シャフト開発の極意は「固定概念を捨てる」こと プライベートでも貫く開発者の信念
100人に100種類のベストなカーボンシャフトを
一方、カーボンシャフトは素材だけでも100種類以上に上る。それらを組み合わせることで、どのような性能にも調整できるそうだ。
「カーボンシャフトの開発は、行き着く先がまったく見えないですね。開発の難しさの種類がまったく違うんです」
こうした開発の過程において、固定概念を持たない藤原の考えは、“いいシャフトという正解を決めないこと”だという。
「本来は100人いれば、その人たちにベストな100種類のシャフトがあるはずなんです。企業としては、それらすべてを製品として提供することはできませんが、私としては、そのポリシーを持って、開発を続けていくしかありません」
日本シャフトは旧作モデルをほとんど廃盤にしていない。それが合う人は必ずいる、正解はひとつではないという考えが、企業姿勢と一致しているのだ。
先入観を抜いていろいろ試して欲しい
藤原はユーザーにも固定概念を捨てることをすすめる。
「米ツアーのプロはとにかく一度打ってみて、ダメならダメと言うし、気に入れば、スペックを聞いてきます。一方で日本のプロは、スペックや今使っているものとどこが違うのかを聞いて納得しないと打ってくれません。決まった範囲の中に絞って、試す傾向がありますね」
プロの場合はどちらが良いとは言い切れないが、アマチュアはこの傾向がさらに顕著になるそうだ。
「『自分は(硬さが)SRのシャフトしか打たないんだよね』と言われると、心の中で『SRといっても全部違うのに……』と思ってしまいます。固定概念を捨てて、いろいろなものを打ってほしいんですけどね」
空腹を捨てるという発想にはとてもついていけそうにないが、様々なシャフトやクラブを試してみることは誰にでもできる。藤原が生み出したシャフトを先入観抜きに試してみれば、意外なところから自分にぴったりの一本が見つかるかもしれない。