高慣性モーメントが“ぶっ飛び”をもたらすメカニズム
ミスがミスでなくなるインパクトに
実際に上下それぞれにスイートスポットを外したケースを想定しよう。下にボールが当たった場合、フェースが下を向き、打ち出しは低くなり、スピン量が増えてボールは失速してしまう。この場合、慣性モーメントが大きくなれば、フェースが下を向く度合いが抑えられ、スピンも増えすぎないため、まったく違った弾道になる。
反対にスイートスポットよりも上でとらえた場合はどうか。「一時期は有効打点距離という言葉がもてはやされて、芯の少し上で打つとロースピンで飛距離が出るということも話題になりました。しかし、芯を外しているので、言ってみればこれもミスなんです。ただ、インパクト時のヘッドの動きが抑えられることで、ミスをミスと感じなくさせるには、上下方向の慣性モーメントを高めることが大事になります」
ゴルファーの感触という点からも、結果という点からも、ミスがミスでなくなるというわけだ。
カーボンフェースだから成し得た性能の両立
ここまで高慣性モーメントのメリットを挙げてきたが、実はデメリットもある。「慣性モーメントが大きいということはヘッドが回転しづらいということです。テークバックでクラブは必ず開くので、ダウンスイングでは開いたまま下りてきて、そのままインパクトを迎えると右に弱々しい球が飛び出してしまう。これが弱点でした」
本来であれば、飛距離性能と高慣性モーメントは両立しづらいものであることは、どのメーカーも認識する常識だった。しかし、その相反する性能を高次元で成り立たせたのが、今作で3代目となった60層ツイストカーボンフェースの存在だ。
チタンなどの金属製フェースでは1g、2gの余剰重量を生み出すために躍起になって開発が行われていた。しかし、テーラーメイドが生み出したカーボンフェースは、採用したことで得られる余剰重量が約20g。「ヘッドの重量は200g弱です。その中での20gですから、次元の違う話です。設計の自由度が高まったからこそ、高慣性モーメントでもフェースが戻ってくる重心設計を可能にさせ、飛距離を犠牲にしないドライバーが作れるのです」
「飛距離を犠牲にせず 究極のやさしさ」と過去から培われてきた飛距離性能を、高次元で実現させるテクノロジーを詰めこんだことが「Qi10」シリーズの進化したポイントなのだ。