コブラ「OPTM」を一斉計測 完成度の高い「X」とHSを問わない「MAX-K」 /26ドライバー研究#7
2026年モデルの人気ドライバーを重心データによって解剖する企画。クラブデザイナーでジューシー㈱を主宰する松吉宗之氏にヘッドの計測を依頼して、それぞれのモデルの特性を解き明かしてもらう。7回目はコブラの4モデルだ。
#1 ドライバーのトレンドは“扱いやすさ”へ 「大MOI時代」は終焉か…
#2 「大MOIでやさしい」から「つかまりやすさで飛ばす」時代へ
#3 「Qi4D」を一斉計測 “コアモデル”の調整幅にワクワクする!
#4 「クアンタム」を一斉計測 重心距離「短」傾向で“つかまえて飛ばす”時代に
#5 さすが「ゼクシオ」と「ミズノ」 日本人に寄り添う“重心距離と重心深度の妙”
#6 「G440 K」を丸ハダカに 得意の“大MOI”が扱いやすさを大幅アップ
目標へ真っすぐ打ち出すストレートが打ちやすい「X」
他のメジャーブランドに比べれば、知名度こそ及ばないないかもしれないが「球の強さ」や「飛び」において、コブラはそれらを凌ぐほどの凄みを発揮する実力派だ。最新ドライバーの「OPTM」シリーズは「X」「LS」「MAX-D」「MAX-K」の4モデルを展開する。
松吉氏はかねて、コブラのドライバーについて「モデルごとの違いが重心性能としてハッキリ出ています」と、それぞれのモデルの指向性の高さを評価している。「OPTM」シリーズも然りだ。
「X」はスタンダードモデルならではの“バランスの良さ”が重心データから読み取れるという。
「重心距離(42.8mm)に対して、重心深度(41.2mm)が少し浅いくらいで、性能としてはスピンが抑えられてやや飛び系に。それでも重心距離と重心深度の数値が離れていないし、重心角が大きくありません(22度)。球が過度に左へ行くような動きをせず、フェースがスクエアになりやすい点でバランスが取れています。
しかも『X』は、MOIがほぼ5000g・cm2あり(4996g・cm2)、直進性が高くて、とにかく“真っすぐ打ちやすい”ヘッドです。コブラは10年以上前から、こういうバランスが整ったスタンダードモデルを作り続けているのです」
意図した球でコントロールしやすい「LS」
26年モデルの全体的な傾向と言える“取り回しの良さ”を備えるモデルが「LS」だという。
「重心距離が少し短くて(39.8mm)重心深度が浅め(39.4mm)なので、HSが速めの人が好む取り回しの良さがあるし、2つのデータが近くて素直さ・扱いやすさが維持されています。そして、MOIが小さいわけではありませんが、必要十分なところまで抑えられている(4437g・cm2)。
それによって、打点の違いによるギア効果が少し発生します。フェースの上めに当ててスピンを抑えたり、トウ・ヒール側に当ててドロー・フェードを打ち分けたりも、少しできるようになっています」
前作のロースピンモデル「DS-ADAPT LS」(10.5度)のデータを振り返ると、違いが見られた。前作はヘッド体積が434.9㏄と小ぶりな割に、重心距離が42.0mmとやや長いこともあって球のつかまりが抑えられた。それに比べて「OPTM LS」のつかまり具合はニュートラルということ。しかも「LS」には、コブラ独自の33通りのスリーブポジション(FUTUREFIT33)に加えて、重量違いの3つのウエート(3g、7g、11g)が装着されている。これらを動かすことで自分好みの弾道にカスタマイズできるのだ。そしてライ角は57度と、4モデルの中では最もフラットだ。
「このあたりはおそらくアメリカのトレンドだと思いますが、多くのプロがフラットなドライバーを好む傾向にあります。スイングのイメージが変わって“横振り”のような感じになってくると、フラットなほうが合うのかもしれません」
「MAX-D」は小回りが利いて球をつかまえにいける
前作の「DS-ADAPT」シリーズから、コブラは「MAX-D」と「MAX-K」という“MAX系”の2モデルをラインアップしている。26年モデルの「OPTM」シリーズも同じだ。この2モデルはともに“ドローバイアス”の要素が入ったモデルというが、その中でも「自分でつかまえやすいD、オートマチックにつかまりやすいK」という違いがあると松吉氏は指摘する。そのことについて、2モデルの重心データを見ながら分析した。
