東五反田ギア総合研究所

「大MOIでやさしい」から「つかまりやすさで飛ばす」時代へ /26ドライバー研究#2

2026/05/05 07:00
26年モデルのドライバーの傾向を探る!

26年モデルのドライバーは、全体的にどんな傾向にあるのか、どういうトレンドが見えてくるのか。ジューシー株式会社を主宰するクラブデザイナーの松吉宗之氏が、ヘッドの実測データから読み解く企画の第2弾。前回(#1)は、各メーカーの“MOI競争”にピリオドが打たれて“扱いやすさ・振りやすさ”を追求する流れになったと述べた。今回はさらに突っ込んで「球のつかまり」について解説する。

重心距離が短めのヘッドが増えてきた

クアンタム◆◆◆(左)とOPTM MAX-K(右)はともに重心距離が短い

今回、6メーカーのべ21モデル(ウエート位置違いで計測したものもあり、総数18モデル)のヘッドを実測した松吉氏は、球のつかまり具合について感じたことを述べ、フェースの返しやすさに関わる重心距離のデータにフォーカスした。ちなみに現代モデルは、重心距離の平均値は40mmくらい、38mmを下回ると短い、42mmを上回ると長い、と分類される。

「昨年に比べて、全体的に球を少しつかまえやすい方向にトレンドが向かっているようです。21モデルの中で、重心距離が45mmとかなり長いヘッドが1モデルありますが、それ以外は長くても43mm前後でした。

むしろことしは30mm台が増えていて、9モデルあります。これらのヘッドは“取り回しが良い”と感じるでしょう。代表的なつかまりやすいモデルを挙げると、上級者向けがキャロウェイ『クアンタム ◆◆◆』で、一般アマチュア向けがコブラ『OPTM MAX-K』というところですね」

「つかまり具合」で21モデルを3タイプに分けた

そこで松吉氏には、のべ21モデルを「つかまりやすい」「ニュートラル」「つかまりにくい」の3タイプに分けてもらった。つかまりやすさは重心距離だけではなく、重心深度や重心角などのデータをトータルして判断する必要がある。その結果、「つかまりやすい」タイプが9モデル、「ニュートラル」タイプが11モデル、「つかまりにくい」タイプが1モデルに分類された。

今回計測したのべ21モデルを3つに分類した

一般アマチュアがドライバーでスライスを防ぐことをメインに選ぶならば「つかまりやすい」タイプが適している。一方で、上級者にとっての使いやすいモデルとなると、結果は異なるという。

「球が過度につかまってしまうことを避けて、自分の意志でつかまえることもできるモデルを見つけるには『ニュートラル』タイプでも重心距離が短いモデルが合います。例えば『OPTM MAX-D』や『JPX ONE SELECT』などがそのタイプ。重心距離が40mm以上で『つかまりやすい』タイプでも、重心角が大きすぎない『Qi4D(コアモデル)』や『OPTM MAX-K』などは“つかまえやすい”という評価になると思います」

意図的にフェースをターンしてつかまえやすい

クアンタム◆◆◆MAXは“いいところ”を突いているという

重心距離を長くしすぎないという点で、日本ブランドのダンロップやミズノのドライバーが該当するという。実測データを見ると「ゼクシオ14」シリーズの2モデル(「ゼクシオ14」「ゼクシオ14+」)は40mm前後、「JPX ONE」シリーズの2モデル(「JPX ONE」「JPX ONE SELECT」)は37mm台に抑えられている。

「歴が長い日本のゴルファーには『フェースをちょっとコネたい、ちょっとコントロールしたい』という感覚の人が多いものです。そういう“取り回しの良さ”を残しているのでしょう。どちらも少しつかまる性能になっていますね」

今回の21モデルの中で、重心距離が36mmと最も短くて、意図的にコントロール(操作)できるヘッドが「クアンタム ◆◆◆」だ。そして“◆◆◆のやさしい版”と言える「クアンタム ◆◆◆MAX」は、重心深度が深すぎず(41.3mm)、重心距離が短め(37.6mm)。ある意味で“カユいところに手が届く”仕上がりになっている。

「スタンダードモデルの『クアンタム MAX』に比べて、重心距離だけ短くしたような感じのヘッドです。勝手に返ってくるわけじゃないけど、操作はしやすい。『球が左に行くのはイヤだけど、ヘッドをコントロールしたい』というところを目指して作られたのではないでしょうか」

自分で“つかまえられる”か、クラブが“つかまえてくれる”か

続く外ブラ2メーカーのつかまり性能についても、松吉氏は実測データから興味深い傾向を読み取る。

コブラ「OPTM」シリーズの「MAX-D」と「MAX-K」は、明確なすみ分けができていると指摘する。

「『MAX-D』は、ライ角がアップライト(61.5度)で重心距離が短くて(37mm)、かなり取り回しやすくて素直につかまえやすいヘッドです。一方の『MAX-K』は、重心深度が深くて(45.5mm)、重心距離が長く(42.7mm)、取り回しづらさはありますが、重心角が大きめ(28.8度)でオートマチックにヘッドが返ってつかまりやすい。このように、自分でつかまえたい人は『MAX-D』、クラブにお任せでつかまえてもらいたい人は『MAX-K』という個性の違いがあります」

極めて大きいMOI設計からブレないピン

“MOI競争”が落ち着きつつある中にあって、ピンはメーカーのポリシーとも言える“極大MOI”を貫いている。しかし「G440 K」シリーズの2モデル(「G440 K」「G440 K HL」)は球がつかまる性能になっており、これまで極大MOIのヘッドが打てなかった人をカバーしているようだ。

「2モデルともに重心深度が51mm台とかなり深いことで、重心角がとても大きい(35度前後)。その重心深度に比べると重心距離は43mm台と、そこまで長くありません。このように強いドローバイアスがかかると、極大MOIのヘッドでもインパクトで間に合ってくれて右にすっぽ抜けづらくなります」

前回(#1)述べたように“扱いやすい・振りやすい”にシフトしつつ、つかまって推進力がある球が飛ばせるようになった26年モデルのドライバーたち。次回(#3)からは“つかまり具合”も含めて、メーカーごとの特徴を追っていこう。(続く)

文:新井田聡
クラブ写真:小林司
取材・編集:中島俊介

■ 松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール

ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。