インプレス ドライブスター TYPE/S ドライバーを筒康博が試打「RMXに近づいた名器候補」
全方位ミス打点に強い8軸カーボンフェース ご意見番クラブフィッターの評価は!?
カーボンフェースドライバーの常識を覆(くつがえ)すべく、8枚のカーボンを向きを変えて重ねたヤマハ「インプレス ドライブスター」シリーズ。約9000g・cm2の縦横合計慣性モーメント値を実現し、全方位の打点ブレに強さを発揮するという。そんな新シリーズのスタンダードモデル『TYPE/S』を、ドローモデル『TYPE/D』と比べながら、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博が試打評価を行った。
「近い将来の名器候補 ヤマハカーボンフェースは今後も続く(?)」
―率直な印象は?
「これまでの同シリーズはボールが上げやすく、つかまりやすいモデルで、対象は私くらいのHS(平均41.9m/s)からそれ以下がメインでした。ですが、今作『TYPE/S』はそれ以上に速い人でも飛ばせる可能性を秘めた性能に生まれ変わっています。総重量は軽く(純正SPEEDER NX for YAMAHA M-425D/硬さSで総重量289g)ボールは上がるし、つかまる感じは継続されているのですが、しっかりめのカスタムシャフトを挿し替えればHSの速いゴルファーでも十分対応できる。軽量だから単にスピードが出るだけのモデルではない、ヘッド自体の性能の高さを実感できるシリーズに仕上がっています」
―性能の高さはどこで感じる?
「重心角は大きすぎず、重心もすごく深いわけでもないのに、程よくボールが上げられて気持ちよく飛ばせるところです。カーボンフェースを使うことでヘッド前方に生まれた余剰重量を後方に配し、深すぎないドローバイアス設計となっています。打ち出し角がやや足りないプレーヤーに打ってつけ。見た目は前作22年発売モデルに比べてFP(フェースプログレッション:シャフト軸線からリーディングエッジまでの距離)値が大きく、だいぶフェース面が前に出ていて、顔がスッキリして『RMX』シリーズに近づいた印象。近い将来に名器と呼ばれる可能性の高いモデルといえます」
―気になるカーボンフェースの打感は?
「しっかりフェース面でボールを押し出す反発力が強い半面、打感のやわらかさもしっかり伝わります。一度フェースが潰れるというか、トランポリンのように一瞬たわみながら、打感のやわらかさを実感できる。打音も中音で落ち着いた音域が好印象。テーラーメイドのカーボンフェースと比べても引けを取らず、振り心地は『Qi10 MAX LITE ドライバー』に近い。見た目は『Qi10 ドライバー』に類似していますが、クラブとして全体が軽く、少しドローバイアスが入っている点で『MAX LITE』寄りに感じました。同社『RMX』シリーズも、次作はカーボンフェースになるのでは? と予想してしまいたくなるほど、同社初のカーボンフェース採用とは思えないレベルの高さです」
―兄弟モデル「TYPE/D」と比べると?
「『TYPE/D』は単にドロー弾道というより、高さのあるハイドロー弾道が出やすいモデルで、他社でいう『MAX』ポジションに値します。『TYPE/S』も若干のドローバイアスはありますが限りなくストレートに近いので、現在他社モデルを使っている方が手に取っても、構えづらいとは感じないでしょう。キャリーが安定していて、ミスヒットしてもボールがお辞儀したり、右に抜けたり、逆に巻き込みすぎることはない。非常に左右のバラつきが少ない。同社の得意とする慣性モーメント値の高さをちゃんと実感できる両モデルとなっています」
―あえて気になるマイナス点は?
「ヘッド性能の高さを感じる分、カチャカチャ機能のない“直付け”ヘッドなところが唯一気になります。他社モデルと比較するときに、同じシャフトで打ち比べたり、購入後のリシャフトが大変なところがマイナスポイント。リシャフトして使いたいと思っても、すぐに試すことができないところがもったいない。途中でスリーブを抜いたり別に付ける必要が出てきてしまうので、購入する段階からしっかりカスタムオーダーする必要がある。チタン製より耐久性の低いカーボンクラウン&フェースのため、工房で抜き挿ししてもらうのも少し心配という点も気になる要素です」
―どのような人向き?
「つかまった程よいドローで、左の引っかけやチーピンといった左のミスを嫌う人向け。高さと初速で方向性を出したいプレーヤー向けになると思います。中音とマイルドな打感を好む中級ベテランゴルファー向きといえるのではないでしょうか。特にシニア層で昔しっかりしたゲンコツ型ヘッドを使っていて、現在は体力が落ちて軽量モデルを探している人。だけど顔立ちは妥協できず、いいルックスを求めている人。パワーには自信がないけれど、ドローとフェードを打ち分けたい人など。気持ちはアスリートのまま年齢を重ねたゴルファーに、ぜひ一度打ってみていただきたいです」
飛距離&打感◎満点のハイスコア! カチャカチャだったなら…【総合評価4.7点】
【飛距離】5.0
【打 感】5.0
【寛容性】4.5
【操作性】4.5
【構えやすさ】4.5
・ロフト角:10.5度
・使用シャフト:SPEEDER NX for YAMAHA M-425D(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋
■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。