高慣性モーメントが“ぶっ飛び”をもたらすメカニズム
「慣性モーメント」という言葉がゴルフ界でこれまで以上に脚光を浴びている。単位は「g・cm2」。数字が大きくなればなるほど、物体が回転しづらくなることを表す。ゴルフクラブに当てはめれば、インパクト時のヘッドがブレにくいことの指標であり、つまり「寛容性=やさしさ」の基準となっている。
テーラーメイド「Qi10 MAX ドライバー」は「飛距離を犠牲にせず 究極のやさしさ」を目指した最新モデル。フェースの上下方向、左右方向の慣性モーメントが合算値で10,000g・cm2を突破したことで、ゴルファーは今、「飛距離を犠牲にせず 究極のやさしさ」を手に入れる新たな扉の前に立っている。
過去最高の寛容性を持つドライバーが誕生
多くのツアープロが使用するテーラーメイドは、「飛距離性能が高いクラブ」というイメージを持っている一般ゴルファーが多いだろう。一方で「やさしさ」についてはどうだろうか?
新たにリリースされた「Qi10」シリーズは、3機種(そのほかにレディスモデルが1機種)のドライバーがラインアップされた。その中でも今回は、10,000g・cm2を達成した最も寛容な「Qi10 MAX ドライバー」を看板モデルとして前面に押し出している。
なぜ今、高慣性モーメントに着目したのか。テーラーメイドのハードグッズプロダクトディレクターである高橋伸忠(敬称略、以下同)は「慣性モーメントにはこれまでも注目してきましたが、10,000g・cm2超えを達成したのが、今回だったということです。今までとは違う重量設計、ヘッド形状の開発に取り組んだことで慣性モーメント値が跳ね上がり、過去最高の寛容性を持つドライバーを生み出しました」と解説する。一朝一夕で実現したわけではなく、長年の開発の積み重ねが大台突破に繋がったのだ。
上下方向の慣性モーメントが与える恩恵
ひとつ気になるポイントが、左右方向に加えて、上下方向の慣性モーメント値が大きくなったという点だ。ゴルファーの間ではよく知られているフェースの反発係数のSLEルール(反発係数の上限が0.830までとされる)と同様に、左右方向の慣性モーメント値は5900g・cm2までという上限値が定められている。
この慣性モーメント値の大きさがフックやスライスなど、ショットの左右のブレに直結することは誰でも想像しやすい。だが、上下方向の慣性モーメントがショットに与える影響はイメージがしづらいだろう。
これについて高橋は「ゴルファーがスイートスポットを外すのは横方向だけではありません。上下に芯を外すことで、球が上がらなかったり、逆にふけてしまったりと飛距離が変わってしまうことは分かると思います。それに対し、上下方向の慣性モーメントを高めることは、ヘッドが縦方向にブレないことでキャリーや総飛距離のロスを抑えることに繋がるのです」と話す。