どこが変わった?「新生・渋野日向子スイング解説」 気づいた人、ハイッ!手を挙げて
クラブ契約フリーとなり、ことしはスイングコーチをつけずに新シーズンを戦う渋野日向子。彼女のスイングはどのように進化を遂げたのか。撮れたての最新スイング分解写真を元に、目澤秀憲コーチに解説してもらった。(取材・構成/服部謙二郎)
変更点その1「アドレスの向き」
テレビで試合中継を見ていると、昨年に比べてスイングが大きく変わってないようにみえます。ですが、こうして連続写真をチェックしてみると、その違いが確認できます。まずは後方から撮った写真を見てください。
ことしのスイングを見ると、アドレスのアライメントの取り方が変わりました。体がターゲットに対して真っすぐ向けるようになり、フェース向きもストレートか若干右を向けて構えられています。バックスイングのクラブが上がる位置もよりストレートになり、手よりヘッドが前にある状態が長くなりました。
ロリー・マキロイ(北アイルランド)やネリー・コルダといった世界を代表するドローヒッターで、ヘッドが後ろに垂れながら打つ選手は少ないもの。昨年までは時にクラブ軌道が波打つこともありましたが、このスイングならプレーンは安定するはず。これなら彼女の狙いであるハイドローが無理せず打てると思います。
本来、彼女は左手の掌屈が強く自然と球がつかまるので、前腕のローテーションはなるべく少なくしたいところ。昨年までは前腕のターンが大きくなるケースがありましたが、今の打ち方ならインパクトゾーンでフェースを大きくターンさせずに球をつかまえられると思います。
変更点その2「つま先の向き」
また、正面の写真を見てもらうと、もうひとつ違いが見えます。今までは両足つま先を真っすぐにしていたのが、それが「ハの字」になっている。つま先を開くと何がいいかというと、つま先と同じ向きにひざを向けられるということです。
ひざも開けると股関節やお尻が使いやすくなり、バックスイングのときに右のお尻を後ろに使うことができます。後方の写真を見ると分かりますが、以前よりも右のお尻を後ろに引っ張りこめている。トップに入った時に両ひざの間のスペースが見えるほど足を使っているのが分かります。結果、右側にスペースが増え、無理にクラブを寝かせなくてもダウンスイングに移行することができます。
さらにトップ時に、左わきのプレッシャーが増えているのもいい部分。左わきの締まる量が増えたため、トップから手を下ろすだけでナチュラルな上下の分離が起きて、ヘッドが手より前の関係性が保ったままフォローまでいけると思います。
渋野選手の場合トップの大きさが話題になりますが、実際に右のお尻と左わきのプレッシャーが維持できていれば、トップを高くしなくても切り返しで時間差のあるスイングはできるもの。プレーンの向きも最下点も安定するので再現性は高くなり、いいドローが打てる確率は高まったと思います。
これはスイングだけのブラッシュアップではなく、トレーニングの成果もあります。普段からトレーナーを帯同し、いいトレーニングがきているからこそできる体の動き。体が作れていないとアドレスで同じ姿勢をとるのも難しいですし、つま先を開いてお尻を使うこともできません。渋野選手はやはり体が強いので、鍛えた分だけ体が反応できるのでしょう。
また、クラブ契約もフリーになりましたが、ギアのチョイスも打ちたい球筋、やりたいスイングと一貫しています。ドライバーのタイトリスト「GT2」は球の乗り感がよく、つかまえやすいヘッドでドローとの相性がいい。また、シャフトに挿すフジクラの「24ベンタスブルー」も合っていて、ある程度硬いシャフトにしたいほうが少しヘッドが遅れてなおかつトウダウンの量も減ってくる。ドローが打ちやすいセッティングだと思います。
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スイング、体、クラブ、まさに三位一体で変化を続ける渋野日向子。今週、国内ツアー「Vポイント×SMBCレディスゴルフトーナメント」に出場したのち、再びアメリカでの戦いが始まる。その活躍、期待を込めて見守っていきたい。
写真/村上航(スイング写真)