みんなが打ちやすい国産モデル ミズノ・BS・ジューシーの“開けるソール”を達人がテスト/25秋ウェッジ研究#6

東五反田ギア総研
テクニシャン向けの国産ウェッジを比較試打

ウェッジの生命線と言えるソールの形状や機能にクローズアップして、人気モデルの特徴を紐解くこの企画。前回に引き続き、ウェッジのソールグラインド違いをコースで打ち比べて、そのインプレッションを紹介する。最終回は国産ブランドの4モデルだ。(第6回/全6回)

アプローチのテクニシャンが、芝の上でウェッジをテイスティング

今どきウェッジ(58度)のソールグラインド違いをグリーン周りで試打して検証する。テスターは、20年にわたる「ボーケイ」(タイトリスト)のユーザーであり、アプローチの精度の高さと多彩なテクニックを持ち、ツアー3勝をマークした丸山大輔プロ。自身は59度(60度を1度立てて、バウンスが1度減った)を使い、ソールグラインドは三日月形状の「M」だ。

フィールドテストをしたウェッジは、国産ブランドの4モデルで「ミズノプロ T-1 ウェッジ」(ミズノ)、「BITING SPIN ウェッジ」(ブリヂストン)、「tT」「tT 2.0」(ジューシー)。各モデルのソールグラインドはトータル7種類で、テクニックを使えるものを中心に揃えた。

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丸山大輔プロが、元気な芝の上から上げたり転がしたりして性能をチェック

さらに、前回のウェッジ特集(外ブラ編)と同様、ウェッジを試打した丸山プロのインプレッションとともに、クラブデザイナー・松吉宗之氏(ジューシー)のコメントも紹介する。松吉氏はソールのトウ-ヒール方向の形状に注目、平らなソールはインパクトが安定している人向け、丸めはいろいろな打ち方をしたい人とインパクトが不安定な人の両方に合うという。詳細は♯2を参照されたい。

●#1 「ハイバウンス=やさしい」は本当か?

●#2 「平ら」と「丸め」やさしいソールはどっち?

●#3 ボーケイ58度のソール7種を打ち比べ

●#4 「フェースを開く」ってどういうこと?

●#5 外ブラ系ウェッジを達人が比較試打


日本の職人魂が息づく、三日月形状のソール

●ミズノプロ T-1(ミズノ)/Vソール

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ミズノプロ T-1・58度 Vソール バウンス10度

いろいろなワザに対応

ツアープロの要望を取り入れたグラインド。バウンスを効かせながらも、ソールのトウ・ヒール・トレーリングエッジを削って、スムーズな抜けを追求した。

丸山「山型をした、幅が狭めのソールですね。ロフトを寝かせて(フェースを開いて)止めたい人が、狙ったところに球を落としやすい。ヘッドのサイズが小ぶりだし、ダウンブローに打ち込んでも刺さったり潜ったりしづらいです」

松吉「バウンス効果が強くて当たってくれますが、トウ-ヒールの有効バウンスは狭いので抜けやすさもあります。しかも、ソールのトウとヒール側が削られて、いろいろなワザが使える。悪いライでもボールをとらえやすいでしょう」


●ミズノプロ T-1(ミズノ)/Cソール

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ミズノプロ T-1・58度 Cソール バウンス8度

開いて打つローバウンス

ソールのトウ&ヒール側を大きくカットして、丸みを持たせながらトレーリングエッジ部分を少し残したグラインド。フェースを開いて球を操りたい人向け。

丸山「ボクにとってはバウンスの効き具合もちょうどよく、至ってノーマルな感覚で打てます。バウンスが8度で、フェースを開いても邪魔にならず抜けやすいし、ロブなどやわらかい球も打ちやすい。操作しやすいウェッジです」

松吉「『V』ソールよりもさらに、フェースを開いたときのことを考えて作られている印象です。ソールのヒール側が落ちていて、トウ側が少し広くて機能する面がある。“ローバウンス=開いて打つ”というイメージとマッチしています」

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ミズノプロ T-1のフェースなど。スクエア感が強いが開いてもよし

●BITING SPIN(ブリヂストン)/Mソール

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BITING SPIN・58度 Mソール バウンス8度

THE 万能ソール

M(MULTI)ソール。トウ&ヒール側が削られていてフェースを開きやすく、シチュエーションに応じて多彩なアプローチを打ち分けやすい。

丸山「ソールの効き具合がオーソドックスで扱いやすく、思いのほかやさしく感じます。ローバウンスで地面に弾かれないけど、刺さったりするミスも出にくい。わりと幅広いアマチュアが打ちやすいと感じるんじゃないでしょうか」

松吉「ソールの幅がしっかりあって“厚み感”は適度にあります。そして、ソールの頂点が後ろのほうにあり、8度よりはバウンスがしっかり使える感じ。もしもソールが当たりすぎると感じたら、後ろ側を削ることもできます」

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BITING SPIN・58度 Mソール バウンス8度

プレースタイルに応じてデザインされた、個性が光るグラインド


●tT(ジューシー)/Sソール

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tT・58度 Sソール バウンス10度

入射角が安定していると心地よい

平らなソールがライへの当たり具合を繊細に伝えてくれる。抜けの良さは抜群。ショットの精度にこだわり、一定したインパクトを求めるゴルファーに適している。

丸山「“入り口”がシャープでバウンスが少なめに感じるので、入射角が安定してソールの平面をしっかりと当てられる人は、ソールの機能を生かして打てます。三日月形状のソールなので、フェースを開いて打ちやすいですね」

