“ピン”ポイントでロックオン! ゴルフ用究極レーザー距離計のザ・ヒストリー
独自技術として手ブレ補正機能向上の取り組み
主要メンバーの1人となるニコンビジョン設計部第二設計課長の大室仁は全体をまとめるプロデューサー的な立場だ。開発陣の中で一番のゴルフ好き。ゴルファー視点のアドバイスを送るのが大室の大事な役割となっている。「ファインダーを覗いたときにどう映るのか、ゴルファーとしての使いやすさと同時に、光学機器メーカーとして“見え”にもこだわっています」。距離計測をしなければ、6倍の望遠鏡にもなる。トーナメント会場では、望遠鏡として使っているギャラリーも頻繁に目にする。
画面内の“見え”は、明るさはもちろん、手ブレによる表示のブレをいかに低減させるかが重要になる。防振無しの距離計は、両手でしっかりと固定して測定しないと、手ブレの影響で表示がブレて、なかなか目標物を捉えられない。そこで、ゴルフのプレー中にもストレスなく測定ができるように、片手でもラクに測定できるよう、手ブレ補正機能の高精度化を中心に開発を行ってきた。
カメラの技術を、より距離計独自の技術として性能の向上に取り組み、妥協せず表示画面の“見え”を工夫することが、ユーザーに寄り添った開発としてのこだわりでもあった。
防水性能の高さも品質へのこだわりの結晶
「COOLSHOT」の品質の高さを実現させているのがメカ系の開発を担当する臼木だ。「レーザー距離計として防水性能の高さも必要な要素だという意見がありました。そのため、水に沈めても浸水しない程度の防水性能を持たせています。ただ、実際のレーザー距離計は本体の気密性が高く、内部に空間があるため水に浮いてしまいます」
防水性を試す試験では、本体が水に浮いてしまうため、わざわざ重りをつけて実際に水に沈めたりもしている。「もしユーザーの方が誤って池に落としても、よく乾かしてから使用すれば、距離計はまだ使えると思います。ですが、それを取りに行くのは危ないので気を付けていただきたいです(笑)」。こんなところからも、ニコンの品質へのこだわりや企業としての姿勢が伝わってくる。
目指してきたのは現時点で“究極のレーザー距離計”
今後、レーザー距離計はどんな形で進化していくのか。
マーケティング部商品戦略課の滝沢綾子はマーケティングの観点から「手ブレ補正がない機種を使っていた方には、手ブレ補正の良さをすぐに理解していただけます。ですが、初めて距離計を使用した方からは、手ブレ補正機能がついていても『なかなかピンに当たらない』という反応も返ってきます。『誰でも簡単に測れる』がこれからの課題ではないでしょうか」と話す。
一方、臼木は10年単位の未来を見据えて、こんな進化を予測する。「スマートフォンのような端末で景色を映せば、ピンや池、バンカーなど画面にそれぞれの距離が表示されるのが究極じゃないでしょうか」。技術者がこうして想像するものは、いつか必ず実現するものだと思っていいだろう。
未来の距離計がどこまで進化していくのかは分からない。しかし、手ブレ補正に代表される使いやすさ、耐久性など、ニコンビジョンが目指してきたのは現時点で“究極のレーザー距離計”。その小さなボディには100年を超えるニコンの光学機器メーカーとしての伝統、そして現在の開発陣の創意工夫と熱意が込められている。