大里桃子の復活Vを決定づけた変化とこだわり
変えるものと変えないもの――。女子ゴルフ界“黄金世代”の一人、大里桃子が6月の「宮里藍サントリーレディスオープン」で復活のツアー通算3勝目を飾った。
昨年は極度の不振に陥り、プロ転向後、初めてのシード落ちを経験。クラブを替え、球筋を変え、トレーニングを変え……。変化を恐れず、スランプを乗り越えた大里が変わることのない信頼を寄せ続けたのは、ジュニアのころから慣れ親しんだ三菱ケミカルのシャフトだった。
体調不良から始まった小さな違和感
不振のきっかけは一昨年、2022年の夏に遡る。トーナメント欠場には至らない程度の体調不良。試合と試合の間で数日、安静にすることで体調は戻ったが、小さな違和感を覚えた。
いつもと同じようにプレーをするが、飛距離が戻ってこない。クラブなのか、スイングなのか。迷いを払拭するために試行錯誤を繰り返した結果、飛距離だけでなく、安定性も失われはじめ、どうしていいのか分からない状態に陥っていた。
「何かを変えなきゃ……」。そんな思いでクラブ契約フリーとなって臨んだ昨シーズンは、開幕から4試合連続予選落ち。苦しいスタートとなった。
「初めのうちはそんなにショットが悪いわけじゃなかったんです。ただ、最後のボギーで1打足りずに予選落ちとか、そんな試合を繰り返しているうちにメンタルも落ちてしまって……」。夏場には6試合連続予選落ちと、一向に状態は上がってこなかった。
不振脱却のきっかけは先輩のアドバイス
そんな大里に変化のきっかけを与えてくれたのは、同じような悩みを経験してきた先輩プロだった。
「『ニトリレディス』(8月)で堀琴音さんと同じ組になって『どうしたらいいですか?』と相談しました。そのときに『フェードにするのが早いけどね』って言われたんです」。予選落ちとなってしまったこの大会の翌週、「日本女子オープン」の最終予選でこの言葉がふっと頭に浮かんだ。
すでに本戦進出が厳しい状況で迎えた終盤、右ドッグレッグのホールに立った。「私の持ち球のドローではうまく打っても左ラフだなと思って、フェードを打ったらいいショットが出ました。次のホールも軽い右ドッグレッグだったので、フェードを打ったら、またいいショットが出て。キャディをしてくれた父と一緒に『あれイケるじゃん』って(笑)」
ツアーに戻って、続く「ゴルフ5レディス」は予選を通過し24位タイ。球筋を変える決断を結果も後押しした。シーズン終盤に成績が飛躍的に上がることはなかったが、調子は上向いてきた。そして、照準を合わせていた来シーズンの出場権を懸けたファイナルQTでは5位に食い込み、2024年シーズン前半の居場所を確保した。