タイガーも唸らせたプロ御用達シャフトの20年
日本ツアーはもとより、海外ツアーでも多くのプロが使用している三菱ケミカルのゴルフシャフト。世界最高峰の舞台PGAツアーでは、これまで何度もシーズン最多勝を獲得し、メジャー大会の舞台でも多くのプレーヤーがそのシャフトを手に戦ってきたのは周知の事実だ。
そんな三菱ケミカルのフラッグシップブランド「ディアマナ」が、2004年の誕生から20年を迎えた。炭素繊維メーカーである同社(当時三菱レイヨン)がカーボンシャフトの原料となるプリプレグ(未硬化状態の樹脂を含ませた繊維シート)の生産を開始したのは1976年で、シャフトの製造をスタートさせたのは翌77年からだった。
初期はゴルフ業界の黒子的な立ち位置
「当初は、炭素繊維という材料の用途展開の一環としてカーボンシャフトをつくっていました。事業として始めたというより、炭素繊維の用途にどんな可能性があるのかをアピールする目的がありました」。そう語るのはシャフト事業部開発部長の金子崇(敬称略、以下同)。
あらゆるカーボン製品を試験的に製造してマーケティングを行った結果、同社はゴルフシャフトの分野に需要があると判断。81年からゴルフシャフト事業を本格展開していく。ただし、当時は各クラブメーカーのOEMシャフト(純正シャフト)がメインで、業界ではまだ黒子的な存在だった。
転機が訪れたのは90年代後半。ゴルフ市場が第2次リシャフトブームで盛り上がりを見せていた頃だ。
「ツアー現場や販売店から『ブランドシャフトを始めてほしい』という声が大きくなりました。そのため、2000年頃からオリジナルシャフトのプロジェクトをスタートさせました」(金子)
プロが求めるフィーリングを具現化した1作目
02年からツアー現場にサポートスタッフを派遣し、選手の声に耳を傾けながらプロトタイプの開発を開始。そして、04年に1作目となる「ディアマナ スティンガー」が誕生した。
「ディアマナ スティンガー」の開発にも関わっているという開発部副部長の渥美哲也(敬称略、以下同)はこう語る。
「当時は硬いシャフトが求められていましたが、『ボロン』という素材をシャフト全長に採用し、選手が求めるフィーリングを具現化しました。使用プロからの評判は良く、試験的に限定発売したところ、市場の反応も上々でした」
1作目で成功を収めた同社は、同年に「ディアマナ第1世代」と呼ばれる3モデルを順次発売していった。