愛用8年 久保谷健一がレーザー距離計で覗いたゴルフの変化
最新モデルの見やすさを実感し乗り換えを宣言
かつてのツアーでは、数ヤードどころではなく、大幅に距離を間違えるミスも時々起きていたという。「歩測した分を足すべきところを引いてしまったり、逆に多く足してしまうこともありました。強烈な打ち上げだったりすると、100ヤードの目印を150ヤードと勘違いするなんてパターンだってあります。見た目での距離が分かりづらくて気付かないんです。池越えのグリーンを狙ったのに、ボールが池の手前に落ちたこともありました」。レーザー距離計がある今となっては遠い昔の笑い話だ。
久保谷が初めてレーザー距離計を購入したのは8年前。「量販店で購入したのですが、まだそれほどいろいろな機種が並んでいませんでした。ニコンならカメラで有名だから大丈夫だろうと思い、また試合では高低差を計測するモデルが使えないので、距離だけを測れるシンプルなモデルを選びました」。初めて手にしたレーザー距離計は2015年発売の『COOLSHOT 40』。「長く使えば使うほど、愛着や信頼感がわきました」と、ほかのモデルに変えることなく長年愛用していた。
最新機種となる『COOLSHOT PRO II STABILIZED』を手に取ると「自分が使ってきたモデルに愛着はありましたが、新しいモデルの方が画面の見え方が好きです。距離表示が赤く出て見やすいし、手ブレ補正機能はピンにレーザーを当てやすくなるから、やっぱり便利です」。最新モデルの良さを実感すると「これは使わないわけにはいかないな」と乗り換えを宣言した。
全英オープンのフラットなコースは「距離感が狂う」
レーザー距離計が必須になるゴルフ場について久保谷は、強烈な打ち上げとは反対に、河川敷のような平坦なコースも見た目での距離感が分かりづらいと話す。「周囲に木がなく、ピンだけが立っているようなコースだと、ひたすら遠くに感じます。例えば『全英オープン』のコースがまさにそのような感じです。しかも日本や米国に比べてピンが短かったりするので、余計に距離感が狂います」
久保谷は2009年の全英オープンでトム・ワトソンらと並んで初日2位タイの好発進。「2日目には一時首位にも立っているはずです。そのあと落ちてしまうのですが(笑)」。当時59歳のワトソンはプレーオフで敗れ2位。久保谷の最終成績は27位タイだった。会場のターンベリーは「ウェアウェイが右に傾斜しているホールが多く、フェアウェイに落ちたボールがラフまで転がってしまうほどでした。ワトソンは低いドローで攻めたのでフェアウェイをキープしていました。ボクも結構フェアウェイに止められたので、戦えたんだと思います」。距離が分かりづらいリンクスコースだったが、久保谷にとっては思い出深いコースの1つになっている。
米国の景色を攻略し活躍する日本人の飛躍を
一方、米国では今年の「全米女子オープン」の会場にもなったペブルビーチのコースが印象深いと話す。「アマチュアの方に『海外の名門コースを回るならどのコース? 』と質問されると、大体ペブルビーチと答えています。試合ではいいので、自分もプライベートで行きたいですね(笑)」。これからはコース自体を楽しみたいそうだ。
久保谷は日米のコースの違いは「景色」にあると考えている。「米国のコースは池が多く、その景色に圧倒されます。それに怯えると、日本人は力を発揮できないんです。米国の選手は当たり前で慣れているから、普通にドライバーを振り抜いて、どんどん攻める。これはもう経験するしかないです」。ペブルビーチの場合は池ではなく海なのだが、景色に圧倒されることは同じだ。
「目から入ってくる情報に負けなければ、日本人選手も米ツアーでもっと活躍できる。若手が早くから米ツアーに行き、米国の景色に慣れれば、その中から松山英樹を超える選手も出てくるのではと思っています」。自分の話とは違い、若手選手たちの活躍にはボヤキを封印して期待を込める。久保谷にとって、レーザー距離計が当たり前の新世代が、日本のゴルフ界の歴史を塗り替えるような活躍を見せてくれることを信じている。