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正直、毎年は早すぎない!? モデルチェンジの早さについてテーラーメイドに本音を聞いた

毎年革新的なモデルを展開するテーラーメイドから、上下左右の慣性モーメント値1万超えを果たした「Qi10」シリーズが発表された。2020年に空気抵抗に着目した「SIM」、22年にカーボンウッドの新時代を提唱した「ステルス」と、1年ごとのマイナーチェンジと2年ごとのフルモデルチェンジを繰り返してきた。正直、目まぐるしさを感じるゴルファーも少なくないのでは…。そこで同社ハードグッズプロダクトディレクター・高橋伸忠氏に本音を聞いた。

今作は買わずに「情報のみでワクワクするだけ」でもいい

「正直、1年ごとって早すぎませんか?」

この質問に、高橋氏は「モデルチェンジと買い替えのタイミングは、決してイコールではなくていいと思っています」と切り出す。「サイクルが早すぎる」という否定的な声は認識しており、もちろん毎年の買い替えはうれしいものの、必ずしもそれを強要しているわけではないという。

「毎年、使ってみたい、打ってみたいと思わせるようにマーケティングを展開していますが、決してその都度の買い替えを促しているわけではありません。今年はしんどいので、2、3年おきに替えたいという声も存在することは当然。情報のみのインプットと、実際の購入サイクルは分けて考えても良いでしょう。今年は情報だけでワクワクできればいいと思ってもらえることも、有益な提案と考えています」

2年ごとでは正直遅い ゴルフ市場の活性化が目的

製品の展開サイクルは各業態でまちまち。モデルチェンジが大きく報じられるクルマ業界でも2~4年でのマイナーチェンジ、フルモデルチェンジは4~10年ごとに行われることが一般的だ。ゴルフ業界も、5年ほど前までは2年周期が常識とされ、今でも数では1年ごとより2年ごとの周期をとるメーカーのほうが多い。

1年ごとでは十分にブランドが認知されぬまま、移行してしまうことも危惧される。だが、そんな心配をよそに「2年ごとではつまらないじゃないですか」と笑顔を見せる高橋氏。「1年に一度、物欲をくすぐられるモデルが出ることで、ゴルファーのモチベーションをキープさせたい。とにかくワクワクさせ続け、ゴルフ場に行こうという気持ちを持続させることが目的です」。情報過多の昨今では、2年ごとでは埋もれてしまう。1年ごとのスピード感こそ現代人には適度と判断しているわけだ。

「毎年出す根拠として、市場全体に活気をもたらす狙いもあります。売り上げが思うようにいかないときは、申し訳ない気持ちにもなる。ゴルフ業界を引っ張る立場としての責任感は常に持っています」

「大変ですよ…。次どうする? もうないでしょ? と聞かれます(笑)」

「SIM」「ステルス」と、2モデルごとに刷新してきた同社。「Qi10」が出たばかりで気が早すぎるが、正直ここまで目まぐるしいと次作のアイデアを出すことが大変では? と聞くと、「はい。大変ですよ」と素直に認めた。

「いろいろな方面から、次どうする? もうないでしょ? と聞かれますよ(笑)。それでも弊社は“BEYOND DRIVEN(ビヨンド・ドリブン)”、限界の向こう側を見据えるというコンセプトを掲げ、設定したゴールに近づくと、すぐにその次を見始める。次、次と来た時点で、もうその次のことを考え出す。これまでも、スピードとFOR GIVENESS(やさしさ)を同時進行で作ることが難しく、『SIM』も『ステルス』も初代ではスピードを重視し、やさしさを少し犠牲にしていました。両シリーズとも、次作『―2』は逆にやさしさをカバーする方向に。過去モデルが生まれた時点で、すでにその両方を併せ持つ今作『Qi10』の開発は始まっていました」

24年の最新モデル『Qi10』では上下左右の慣性モーメント値に着目し、『Qi10 MAX ドライバー』は、同社史上初となる1万g・cm2の目標を達成。「“1万”という数字は我々の夢でした」。高橋氏は最後に、今作の特徴についても触れた。

「そもそも慣性モーメントとは、物体が一定の動きを継続しようとする力のこと。スイング中、クラブを下ろしてくる段階でフェースが開いてしまうと、戻すことは非常に困難になります。その半面、アジャストできれば多少のミスを起こしても、最後までブレにくくなる。そんな高慣性モーメントヘッドの長所を生かすために、カーボン使用率を最大限に高め、フェースを開かずに下ろしやすくする設計を目指しました。スピードを落とさず、寛容性を最大限に発揮できるヘッドを作り上げたつもりです」

“BEYOND DRIVEN”――限界を作らず、常に前を見続けるテーラーメイド。高橋氏の熱意のこもった話を聞くと、1年ごとのサイクルでも追いつかないほどの速さで進化する同社の開発力の高さを感じる。今年は買い? それとも待ち? 確かに悩むだけでもワクワクしてくる。(編集部・内田)

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