上田桃子の強さの秘密―― シビアなまでにこだわる「打点」と「距離感」
上田桃子がトッププレーヤーの一人として活躍し続けてきた間にツアーは変化し続けてきた。若手の台頭でライバルの顔ぶれは入れ替わり、クラブやボールの進化でツアー全体の平均飛距離は伸びた。また、2021年に米国のプロツアーで距離計測器使用が認められるようになると、22年には日本でも使用可能となった。
そんな数々の変化の中で、日米通算17勝を挙げた上田が、自らのゴルフへのこだわり、レーザー距離計の活用法、さらにはアマチュアへのアドバイスを語る。
上田が思う「ショットメーカー」の定義
女子ツアーの中でも「ショットメーカー」として名高い上田だが、「私ってショットメーカーですか?」と、本人は苦笑いで否定する。ただ、JLPGAでのスタッツを見ると、実質的なルーキーイヤーの2006年がパーオン率4位、最年少の賞金女王に輝いた翌07年が同2位。米ツアー挑戦を経て、主戦場を国内に戻した後にも17年には同4位に食い込んでいる。 ショットメーカーと呼ぶにふさわしい実績の一方で、近年はパット数、リカバリー率でより上位につけており、データからはショートゲームでスコアを作るスタイルへ徐々に変化していることが伺える。
上田が考えるショットメーカーの定義は「アイアンが上手い選手」。ただ、単純にパーオン率などの数字で判断するものではない。「大前提として最近の若い子はみんな上手いのですが、飛んで曲がらないからグリーンに乗るという感じ。ただ、アイアンが上手いというイメージとはちょっと違うかなと感じます。例えば、山下美夢有ちゃんは、スピン量が一定でボールを止められるので、アイアンが上手いと感じます。彼女はショットメーカーだなと」。感覚的な話ではあるが、ゴルフ好きならなんとなく理解ができるのではないだろうか。
電話帳を1ページずつめくる打点コントロール
いずれにしても、上田が素晴らしいアイアンショットでファンを魅了してきたことは疑いようがない。 こだわるのは「打点」だ。その原点はプロテスト合格の少し前まで遡る。「当時のコーチのところで今野康晴さんにお会いして『アイアンで電話帳を1ページずつめくれる』という話を聞いたんです。男子プロはクラブの入れ方をそこまでコントロールできるんだ、自分も入れ方を大事にしようと思いました」。ここで出てきたクラブの入れ方に加えて、距離を合わせる、球筋を作る、長いインパクトゾーン、ボールを押せるなどは上田がアイアンショットを語る際に何度も出てくるキーワード。それらのすべてが「打点」というこだわりに集約される。
打点にこだわってきたからこそ、難しいとされるベント芝を苦にしない。「地面が硬いと思ったようにクラブが入っていかなくて、上手くボールを押せなかったりするんですけど、ベントはペタッとしていてもターフが取れるので、そういうことがありません。米ツアーに行った時も、日本のフェアウェイより打ちやすいと感じました」。自己評価はともかく、言葉の一つひとつはショットメーカーのそれだろう。