶインパクトシミュレーションを経て完成したと聞きました。すごい数字ですね。
石野:フェースはAIによってデザインされています。ボールスピードの向上、たわみによる弾道補正、スピン量、打ち出し角の最適化を目的に、膨大なインパクトシミュレーションを行いました。着弾範囲をできる限り狭めつつ、その中で平均飛距離を最大化する。「飛んで曲がらない」状態を数値的に導き出した結果が、今回のフェース形状です。
コヤマ:AIベースのテクノロジーで高度なフェース設計を実現し、新しい構造で上を目指していますが、過去モデルと比べてどれくらいの向上を期待できるのでしょうか。
石野:一番は、フェースを薄くできたTRI-FORCEフェースの機能によって、ボールスピードを出せることです。一方で、AIテクノロジーとして大きいのが、バックスピンをコントロールできる点。フェースのどこに当たってもスピンを安定させられる。真ん中に当たったときと同じように、2500回転付近に集まるように設計できる点が、AIの大きな強みで、これまでとは違う安定性があります。
コヤマ:AIによってスピンが安定するのは大きな特長だと思いますが、どんな工夫があるのですか。
石野:ギア効果が悪い方向に働いたときに、フェースがたわむことで補正するのがAIフェースの力です。今回は薄肉化できたことで、たわみ量が増えています。下側に当たったときには、ふけ上がりを抑えるようにたわみ、上側に当たったときには、ドロップしないようにたわんでくれます。
























