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ウェッジ何本が正解?「54度」が人気ってホント!?/女子プロクラブ考VOL.9

2024/03/28 11:00
鈴木愛はピンの新作「S159」にスイッチ

女子プロたちがどんなクラブを使い、さらにどんなスペックかは、同じヘッドスピード帯の我々(男子アマ)のクラブ選びに大いに参考になる。定期的に行うクラブ調査で採取した膨大なデータを元に、女子プロのクラブの傾向をギアマニアが分析・検証していく。9回目はウェッジのロフトピッチについて。

2本体制は意外と少数派?イマドキの女子プロウェッジ本数

アマチュアゴルファーでは 2本派が圧倒的に多い印象だが、女子プロでの2本派は今回調査した40人中8人と少数。最多本数は原英莉花の4本(45、49、55、58度)で、アイアンセットが 6~9番までとなっており、ピッチングウェッジ(以下PW)の代わりに 45度を入れている。米男子ツアーでよく見られるセッティングだ。高い技術が必要だが、スピンを微細にコントロールすることで、イメージ通りにグリーンを狙える。同じロフト角の場合ウェッジ形状のほうがスピン量が増える構造のため、アイアンセットのPWより飛距離が落ちることをお忘れなく。

40人中31人がウェッジ 3 本体制 その背景は

今回調査した40人中31人と約8割の選手がウェッジ3本体制をとっていた。女子プロのウェッジが1本増えた背景にあるのはアイアンセットのストロングロフト化、つまりロフト角が立ってきている背景が大きい。以前は48度前後だったPWは、44度や46度が主流となってきた。PWの次のいわゆるアプローチウェッジ(以下AW) が52度とすると、その差6~8度と、番手間のロフトが大きく開いてしまう。そのため、PWとAWの間にもう1本ウェッジを入れる選手が増えているのだ。

飛び系「T350」を使う菊地絵理香は「ボーケイ SM10 」(46、52、58度)を使用

PWとAWの間の番手に「46度」を入れているのは、テーラーメイド 「STEALTH GLOIRE アイアン」(PW41度)を使う金田久美子とタイトリスト「T350 アイアン」(PW43度)を使う菊地絵理香ら“飛び系”アイアンユーザー。「48度」のウェッジを使うのは、7番アイアンのロフト角が30度のミズノ「JPX 923 FORGED」(PW44度)を使う西郷真央、7番が30.5度のテーラーメイド「P790」(PW45度)を使う山内日菜子ら13人。そして、PWのロフト角が45度と大きめのピン「i230」を使う佐久間朱莉渋野日向子は、次の番手に「50度」を選択している。

間を埋めるロフト角に差はあれど、スコアメークにつながる100yd前後の距離を微細にコントロールできるよう、番手間のロフト差が大きくなり過ぎないようにしているのは共通。「50度」を選択する選手がいるのも、ロフトが立ったアイアンを使う女子ツアーならではの傾向だろう。

「54度」のウェッジが意外と多い

PWとAWの間に1本入れるのがトレンドだが、その流れからか「54度」前後を入れる選手が多いことに気づく。セキ・ユウティン(50、54、58 度)、上田桃子(50、54、60 度)ら、54度を使うのが40人中17人。前後の53、55度を含めると20名が使用している。

勝みなみはクリーブランド「RTX 6 ZIPCORE」(50、54、58度)を使用

ツアーのセッティングも厳しくなり、ピンも左右に極端に振られることで、傾斜の強いエリアにカップを切ることも増えている。以前よりも細かいスピンコントロールが要求される中で、ウェッジを1本増やす選手が増えているのだろう。54度を入れることでアプローチの幅が広がるはずだ。

使ってみるとわかるが、なかなか使い勝手が良い54度のウェッジ。58度を使わなくても54度でほとんど用が足りてしまう。ロフト角が小さい分ミスが出にくく、バンカーからも飛距離が出しやすいため脱出も容易。アマチュアがプレーするコースセッティングだと、54度までで十分では?と思うほどオススメなロフト角。筆者も使っているが、58度のウェッジはよっぽどのトラブルショット以外では使用しなくなる。ぜひ試してほしい。

地クラブメーカーも活躍中

「Grind Studio」(左)、「ゾディア」(右上)、「MOZ ウェッジ」(右下)

ウッド系やアイアンセットは大手メーカーを使う選手がほとんどだが、ウェッジはパーツメーカー、いわゆる“地クラブ”を選んでいる選手も少なくない。著名なウェッジ名人が手掛けたモノがほとんど。都丸和寛氏が削る「Grind Studio」(青木瀬令奈穴井詩)、田淵正敏氏が削るFUSODREAM の「BUCHI」(植竹希望)、松吉宗之氏が手掛ける「ジューシー」(堀琴音)、剣持ゴルフが作った「MOZ ウェッジ」(桑木志帆)、千葉文雄氏が削る「ゾディア」(原英莉花)など、こだわりや好みをより深く反映して作られたオリジナルのウェッジ。どこにでも売っているものではないが、チャンスがあれば試してみたいものばかりだ。

ドライバーなどのウッド系と比べると制作する設備規模も小さくて済む。匠が一本一本削り出す地クラブメーカーのウェッジは、選手の細かいこだわりを最大限、製品に活かすことができるのがメリットだ。

我々アマチュアのウェッジ選びは?

ウェッジを同じモデルで統一している選手は40人中29人と過半数を超える結果に。同じモデルだとグース具合や形状がそろい、違和感なくアドレスに入ることができる。

西郷真央はウェッジのシャフトを「NSプロ 950GH」(S)に揃えている

驚いたことに、桑木志帆(48、52度が日本シャフトNSプロ850GH/58度がNSプロ950GH)を除いた39人の選手が、ウェッジのシャフトを同じモデル、同じ硬さに統一していた。どのウェッジを手にとっても、同じ感覚で振れることを重視しているのが見て取れる。自分のウェッジセッティングでもチェックしてほしいポイントだ。

ショートゲームの生命線であるウェッジ。飛距離の階段やイメージ通りの高さ、弾道、スピン量にこだわって選ばれているのがわかる。アイアンセットの流れを考慮したロフト選びも、我々アマチュアゴルファーにとても参考になる。もちろん使い慣れたロフト角や本数も大切だが、柔軟にいろいろと試してみることをオススメしたい。(文・田島基晴)

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