東五反田ギア総合研究所

「G440 K」を丸ハダカに 得意の“大MOI”が扱いやすさを大幅アップ/26ドライバー研究#6

2026/06/02 07:00
「G440 K」2モデルを計測!

26年モデルのドライバーを計測データによって丸裸にするこの企画。クラブデザイナーでジューシー㈱を主宰する松吉宗之氏にヘッドの計測を依頼して、それぞれのモデルの特性を分析・解説してもらう。6回目はピン「G440」シリーズの追加モデルとなる「G440 K」と「G440 K HL」の2モデルだ。

#1 ドライバーのトレンドは“扱いやすさ”へ 「大MOI時代」は終焉か…

#2 「大MOIでやさしい」から「つかまりやすさで飛ばす」時代へ

#3 「Qi4D」を一斉計測 “コアモデル”の調整幅にワクワクする!

#4 「クアンタム」を一斉計測 重心距離「短」傾向で“つかまえて飛ばす”時代に

#5 さすが「ゼクシオ」と「ミズノ」 日本人に寄り添う“重心距離と重心深度の妙”

「K」に込められた“ビッグMOI”のポリシー

ドライバーやFW・UTなどのウッド系クラブにおいて絶大な支持を受けている、ピンの「G440」シリーズ。25年モデルの「MAX」「SFT」「LST」という“3兄弟”の重心性能については昨年の記事で紹介した。その“飛び重心”を受け継ぎつつ、史上最高クラスのMOI(慣性モーメント)を備えた追加機種が「G440 K」を冠する2モデルだ。

「G440」ドライバーを一斉計測 3機種とも他に類を見ない“超・低重心”

この連載では、26年モデルのドライバーのトレンドとして、MOIの極大化からの脱却を図り“扱いやすさ”や“つかまりやすさ”に寄っている、と松吉氏が述べてきた。しかし、大MOIの本家本元であるピンの「G440 K」シリーズはその流れとは一線を画し、あくまでもMOIを追求するポリシーを貫いている。

従来の極大MOIヘッドには、ミスヒットへの寛容性がかなり大きい半面、フェースが返りきらず球が右にすっぽ抜けたり、フェースターンが止まらずかぶって当たったりする側面があったことも否めない。しかし、26年モデルの「G440 K」シリーズは「極大MOIのヘッドを打ちやすくするにはどうすればいいか」というテーマにひとつのアンサーを示した、と松吉氏は指摘する。そのことを含めて、新作2モデルの分析をしてもらう。

計測した項目とその説明はこちら

「K」は極大MOI・超深重心・大重心角で、曲がらない、上がる、つかまる

計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

「MOIが1万(10K)超え」という謳い文句で話題になった、24年モデル「G430 MAX 10K」の後継に当たる「G440 K」について、松吉氏はこう切り出す。

「MOIの増大を追求すると、重心深度がかなり深くなるもの(51.7mm)。50mmを超えるって、相当深いです。ヘッドの左右MOIがこれだけ大きくて(5859g・cm2)、重心がここまで深いと重心角もかなり大きくなる(35.3度)。そして、これら大きい数字に対して重心距離は43.7mmと、そこまで長くありません。そうすると、基本的には『上を向いて、左に向く』挙動を示します」

つまり、重心がかなり深いのでインパクトロフトがつき、非常に大きな重心角によりヘッドが返ってくる。スイートエリアが広いうえ、オートマチックに球が上がってつかまるということだ。

「これまではMOIが大きいヘッドだと、どうしてもフェースが開いてしまい(インパクトにかけてフェースの戻りが)間に合わなかった人がいたと思います。しかし、このモデルくらい強烈なドローバイアスがかかると、しっかり戻って球が右へすっぽ抜けにくくなるでしょう」

実際に「G440 K」のMOI、重心深度、重心角のデータは、今回計測した6メーカー延べ21モデルの中で最大の数字だ。さらに、25年モデルの「G440」シリーズの“3兄弟”において、MOIが5418g・cm2と最も大きく重心深度が48.4mmと最も深い「MAX」と比べても「G440 K」は上回っている。突き抜けた“極深重心&極大MOI”のモデルなのだ。

ヘッドが軽い「HL」は振り遅れによる“右ペラ”を防ぐ

計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

その「G440 K」をベースに、ヘッド、シャフト、グリップの軽量化を図った高弾道モデルが「G440 K HL」だ。松吉氏はこう解き明かす。

「このモデルはソール後方に軽めのウエートを使うことで、ヘッド重量が『G440 K』(201.4g)よりも3gほど軽くなりました(198.0g)。ヘッドの後方が軽くなったことに伴い、『G440 K』に比べて重心深度がちょっと浅く(51.0mm)、MOIが少し抑えられています(5755g・cm2)。

この2モデルは、基本的なヘッドの性能はほとんど同じですが、『G440 K HL』はMOIを多少は犠牲にしてもヘッドを軽くすることで、取り回しが良く振り遅れにくいです。ベストなスイングで最高の弾道を打つというよりは、やや振り遅れる人でも極大MOIの恩恵を受けられるように、アシスト機能をふんだんに取り込んだモデルですね」

ヘッドのMOIと重心深度、重心角がわずかに抑えられてもなお最高レベルを保ち、ミスヒットに寛容で球が上がりやすく、つかまりやすくて右に抜けることをできるだけ解消している。そして軽量化によって、HS不足の人でも振り切りやすい。昨今は軽量ドライバーが台頭しているが、この「G440 K HL」は日本のアマチュアに適したモデルと言って差し支えない。

日本の潜在的なニーズに適った性能を有する

松吉氏は「G440 K」シリーズが、1年遅れの“追加モデル”として出てきた背景をこう推察する。

「あくまでも私の憶測ですが、かつて『G410』シリーズが爆発的なヒットを記録し、その後継モデルとしてつかまり性能が強い『G425』シリーズが、日本やアジア圏などで先行発売(2020年9月)されたことがありました。とくに日本の市場では、どちらかというとつかまる方向にバランスが寄った、つかまりがいいモデルが多いもの。そういう傾向があり、25年モデルの『G440』シリーズとは性能的に毛色が異なり、ツアープロが使うようなタイプではない“振り遅れやすいアマチュアの救済クラブ”のようなイメージで『G440 K』シリーズができたのかもしれません」

G425のドライバーは“つかまるピン”として人気を博した

2モデルのライ角を見ると59.5度と、フラットなモノが多い外ブラ系としてはややアップライトな部類だ。そのあたりも、球のつかまりを意識したスペックではないだろうか。

ピンは「前作を超えなければ新作は発売しない」をメーカーの哲学にしている。それだけに定期的なサイクルでニューモデルが出るわけではないので「新作はいつ出る? 次はどんな性能?」と待ち望むような期待感がある。言い換えれば、新作ができた時点で、歴代モデルの中で最高のポテンシャルを有しているという自信が、メーカーにはあるということ。その“高性能”を味方につければ、好ましい結果につながるに違いない。

次回(#7)は、コブラ「OPTM」シリーズの4モデルに切り込む。

文:新井田聡
クラブ写真:小林司
取材・編集:中島俊介

■ 松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール

ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。

ピン
10K飛。
発売日:2026/02/05 参考価格: 140,800円
ピン
飛び重心搭載 「HL」史上最高MOI
発売日:2026/02/05 参考価格: 118,800円