「ライ角がアップライト(61.5度)な『MAX-D』は、重心距離が短くて(37.0mm)、ヘッド重量が軽い(194.8g)ので、かなり取り回しがいいヘッドです。しかも、重心距離と重心深度(37.5mm)の数値が近くて、ヘッドの動きが素直。自分でヘッドを操作して戻しやすく、球をつかまえやすいです。このモデルはHSが速いスライサーが打っても、ヘッドを返して球をつかまえにいけるでしょう」
実際に「MAX-D」は、前作に比べて重心距離が少し短くなっている(39.9mm→37.0mm)。昔ながらの感覚でヘッドをターンして球をつかまえて、ドローを打ちやすいモデルだ。
スイートエリアが広い「MAX-K」はオートマチックにつかまる
その「MAX-D」と「MAX-K」は“似て非なるもの”というイメージだ。
「『MAX-K』は重心距離が長くて(42.7mm)、重心深度が深い(45.5mm)ので、MOIがかなり大きくて(5542g・cm2)、ミスヒットの寛容性が高く打点のバラつきをカバーしてくれます。それだけに取り回しがいいヘッドではありませんが、重心が深くて重心角が大きい(28.8度)ので、自分の感覚は入れられないけれど、クラブに任せてオートマチックに球がつかまって上がります。考えようによっては、本来はこれが他のメーカーで謳っている“ドローバイアス”になるのかもしれません」
前作(DS ADAPT MAX-K)もMOIが極大でスイートエリアが広かったが、真っすぐに打ちやすい性能だった。それだけにHSが速くて打点がバラつく人に好まれるようなモデルと分析していたという。しかし「OPTM MAX-K」は同じ“お任せタイプ”でも、球がつかまるようになった。
「HSが遅めの人でも球が勝手につかまる、アマチュアにとってやさしいヘッドです。『MAX-K』のターゲットには、こちらのほうが喜ばれるのではないでしょうか。もちろん、大MOIヘッドを好むハードヒッターも使えます」
プロはどれを使っている?
性格の異なる4モデルを揃えるOPTMだが、プロはどれを選んでいるのだろうか。コブラ公式サイトには主な選手の使用モデルが次のように記載されている(OPTM使用者から抜粋)。
リッキー・ファウラー:OPTM X
マックス・ホマ:OPTM X
ゲーリー・ウッドランド:OPTM MAX-K
ジェイソン・ダフナー:OPTM MAX-K
他メーカーと比べると、「LS」の使用者がほぼいない。また、特異なポジションにある「MAX-K」を選ぶ選手もいる。このあたりを松吉氏に考察してもらおう。
「測定結果だけを見ると、『X』と『LS』では重心位置が及ぼす弾道特性は大きく変わらず、『LS』の方が明らかに低スピンになりやすいとは言えない感じです。では『LS』の特性は何かというと、重心高2のエリアに当てることで低スピン化を狙うような、打点コントロールで弾道を打ち分けたい人向けのようです。
一方『X』は重心特性のバランスがとても良く、慣性モーメントも割と大きいので、センターヒットでロフトを立てながら強振する最近のスイングには『LS』よりも相性が良いと思われます」
ファウラーやホマなど、確かに今っぽいスイングの選手が『X』を使っている。そして気になる『MAX-K』は?
「前作『DS ADAPT MAX-K』には特異な優秀さがありました。大MOIながらフェースが真っすぐ戻りやすいので、これを好むプロがいても何ら不思議はありません。今回の『MAX-K』は前作から少しだけつかまりやすくなっていますが、それでも他社のMAX系と比べると素直な性能で、『X』同様ロフトを立てながら強振するにも良いクラブだと思います」
球を真っすぐ打ちやすいスタンダードモデルの「X」があり、打点で弾道を打ち分けたい人が好む「LS」がある。さらに“つかまる”をひと括りにせず、ゴルファーのタイプに合わせてすみ分けした「MAX-D」と「MAX-K」の2モデルがある。加えて、33通りのスリーブポジションを持つ「FUTUREFIT33」という複雑高度化された機能を擁した「OPTM」シリーズのきめ細やかで多様なモデル展開とアジャスタブル機能は、まさにゴルファー目線に立ってできたもの。あなたにとってドンピシャな1本がここにあるかもしれない。
文:新井田聡
クラブ写真:小林司
取材・編集:中島俊介
■ 松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール
ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。