メジャー初優勝 「最高に、甘くて美しい」/ザンダー・シャウフェレ独占手記
■デサントでメジャー初制覇
日本の皆さんこんにちは。ザンダー・シャウフェレ(Xander Schauffele)です。
たくさんの思いが、まだ胸の中で交錯しています。
「全米プロゴルフ選手権」でメジャー初優勝を飾ることができました。待ちに待ったタイトル。バルハラGCでウィニングパットを決めた瞬間、心の底から興奮しました。
初日からトップを走り続けて、満足感いっぱいの勝利。これまで、メジャーで惜しくも敗れた試合が何度もあり、雪辱できた思いです。ただ僕は、勝った事実以上に、このケンタッキー州での1週間、競争のレーンから外れないよう、ひたすらに自分のできることに集中して、ホールを一つひとつ進め続けられたことに胸を張れる思いがします。
第1ラウンドで4大メジャーの最少ストローク、大会新記録の「62」をマークしました。それも結果のひとつに過ぎません。そしてまた、優勝も結果のひとつでしょう。ゴルフもまた、相手あってのスポーツで、僕たちがその場でできるのは、良いショットとパットを打つことだけ。最後までその気持ちで戦いました。
後続の選手に迫られた最終日、終盤まで大変なシーンが続きました。ドライバーでナイスショットを打った16番では、フェアウェイのボールの右側に泥が付いて、2打目は8番アイアンの距離だったにも関わらず、ピンをアグレッシブに狙えませんでした。17番ではティショットで高さを出し切れず、フェアウェイバンカーへ。悪いライから懸命にパーを拾いました。
そして18番(パー5)、2打目は足場がバンカー、ボールが芝の上という厄介なライ。グリーンの近くには池がひろがり、ミスをすればトラブルになる可能性がありました。最後の最後まで…。思わず笑って、自分に言い聞かせたんです。「メジャーチャンピオンになりたければ、乗り越えなければいけない」―。
今シーズンに入ってから、いや、ここ数年、何度も悔しい試合を繰り返してきました。メジャーだけではありません。前の週だってそう。経験を通して、本当に忍耐強くなりました。近しい人たちほど、僕がどれほど頑固か知っています。
■ブラウンのウェアを着た理由
全米プロの最終日、僕はデサントのブラウンのポロシャツを着ました。2月の「ジェネシス招待」、3月の「ザ・プレーヤーズ選手権」の日曜日と同じコーディネート。どちらのゲームも最終組でプレーして負けてしまいましたが、それもひとつの結果でしかない。それまでのプロセスを振り返れば、勝ち負けはどうあれ、僕に良いプレーをさせてくれそうな、自信を授けてくれるウェアでプレーしようと決めていました。
3日目を終えて、頭に浮かんだのは父・ステファンの顔でした。「やるべきことに集中し、実行し、結果を受け入れる」。ゴルフを始める前、9歳くらいの頃から父が僕に植え付けてきた人生の教えです。目の前のことにフォーカスし、難局を乗り越えられる力があると証明しなさい、と。それはプロセスに集中することでしか、できないことだったのです。
世界最高のフィールドで、勝ったことで本当に素晴らしい気持ちです。最高に、甘くて美しい。でも、やっぱり僕は、学び続けて、一つひとつのシーンにしっかり対処できたことが何よりも誇らしい。それぞれの瞬間を自信に変えて、これからはもっと、どんな難局にも立ち向かえると思えるのです。
ザンダー・シャウフェレ(Xander Schauffele)
1993年10月25日、米カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。サンディエゴ州立大を経て2015年にプロ転向。17年「ザ・グリーンブライアークラシック」でPGAツアー初勝利を飾ると、プレーオフ最終戦「ツアー選手権」で2勝目を挙げ、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。21年「東京五輪」の男子ゴルフ競技で金メダルを獲得。24年5月「全米プロゴルフ選手権」でメジャー初優勝。PGAツアー通算8勝。