松吉「ソールが平らで個性が強く、ジューシーのグラインドの中では最もシビアですが、ソールの平面をしっかり当てたときの気持ち良さがあります。自分に合わせてライ角の調整も必要です。練習量が多い人やいつも同じような球を打ちたい人に」


●tT(ジューシー)/Dソール

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tT・60度 Dソール バウンス10度

すべてが開いて打つために

形状のすべてが、フェースを開くために設計されている。フェースを開いてもバウンスが機能するので、スピンがかかった低い球を打ち出すこともできる。

丸山「ソールを見ると、ヒール側が絞られていてトウ側にかけて末広がりになっています。フェースを開きやすいソール形状だと分かるし、実際にそうやって打ちやすい。バウンスは少なめに見えますが、抜けすぎることはありません」

松吉「トウ側を広くすることで、フェースを開いたときにソールが機能します。一方で“入り口”に面をつけて、開かないときのバウンス効果を持たせました。しかも、ソールの後ろ側までしっかり当たり、開かなくてもスピンがかかるように」

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tTのフェースなど。クセのない顔つき

●tT 2.0(ジューシー)/Gソール

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tT2.0・58度 Gソール バウンス8度

開いても当たり方が変わらない

ワイドソール&ローバウンスでありながらボリューム感を増したソール。悪いライでもソールが働き、やわらかい球など多彩なショットが打てる。

丸山「ソールが幅広で膨らみがあるぶん、ミスの許容範囲があります。ソールがしっかりと使えるけど、打っていて邪魔にならない絶妙なところ。フェースの開きやすさもちゃんとあって、出だしが高い球も打てます」

松吉「ソールのトウ-ヒール側と前後の両方に丸みをつけています。フェースを開かないときと開いたとき、さらにネックを調角しても、ソールの当たり具合が同じような感覚になることを目指して作りました。プロも使うソールです」


●tT 2.0(ジューシー)/Tソール

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tT2.0・58度 Tソール バウンス8度

激スピンのための平らなソール

ツアープロの要望を取り入れてブラッシュアップした。強めのライコンタクトでも抜け感が気持ち良く、ソールがしっかり使えてスピン量が安定して増える。

丸山「ソールの後方が落とされていて接地面が少なく、バウンスの効きも少なめに感じます。ヘッドの入れ方をコントロールできる上級者が、ボールをクリーンにとらえやすい。刃先が突っかかる感じはありません」

松吉「プロユース向けに、平らな方向のソールにしました。ソールの“厚み感”や“頂点の位置”などを工夫して、スピンが最もかかりやすい当たり方をするソール形状に。ヒール側を落としているので、フェースを開くこともできます」

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tT2.0のフェースなど。tTとはブレードの肉厚などが異なる

バウンス角はあくまでも目安。“数字ありき”で選ぶのはキケン

ジャパンブランドのウェッジを打ち終えた丸山プロはこう話す。

「日本メーカーのウェッジは全体的に、モデルごとのグラインドオプションが“外ブラ系”ほど多くはありません。それだけに、一般的なアマチュアがウェッジに求めることの“最大公約数”を集約したようなソール性能になっているのではないでしょうか。だからこそ幅広い人が打ちやすいと感じるでしょう。その上で、プロから『もっとこうしたい』というリクエストがあれば、特別対応をしていく流れですね」

ソールについて解説をした松吉氏が主宰するジューシーのウェッジに「バウンス角」をあえて刻印していない理由を聞いたところ、その答えが示唆に富んでいたので紹介しよう。

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設計家の視点からウェッジを語ってくれた松吉氏

「バウンス角の“数字ありき”で選んでもらいたくないからです。そもそも、バウンス角といっても“どこで測るか”によって違いがあるもの。それから、例えば、18度と刻まれていたら『そんな大きいバウンスは使えない』と敬遠したり、4度と刻まれていたら『それは怖くて打てない』と気後れしてしまったり、数字にネガティブなイメージを持つ人もいます。数字はあくまでもバウンス効果の目安であり、始めに来ないようにしたいということ。その人の打ち方とか目的で選んでいくのが望ましいですね」

【おまけ】ウェッジは何本入れたらいい?

“ロフトピッチ”ではなく“飛距離ピッチ”が肝

ソールの話からは外れるが、ウェッジを選ぶときにどうしても気になるのがロフトのセッティングだ。今はロフトのラインアップが増えていることもあり、どういうフォーメーションを組めばいいのか迷ってしまう。4度ピッチでそろえる? 6度ピッチでもいい?松吉氏はこう語る。

「ウェッジでは、ロフトの“等間隔ピッチ”(4度刻みなど)は一切無視したほうがいいと思います。それよりも重視するのは『○ヤードくらいの距離をどういう球で打ちたいか』であり、それができるかできないかを考えて選ぶこと。

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ザンダー・シャウフェレのウェッジセッティング。PGA選手はPWの下に3本入れるのが多数派で、彼は52度、57度、61度

いずれにしても、アイアンセットの最後の番手=例えばPWがどのくらいの飛距離で、それに対して、フルショットで○ヤードを飛ばせるウェッジ(GW/AW)を一本決める。それで何ができるか・何ができないかを見定めたうえで、全体のフォーメーションを組んでいくといいでしょう。GW/AWではバンカーが打ちにくいので、バンカーで打ちやすいロフトのSWを入れる。そのSWのコントロールショットで打ちにくい距離がある、または、アゴの高いバンカーや砲台グリーンが多いコースによく行くなら、さらにLWを加えてフルショットで打てる距離を増やす、などが考えられます」

ウェッジセッティングに迷ったら、“PWの下”を軸に考えてみよう。

文:新井田聡
取材・編集:中島俊介
取材協力:平川カントリークラブ

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