米国仕様との違いは? 日本向けにこだわる「グローレ」開発秘話
2作目にカーボンフェースを初採用
初代の発売から数カ月後の12年末には、現在の「ステルス」シリーズにつながるカーボンフェースを初搭載した「グローレ リザーブ」が数量限定で登場する。「リザーブは初代の後継モデルではなかったのですが、2年間モデルチェンジをしないはずではなかったのか? という反応を見越したうえで、良いものを早くお届けしたいとの思いから発売に踏み切りました」
チタンに比べて圧倒的に軽いカーボンの採用により、フェースサイズをルール限界まで大型化することでスイートエリアを拡大。ティアップを高くしなければならないため、購入者にロングティを配るほどだった。「今とはカーボンフェースを使用する狙いは違うのですが、一歩、二歩ではなく、大幅に時代を先取りしたモデルだったと思います」。カーボンフェースは2代目グローレ(13年)にも採用された。
グローバルモデルとの差別化
シリーズは3代目となる「グローレG」(15年)と、アスリート志向のゴルファーもターゲットに含めた「グローレF」(14年)、「グローレF2」(16年)という2つのラインに枝分かれするのだが、ここで意外なところからライバルが現れる。同社として初のカーボンクラウンを採用したグローバルモデル「M」シリーズ(16年~)だ。
「カーボンクラウンの採用によって低・深重心を同時に達成できたことにより、16年発売の『M1』『M2』からグローバルモデルが一気にやさしくなりました。さらに18年の『M3』『M4』からは、ミスヒット時の曲がり幅を軽減する『ツイストフェース』の採用によってやさしさが増したことで、『グローレ』シリーズとの距離感が近くなりました」
グローバルモデルがやさしさを高めたことで再び一本化されることとなったグローレだが、その後もヒットを連発した。他の海外メーカーの日本向けブランドがひとつ、またひとつと消えていくなか、カーボンクラウン、ツイストフェースというMシリーズの機能を受け継ぎつつ、鍛造チタンフェースを採用した「Mグローレ」(18年)。後継のグローバルモデル「SIM」シリーズのテクノロジーにさらなるやさしさを加えた「SIMグローレ」(20年)がいずれも人気モデルとなった。
すべては日本のゴルファーのために
そして、22年に発売された最新モデル「ステルス グローレ」では、10年前から大きく進化したカーボンツイストフェースを採用。クラウン、フェース、ソールの各パーツを軽量アルミフレームでつなげるフォージドミルドアルミニウム構造によって高い寛容性と安定性を備える。
「テーラーメイドでは20年前から、チタンを中心としたメタルヘッドの開発チームとカーボンヘッドの開発チームが独立して活動を続けてきました。メタルチームの最新モデルがSIM2、カーボンチームの最新モデルが『ステルス』だとすれば、ステルスグローレは2つのチームが開発してきた機能を初めて1つのヘッドに詰め込んだモデルになります」
初代モデルのリリース当時に掲げられた、“やさしく遠くに飛ばしたい日本のゴルファーのために”という開発コンセプト。継承され続ける基本理念はそのままに、ゴルフクラブがどのような進化を遂げるのか少し先の未来を見せてくれるシリーズとして、10年前と変わらずに一歩先を歩み続けている。